犬のてんかんの症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年03月29日

犬のてんかんってどんな病気?

犬のてんかんの症状と原因

てんかん発作について

最初に、勘違いされやすい言葉の使い方を確認しましょう。「てんかん=てんかん発作」ではありません。てんかん発作とは、大脳の神経細胞の突然の過度の放電が原因で起こる発作性の症状です。そして、「んかん」とは、てんかん発作を「繰り返し」起こす脳の病気のことです。つまり、何らかの中毒や低血糖のときにもてんかん発作は見られますが、だからと言って、その犬がてんかんという病気ではない、ということになります。

原因別のてんかんの種類

てんかんを原因別で見ると、「症候性てんかん」と「特発性てんかん」に分類されます。症候性てんかんと特発性てんかんの割合は、犬ではだいたい半々です。

症候性てんかん

症候性てんかんは脳腫瘍や脳炎のような脳の異常(これを器質的病変と呼びます)があり、それによって、てんかん発作が二次的に引き起こされる病気です。

特発性てんかん

症候性てんかんに対して、脳にてんかんの原因になるような器質的病変がなく、全身的にも異常がない場合は、特発性てんかんであると考えます(特発性とは、原因不明を表します)。

どうして症状が出るの?原因は?

てんかん発作は神経細胞の過剰な興奮と過度の放電が原因

神経細胞には、興奮を伝える細胞と、興奮を抑える細胞があります。普段はお互いがバランスを取り合って情報伝達をしていますが、何らかの異常が起こることでバランスが崩れてしまい、興奮しやすい状態が強くなってしまうと、てんかん発作が起こりやすくなります。そして、興奮が過剰になって過度の放電が生じると、てんかん発作が起こるのです。

ちなみに、この興奮は神経細胞の興奮であり、犬が精神的に興奮しているかどうかは関係ありません。じっとしている時に、突然てんかん発作が起こることがあるのは、このためです。

神経細胞の興奮と抑制のバランスが崩れる原因

神経細胞の興奮とそれを抑える細胞のバランスが崩れる原因はいろいろあります。

多くの特発性てんかんでは遺伝的に問題があると考えられています。

症候性てんかんでは、脳腫瘍、脳炎、先天的な奇形、外傷などの器質的な病変が主な原因です。

どんな犬がてんかんになりやすいの?

特発性てんかんは、遺伝的、家族的な要因が強く疑われており、日本における人気犬種の中では次のような犬種が当てはまります。

  • ゴールデン・レトリーバー
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • シェットランド・シープドッグ
  • シベリアン・ハスキー
  • セント・バーナード
  • ビーグル
  • ボクサー
  • ラブラドール・レトーリバー

犬の保険について

犬のてんかんの症状とチェック項目

てんかん発作は、発作前に寝ている状態や落ち着きがなくなるところがスタートで、発作が始まり、発作の後にもうろうとしたり、フラフラしたりといった状態で終わる、という流れが見られることが多いとされています。

てんかん発作には、発作の起こり方によって「全般発作」と「焦点性(部分)発作」があります。

全般発作

全般発作は、その症状により、次のように分類されます。

  • 意識を失い、全身をぴーんと突っ張ってけいれんする「強直発作」
  • 意識を失い、全身をガクガクさせてけいれんする「間代発作」
  • 強直と間代が混ざったり、強直から間代に移ったりする「強直間代発作」
  • 足や顔など体の一部、または全身の筋肉が瞬間的に大きくピクッと収縮する「ミオクロニー発作」
  • 強直と間代が混ざったり、強直から間代に移ったりする「強直間代発作」
  • 突然力が抜けたようになり、勢いよくバタッと倒れる「脱力発作」
  • けいれんや脱力が起こらず、突然短時間だけ意識がなくなる「欠伸発作」

焦点性(部分)発作

焦点性(部分)発作は、その症状により、次のように分類されます。

  • 体の一部だけが突っ張り、突っ張る場所が移動することもある「運動発作」
  • 無意味に思える行動を続ける「行動発作」
  • 腹痛や下痢のような自律神経に関連した症状が見られる「自律神経発作」

「行動発作」は、さらに細かく分類され、口をくちゃくちゃしたり、舌なめずりするような「辺縁系発作」、何もないのにハエを追うように視線を移動させたり、かもうとして口をパクパクする「Fly-biting」、普段はおとなしい犬が突然攻撃的になる「攻撃発作」があります。

てんかん発作のチェックポイント

発作自体にもかなりいろいろな症状が見られますが、発作前の状態、発作の状態、発作後の状態を正確にチェックすることで、その症状がてんかん発作であると判断できる可能性が高くなります。

最初から最後まで動画が撮影できるとベストですが、発作前の状態はなかなか撮影できないことが多いため、観察してメモを残しておくといいでしょう。

また、発作を起こしたときに自律神経兆候と呼ばれる症状が見られることがあります。よだれを垂らす、おしっこやうんちを漏らすといったものです。

発作そのものは見ていると長く感じますが、実際には、多くが数十秒から1~2分で終わります。そして、発作後のもうろうとした状態を脱すると完全にいつもの状態に戻ります。

犬のてんかんはどうやって診断されるの?

まずは、発作が起きたときに、それがてんかん発作かどうかを判断します。それは問診や発作の様子の動画での確認、身体検査によって行います。

てんかん発作である、あるいは、その可能性が高い場合は、神経学的検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを行い、脳以外の発作の原因となる病気があるかどうかを調べます。

脳内の問題を調べる場合、全身麻酔をかけてMRI検査や脳波検査を行う必要があります。

これらの検査を行えば、ほぼ確実にてんかんを診断することが可能です。しかし、実際にはMRI検査のコストの問題や、全身麻酔をかけたくないなどの理由から、発作以外の神経学的な異常がなく、脳以外の異常が認められなかった場合は、特発性てんかんと仮診断して治療を始めることがあります。

犬がてんかんを起こしたときの対処方法

てんかん発作であれば、脳に刺激が加わるほどに発作が悪化し長引くことがあります。

そのため、飼い主さまが発作中の犬に対して大きな声で呼びかけたり、体を撫でたりゆすったりすることで発作が長くなってしまうことを知っておきましょう。

脳への刺激は音や振動だけでなく、光などの刺激も悪化要因です。発作が起きてしまったとき落ち着いて行動できる飼い主さまは少ないですが、できるだけ声をかけずに、テレビなどの音を切り、撫でたりもあまりしないようにしましょう。

意識がないケースでは噛まれてしまうこともあるので、顔付近は触らないようにしましょう。 できれば発作が起きている時間を計測し、顔と全体の様子を動画撮影できると診断の役にたちます。

また発作のきっかけとして考えられることもあれば、受診時に正確な情報がスムーズに伝えられます。

犬のてんかんの治療にはどんな方法があるの?

犬のてんかんの治療

てんかん治療の目標は発作の頻度を減らすこと

症候性てんかんの場合は、原因となる病気ごとに必要な治療を行います。しかし、症候性てんかんでも特発性てんかんでも、抗てんかん薬を使って発作の頻度を減らすことを目標にします。

また、てんかん治療は、発作を完全になくすことができるのが理想ですが、なかなか難しいのが現実です。そのため、最初の目標は、発作頻度を治療開始前の半分以下にすることになります。

犬のてんかんは治せるの?

特発性てんかんの完治は難しいとされています。症候性てんかんのうち、治療によって完治できるものであれば、てんかん発作も出なくなります。

症状を緩和するにはどうしたらいいの?

てんかん症状を緩和するには、その原因を治療することがとても大切です。

しかし治療ができないような病気であったり、あるいは何も脳に異常がないタイプのてんかん発作では、獣医師の判断により抗てんかん薬が処方されます。

処方された抗てんかん薬を飲んでいれば発作が出ないというケースでは、もう治ったと思って投薬を止めてしまうと発作が再発してしまうことがあります。 そのため、獣医師の指示通りに抗てんかん薬を飲ませることが大切です。

発作は前兆なく急にくるものですので、自己判断で投薬を減らしたり、投薬を止めてしまうのは止めましょう。

てんかんの治療にかかる診療費について

てんかん発作の診断に必要なのは全身麻酔下でのMRIやCTなどの画像診断です。

そのときに脳脊髄液の性状も調べます。ただし、犬には特発性てんかんと呼ばれる原因不明のてんかんも多いため、検査で異常が見つからない場合も多いです。

診断の検査のみで20-25万円ほどかかることもありますが、自由診療のため病院によって、てんかん発作の原因によって変わります。内科治療であれば、飲み薬で治療することになりますが、薬価の低い薬で済むのか、高い薬が必要なのか次第なので1か月の費用は5,000円~2万円が相場です。

脳に腫瘍などがあれば外科手術を実施することになりますが、その部位や入院期間によって30-100万円の診療費がかかります。

※診療費は参考例であり、平均や水準を示すものではありません。診療費は動物病院によって異なります。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。