猫の腸閉塞の症状と原因、治療法について

猫の腸閉塞ってどんな病気?

腸閉塞(機械性イレウス)とは、消化管の内容物が物理的に腸を通過できなくなった状態で、異物や腫瘍などによる単純腸閉塞と、腹壁ヘルニアや腸間膜ヘルニアなどによる嵌頓(かんとん)腸閉塞に分けられます。

猫では特にひも状の異物による腸閉塞が多く、一般的に嘔吐や沈うつ、食欲不振、腹部の痛みなどの症状を示します。治療には外科手術による原因の除去が必要です。

どうして症状が出るの?原因は?

猫の腸閉塞の原因と症状

腸閉塞の主な原因は、物理的に腸の動きを阻害されることです。腸閉塞のタイプ別に紹介しましょう。

単純腸閉塞の原因

単純腸閉塞については、以下のようなものが原因として挙げられます。

異物誤飲によるもの

犬猫では、異物の誤食によって腸が詰まってしまうことが最も多く見られます。犬では、石やおもちゃ、とうもろこしの芯、梅干しの種などの誤食によるものが多く、猫では毛糸のようなひも状の異物を遊んでいるうちに誤って飲み込んでしまうケースが多いようです。

毛玉によるもの

猫が毛づくろいの際に飲み込んだ毛が絡まって毛玉になり、腸閉塞の原因になる場合があります。

腸管の腫瘍によるもの

腸管にできた腫瘍によって腸閉塞を起こすことがあります。腸管にできる腫瘍のうち、猫では胃腸管型リンパ腫が7割以上を占め、腺癌が17%、これらのほか肥満細胞腫や平滑筋肉腫などがあります。

腸管の癒着

腸管の癒着とは、腹膜炎や腹部の手術後などに、腸同士や腸と腹壁がくっついてしまうことです。この癒着によって、腸の内容物の流れが悪くなり、詰まってしまいます。

腸重積

腸重積とは、腸炎や腫瘍などの原因により、腸の一部が隣接する腸の中に入り込み、自然には抜けなくなった状態のことです。

寄生虫の大量寄生

寄生虫が消化管内に大量寄生することで腸の動きを阻害します。

嵌頓腸閉塞の原因

嵌頓腸閉塞は、生まれつきの臍ヘルニア、交通事故のような強い衝撃によって生じた腹壁ヘルニアや腸間膜ヘルニアなどが腸を締め付けることで発症します。

本稿で紹介しているヘルニアとは、腸がへそや腹壁の欠けている部分、あるいは脆弱な部分に飛び出した状態です。腸が狭い穴に入り込むことで腸の血流が障害され、腸管が壊死することで重篤な腸閉塞を引き起こします。

どんな猫が腸閉塞にかかりやすいの?

  • 若くて好奇心旺盛、床や壁、家具などをかじる癖がある、毛糸やヒモの付いたおもちゃで遊ぶのが好きなど、異物誤食をしてしまう猫
  • 毛玉による腸閉塞にかかりやすい長毛種
  • 消化管の腫瘍を抱えやすい老齢の猫
  • 室内外に自由に行き来でき、定期的な駆虫をしていない猫
  • 帝王切開を繰り返していたり、大きな手術をしていたりする猫(癒着による腸閉塞を起こしやすい)
  • 交通事故にあった猫や、生まれつき臍ヘルニアなどが認められる猫(嵌頓腸閉塞への注意が必要)

※臍ヘルニアとは、いわゆる「でべそ」のことで、へその緒があった部分の筋肉が閉じきらず、腹腔内の脂肪や腸管が飛び出した状態です。

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猫の腸閉塞の症状とチェック項目

  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 沈鬱
  • 嗜眠(しみん:周りの刺激に反応できず眠ったよう状態になること)
  • 下痢
  • 腹部痛
  • 舌の根元にひもが絡んでいる
  • 肛門部にひものようなものが見えている
  • 異物をかじっていることがあった
  • いつも遊んでいるおもちゃが見当たらない、あるいは一部がなくなっている
  • 普段から毛玉をよく吐く

上記の症状にひとつでも当てはまる場合、腸閉塞の可能性がありますので獣医師に相談してください。

特に、猫の口の中や肛門付近にヒモや糸のようなものが見える場合、引っ張ることで腸が切れてしまい、内容物が腹腔内へ漏れ出て、重篤な腹膜炎を起こす危険性があります。決して自力で対処しようとせず、速やかに動物病院を受診してください。

猫の腸閉塞はどうやって診断されるの?

猫の腸閉塞では、主にレントゲンや腹部エコーなどの画像検査により診断を下します。

レントゲン検査

レントゲン検査では、異物そのものやヘルニアの所見を検出したり、ガスや内容物、腸管の大きさなどを調べたりします。また、バリウムといった造影検査をすることで腸の動きや詰まりがないかを調べます。

エコー検査

腹部エコー検査では、腸閉塞による二次的な腸管の拡張がないか、腸管内に貯留した液体が行ったり来たりする閉塞がないかを調べます。特に、ひも状の異物では、腸管の蛇行や腸管内に直線上の異物が見えることがあります。また、腸重積や腫瘍による腸構造の変化の有無も調べます。

エコー検査の所見からリンパ腫といった腫瘍が疑われる場合には、エコー画像を見ながらお腹の上から注射針を腸に刺し、針生検(針の中に入った細胞を顕微鏡で調べること)により、腫瘍性の細胞が出ていないかを調べます。

もし画像検査ではっきりと異物が見つからない場合でも、誤食や、症状から強く腸閉塞が疑われる場合には、開腹して実際に腸を調べることもあります。

さらに、多くの場合、全身状態や術前のチェックとして血液検査も同時に行います。

猫の腸閉塞の治療にはどんな方法があるの?

猫の腸閉塞の治療と予防

異物による腸閉塞の場合

異物による腸閉塞の場合、手術をして腸を切開し、異物を摘出します。腸管が壊死している場合には、腸を一部切除することがあります。

腫瘍が疑われる場合

腫瘍が疑われる場合には、病変部位の組織検査を行い、腫瘍の種類に応じた抗がん剤治療を実施します。

このほか、腸管に穴が開いて消化管内容物の漏出が疑われる場合には、腹腔内をよく洗浄します。また、脱水やショック状態の猫では、輸液により状態が安定してから手術を行います。

術後、状態が安定し、再び自力でご飯が食べられるようになるまでは、数日から数週間ほど入院下で管理する必要があります。

猫の腸閉塞は治せるの?

一般的な腸閉塞の場合、化膿性腹膜炎がなく、腸を広く切除する必要がなければ、予後は良好です。

しかし、ひも状異物による腸閉塞の場合は、腸管の一部が裂け、消化管内容物の漏出が認められると命の危険があります。

腫瘍による腸閉塞の場合、病変部位の大きさや転移の有無、抗がん剤への反応により、予後はさまざまです。

どうやって予防したらいいの?

異物誤飲対策

一番大切なのは、異物を誤食しないように、飼育環境を整えることです。猫がかじりやすいものは届くところに置かない、しっかり遊んであげてストレス発散し、おもちゃは出しっ放しにしないなどを家族全員で徹底して守るようにしてください。

毛玉対策

長毛種では、こまめにブラッシングをしてあげることで毛玉による腸閉塞を予防することができます。

寄生虫対策

外に出る猫では、定期的な駆虫による寄生虫の除去が重要です。

各種ヘルニア対策

臍ヘルニアが認められる猫では、早期に手術による整復を行うこと、また、完全室内飼育をすることで、交通事故によるヘルニアのリスクを減らすことも予防のひとつです。

毛玉のケアや寄生虫の駆除、臍ヘルニアの整復などに関しては健康なうちから動物病院で相談してください。

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