ペットを愛する詩人・園田恵子による映画コラム。ペット好きならではの独自の視点から、さまざまな映画のコラムを多数掲載、今後も続々と新作映画コラムが追加されていくので、お見逃しなく!また、PS保険のご契約者様に向けたプレゼントも多数ご用意しております。
エンターテイメント性を追求した、全く新しい『藪の中』

中野裕之監督、小栗旬主演映画「TAJOMARU」は、芥川龍之介の小説『藪の中』を原作にしながら、黒澤明監督の『羅生門』とも全く違ったストーリー、アプローチでのぞんでいる。裕福な生まれから、幼なじみであり婚約者でもある一人の女性を守るために、後に大盗賊とならざるをえなくなる多襄丸を主軸に描いている。
これでもか、これでもかと主人公たちに襲いかかる受難の数々、大手資本が集まる大バジェット、大規模公開のためにエンターテイメント性を徹底追求するとなると、こうして、シナリオにもくどさが出てきてしまう。ハリウッド方式に変化にとんだ作品にするため、シナリオは何度も書き直されたという。エンターテイメント性を追求するあまり、シナリオが過剰になったのだ。私などは、この映画の話を友人たちと話す時には、ついつい『過剰丸』といいまちがえてしまう。
なんでも、ぎりぎりまで監督が決まらず、中野監督に連絡が入ったのは撮影に入る3週間前だという。
しかし、練りに練られたシナリオの勢いのよさ、中野監督の撮影の早さのリズムが、心地よく感じられる。

役者陣の魅力を最大限に引きだしている所も、この映画の見所の一つだ。
多襄丸役の小栗旬はもとより、盗賊役のやべきょうすけ、悪役がとても似合う田中圭、そして、本作で復帰を果たした、往年のスター、ショーケンこと萩原健一が、なによりすばらしい存在感で、難しい役所をこなしている。展開の早い映画の中で、中心点とも、重心とも思える役割を担っている。
近年の日本映画に足りないものは、この萩原健一という役者の存在感だったのだ、と思いいたった。
難条件を乗りこえ、みごとに映画を完成させた中野裕之監督の手腕

そして、ここぞという決めゼリフの時に中野裕之監督が見せるCGクリエイター魂が凄い!つまり、小栗旬の顔が、いきなりホリが深くなってCGで作りこまれたかっこいい映像になるのだ。
いやあ、びっくりした。だって、いきなり顔がかわるんだもん。
でも、見応えがある。もしできることなら、実生活にもぜひ活用してみたい手法だ。ここぞというキメたい場面で、いきなりナナメ45度の滝川クリステルになってみるとか、あらぬ野望を妄想してしまった。
随所に現れるそうした場面をみるにつけ、製作期間の短さが、もったいないように思えてきた。せっかくのクリエイター、中野裕之監督を起用していながら、惜しいといわざるをえない。もしポストプロダクションの時間がもっとあれば、紀里谷監督の『GOEMON』の向こうをはっていたかもしれないのに。
あらゆる難条件をみごとに乗りこえて、映画を完成させたのは、中野裕之監督の手腕によるものだ。なんとも心地よい疾走感の映画に仕上がっている。
原作:芥川龍之介
脚本:市川森一 / 水島力也
出演:小栗旬、柴本幸、田中圭、やべきょうすけ、池内博之、松方弘樹、近藤正臣、萩原健一、本田博太郎、他
(C) 2009「TAJOMARU」製作委員会



