猫が吐く原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

猫が吐くと、何か具合が悪いのだろうと心配になります。猫の嘔吐の原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師の三宅先生に監修いただきました。

猫が毛玉を吐き出すことは珍しくはありませんが、別のものを吐き出す、嘔吐が治らない、ほかの症状が見られるようであれば、何かの病気のサインかもしれません。猫の様子に変化や異常を感じたら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫の嘔吐の原因・病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の嘔吐とは?

猫は肉食動物なので、自然界では食べてしまった獲物の毛や小骨などの消化できないものを排出するために吐き出します

そのため、猫はペットの中で嘔吐がよく見られる動物です。ペットの猫にとって、毛づくろいの時に飲み込んだ毛玉を吐いたり、食べすぎた時に吐いたりするのは正常です。なお、食べすぎた場合は、食べたフードが消化されないまま出てきます。

―猫の吐き出すものが毛玉であれば、問題ありませんか?

猫が毛玉を吐くことに問題はありません。なお、長毛種のほうが、短毛種よりも飲み込む毛の量が多くなるので毛玉を吐く頻度が高くなり、また、季節の変わり目の換毛期(毛の生え変わりの時期)でも同様の傾向になります。

猫によっては、ほとんど毛玉を吐かない子もいますが、それは個体差なので、あまり気にする必要はないでしょう。毛づくろいをしているのに毛玉を吐かない猫は、便と一緒に毛を排泄しています。ですが、毛玉が胃の中にできているのにうまく吐き出せないと、毛球症と呼ばれる病気(毛玉が大きくなりすぎてしまって吐き出せなくなる病気)になり、胃炎や通過障害の原因になるため注意が必要です。

毛球症についての詳しい記事は、獣医師監修の「猫の毛球症」を併せてご覧ください。

ほかにも何らかの病気によって猫が吐いてしまうことがあります。

猫の嘔吐の原因として考えられる病気・危険度は?

猫の嘔吐の原因として考えられる病気・危険度は?

消化器の病気

猫は、胃腸炎や消化管閉塞、巨大食道症、消化管にできたリンパ腫などの腫瘍によって、吐く場合があります。また、便秘が原因で吐く場合もあります。

猫の便秘については、獣医師監修の「猫のうんちに血が混じる。血便は病気のサインであり胃腸炎の可能性大」を併せてご覧ください。

消化管閉塞は、腸管穿孔(ちょうせんこう:胃壁・腸壁に穴が開くこと)の危険と、緊急手術が必要になる場合があります。

巨大食道症の猫は、立位(立った状態)で餌を与えると、胃の中まで食べたものが送り込みやすくなり、嘔吐の予防につながります。

そのほかの内臓の病気

猫が、膵炎や肝炎、胆管炎、また、腎臓病を起こしていると、吐く可能性があります。特に、猫が急性膵炎になると激しい嘔吐が見られ、早急に処置を行わなければ命にかかわるので注意が必要です。また、腎臓病から尿毒症へと進行している場合は、早急に処置を行う必要があります。

猫の肝臓・膵臓の病気については、「猫の疾患 肝臓・膵臓の病気」を、猫の泌尿器系の病気については、「猫の疾患 泌尿器系の病気」をご覧ください。

感染症

猫は、ウイルス、細菌、寄生虫に感染すると消化器に障害が引き起こされ、吐く場合があります。ウイルス性の感染症としては、猫パルボウイルスや猫コロナウイルスが原因となり、嘔吐を始めとする消化器症状を起こす可能性があります。猫パルボウイルスによる汎白血球減少症(猫ジステンパー、猫伝染性腸炎とも表記される)や猫コロナウイルスが突然変異をして起こる猫伝染性腹膜炎(FIP : Feline Infectious Peritonitis)は、致死性の高い感染症です。

猫コロナウイルスは感染力が強いのですがワクチンで予防できます。しかし、残念ながら猫パルボウイルスの突然変異による猫伝染性腹膜炎に対する有効なワクチンはありません。

異物誤飲

猫が異物を飲み込んでしまい異物が胃腸を刺激したり、閉塞を起こしたりすると吐く可能性があります。

特に、ひも状の異物が猫の腸管内に引っかかってしまうと、腸の蠕動運動(※)に合わせ、ひも状の異物に沿って腸がアコーディオン状に手繰り寄せられてしまうおそれがあります。その結果、腸管が壊死を起こし、腸管穿孔につながる場合があり、命にかかわります。そのため、猫が飲み込んでしまいそうなものは、猫が触れない所に片付けておきましょう。

蠕動運動(ぜんどううんどう)とは、消化管内の内容物を移動させる動きのこと

中毒

猫が吐く原因として、洗剤や殺虫剤、植物などの毒物や、傷んでいる餌や生ゴミなどを食べてしまう場合が挙げられます。特に、猫が毒物を口にしてしまうと、胃洗浄や解毒処理を行うなど迅速な対応が求められます。猫の生活環境に危険なものを放置しないよう管理を徹底してください。

食物アレルギー

食物アレルギーを持っている猫は、アレルゲン(アレルギーの原因物質)が含まれている食事を摂取すると吐くことがあります。

ストレス

人と同様に、猫もストレスが原因で吐くことがあります。引越や家族構成の変化などの生活環境の変化によって、猫にストレス負荷がかかっているときに見られます。

―猫が吐きたいのに吐けない場合は、何が原因でしょうか?

猫が吐きそうに見えて吐かないのは、多くが毛玉を吐こうとしている場合です。しかし、中には、猫の咳を飼い主さんが「吐きそう」と見間違っている場合やほかの重篤な疾患のサインかもしれないので、気になる場合は獣医師に相談してください。

猫の嘔吐でこんな症状が見られたら、すぐ病院へ

猫の嘔吐でこんな症状が見られたら、すぐ病院へ

吐く以外に愛猫に次の症状が当てはまる場合は、緊急性の高い病気の可能性がありますので動物病院に連れて行ってあげてください。

猫の危険な嘔吐のチェックポイント

  • 元気や食欲がない
  • 下痢のようなほかの症状も見られる
  • 吐いたものの中に異物が混じっている
  • 吐いたものの中に血が混じっている
  • 吐いたものの色が緑色といった異常な色である
  • 吐いたものが便臭や薬剤臭などの異臭がする
  • 嘔吐を繰り返している

病気としては、消化管閉塞や急性膵炎、急性腎不全の場合、早急の処置が必要になることがあります。また、ウイルスや寄生虫による感染症は、ほかの猫に伝播する可能性があるので、複数の猫を飼っている場合には注意してください。特に、猫パルボウイルスは、子猫で症状が重篤化しやすいのでいっそうの注意が必要です。

猫が嘔吐をしたときの対処法

猫が嘔吐をしたときの対処法

家庭で様子を見る場合

猫の吐いているものが毛玉の場合は、健康な猫でも見られる正常な行動です。

毛玉を吐く回数が多い猫であれば、毛づくろいの時に飲み込んでしまう抜け毛の量をブラッシングで減らせば、改善が見られる場合があります

毛玉を吐くのが上手ではない猫には、毛玉対策用のペットフードに変えてみてください。猫が飲み込んだ毛を便と一緒に排泄されやすくします。

猫は餌を急いで食べると吐いてしまうことがあるので、浅いお皿を使ってみてください。餌がお皿に広がるので早食いと食べ過ぎるを防止できます。お皿の底がでこぼこになっていて、食べにくくしてある早食い防止用の食器も存在します。

ストレスが原因の場合には、猫がひとりでくつろげるスペースを確保するとともに、おもちゃやキャットタワーなどで運動させるとストレスの軽減が期待できます。

治療が必要な場合

受診の際には、猫が吐く回数や頻度を記録して獣医師に伝えてください。また、猫が吐いたものを密閉できる容器に入れて病院に持って行ったり、写真に撮って見せたりすると診断の手助けになる場合もあります。

猫が嘔吐を繰り返していると脱水や栄養失調に陥っている場合が多いので、点滴や皮下輸液によって水分と栄養を補うことが第一です。そのほかに、猫が吐く原因となっている疾患を調べ、その治療を行います。

異物誤飲を始めとする腸管閉塞を発症すると、速やかに外科的手術が必要になる場合があります。また、急性膵炎、急性肝炎、急性腎不全などの内臓疾患や毒物による中毒症状を起こすと、炎症を抑えることや速やかな解毒処理が必要です。

まとめ

猫が毛玉を吐き出すことは広く知られており、吐く行為そのものはさほど珍しくありません。ですが、猫が吐くのはさまざまな体調不良や病気の症状として出やすいものでもあります。

猫が吐く原因が、換毛期である、急いで食べすぎたなど思い当たることがあるのであれば、一過性の嘔吐と見なして、自宅で様子を見てもいいでしょう。しかし、愛猫の食欲がない、繰り返し吐くなどの場合は、病気かもしれないと考え、受診を検討しましょう。特に家に来たばかりの子猫が吐いているときは、感染症のリスクも考え、早急に受診をしてください。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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