猫が血尿を出す原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月21日

猫のおしっこが赤い、血尿が出る原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師の三宅先生に監修いただきました。

そのうち治るだろうと思っていたら、病状が悪化し、取り返しのつかない事態になってしまうかもしれません。猫の行動やふるまいに異常や変化を感じたら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫が血尿を出す原因・病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の血尿として考えられる原因、病気とは?

―猫の血尿の原因とは、どういったものですか?

猫は犬とは異なり発情出血が起こらないため、外陰部(肛門の下の尿が出る部分)から血液が出ている、もしくは尿に血が混じっていれば、血尿の可能性が高くなります。

猫の血尿は泌尿器からの出血

血尿は泌尿器からの出血を疑います。泌尿器は腎臓から始まり、尿管、膀胱、尿道で構成され、これらのどこかで出血を起こすような異常があると血尿が見られます。飼い主さんが猫の血尿に気付くのは、ほとんどの場合、膀胱、または尿道からの出血です。

このように猫に血尿が見られた場合は、何らかの病気が疑われます

泌尿器系の病気の詳しい原因、症状、治療や予防法については、獣医師監修の「猫の疾患 泌尿器系の病気」を併せてご覧ください。

猫の血尿として考えられる原因、病気とは?

―猫の血尿の原因として考えられる病気について教えてください。

オス猫とメス猫に共通するもの

膀胱炎と尿道炎

猫の血尿の原因として、泌尿器系の炎症や腫瘍が挙げられます。腎臓から膀胱・尿道まで炎症や腫瘍ができる可能性はありますが、血尿の原因としては、多くの場合、膀胱か尿道です。

膀胱炎と尿道炎は、猫に最も頻繁に見られる病気です。これらの病気が起こる原因は、感染性、結石性、特発性の3つに分類されます

感染性は、正常では無菌状態の膀胱に、尿道から細菌が侵入し、感染が起こるものです。結石性はミネラルを主成分とする結石が原因です。実際に、石が形成される場合もあれば、石にはなっていないものの、その材料になる結晶が大量に形成される場合もあり、どちらにしても、それらが粘膜を刺激し、炎症を起こします。特発性は、感染や結石のような明らかな原因はないものの、炎症が起こるタイプで、はっきりとした原因はわかっていません。

膀胱炎は性別に関係なく見られる病気ですが、メス猫よりもオス猫には要注意です。それは、オスの尿道が細いため、結石の破片や結晶の集塊(しゅうかい:多くの物が集まった塊)、炎症で生じた物質が、尿道の閉塞を起こす危険性が高いためです。

腫瘍も正常な組織を圧迫したり、傷つけたりして、また、腫瘍自体が自壊して出血する場合があります。なお、腫瘍は中高齢の猫でよく見られる疾患です。

猫の膀胱炎の詳しい原因、症状、治療や予防法については、獣医師監修の「猫の膀胱炎」を併せてご覧ください。

オス猫のみで見られるもの

オス猫は、炎症によって残尿感や違和感があると、自分でペニスをなめすぎてしまいます。特に、猫の舌はとげのようになっているため、長時間なめると傷ができやすいのです。また、粘膜は小さな傷でも出血量が多くなります。

メス猫のみで見られるもの

避妊手術をしていないメス猫では、子宮や卵巣のような生殖器系の疾患や、膣炎などで出血が起こりえます。

猫の血尿の対処法・応急処置

様子を見ていい場合

―猫の血尿を確認したら、まずどのように対処すればいいですか?

症状がいつから始まったのか、1日に何回くらいトイレに行くのか、そのうち血尿をしているのは何回か、排尿姿勢をとってから排尿するまでの様子などを確認してください。

―すぐに病院に連れて行ったほうがいいですか?

一度血尿があっただけでも念のため受診をしたほうがいいでしょう。猫は泌尿器系の病気が多いため、軽く考えず早期に治療を開始しましょう。

猫の血尿で、こんな症状や行動が見られたらすぐ病院へ

猫の血尿で、こんな症状や行動が見られたらすぐ病院へ

―すぐに病院に連れて行かなければならない症状とは、どういったものでしょうか?

猫の血尿で危険度が高い症状のチェックリスト

  • 元気や食欲がない
  • 吐いている
  • 頻繁にトイレに行っているが、ほとんど出ていない
  • 血尿の程度がひどい(ほとんど血液が出る)

これらは血尿を起こす病気になっていて、さらに、その病状が深刻であることを示しています。

血尿が治らずに元気や食欲がなくなると、病気によるストレスがかなり強い可能性があります。さらに、吐き気があって尿がほとんど出ていない場合、急性腎臓病が疑われます。

また、炎症で生じた物質や結石、腫瘍などで尿路が閉塞してしまった場合、尿から排泄されるべき老廃物が体内に蓄積してしまいます。そして、尿がたまっているのに出せないと、半日程度で腎不全状態になります。こうなると、尿毒症により全身性の症状が見られるようになります。

猫の腎不全についての詳しい原因、症状、予防・治療法については、「猫の腎不全」を併せてご覧ください。

―受診時に用意したほうがいい物はありますか?

液体の状態で採尿できれば、尿を病院に持参してください。そうすれば、尿検査が可能です。新鮮であればあるほど検査結果の信頼性が高くなります。ただし、シーツや猫砂に付いてしまったものは検査ができないため、血尿の程度を確認してもらうなら写真を撮っておけば十分です。

―治療中の食事や住環境は、どのようにしたらいいですか?

膀胱炎の場合、多くは内科治療と食事療法を行います。食事療法では、原因によって使う療法食が変わるため、必ず獣医師の指示の下で与えるようにしましょう。

結石や結晶が原因の場合は、尿のpH値を変化させたり、飲水量を増やしたりするフードを与えます。結石・結晶の成分は、ストルバイトやシュウ酸カルシウムが多く、ストラバイトであればpH値が下がり、溶解することが期待できます。また、飲水量を増やすメリットは、尿量が増えて排尿回数が多くなるため、膀胱内をきれいに保てることです。

特発性の場合は、ストレスフリーにすることが効果的であると考えられます。そこで、精神的に安定する成分が配合されたフードを与え、膀胱炎の症状を抑えるようにします。

猫の血尿の予防法

猫の血尿の予防法

―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

猫になるべくストレスをかけない、飲水量をしっかり確保する、そして、できるだけ早く血尿という症状に気付いてあげてください。

ストレスを与えない

猫は、環境の変化でストレスを感じることが多くあります。できるだけ猫にストレスを与えないようにし、やむを得ない場合はストレスによる体調不良がないかをしっかり確認しましょう。また、常にトイレを清潔に保ちましょう。

水分をしっかり取らせる

猫に無理矢理水を飲ませることは難しいため、フードをドライタイプではなくウェットタイプに変更するのがお勧めです。ただ、猫はフードの好みがうるさいため、気に入らないと食べてくれないかもしれません。健康なうちから何種類か試して気に入るフードを探しておきましょう。

血尿という症状の早期発見のために

猫は完全室内飼育であれば基本的に決まった場所(トイレ)で排尿するため、血尿はすぐに発見できるでしょう。しかし、外に出る猫の場合は、発見が非常に難しくなるので、元気や食欲の変化を注意深く観察してください。

まとめ

猫には泌尿器系のトラブルが多く、飼い主さんを悩ませていると思います。。

排尿の我慢によって血尿の原因となる膀胱炎を引き起こすことがわかっています。猫は寒かったり、めんどうくさかったり、トイレが汚かったりすると排尿を我慢する傾向があります。そのため、トイレをいつも清潔に保つことや、動くのが億劫にならないようなスリムな体形を保つことも泌尿器系のトラブルの予防になります。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

猫の尿道からの排出物の関連記事

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

猫種別の保険料

当社のペット保険は、猫種による保険料の違いがありません。

また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。

あ行に属する猫の種類
か行に属する猫の種類
さ行に属する猫の種類
た行に属する猫の種類
な行に属する猫の種類
は行に属する猫の種類
ま行に属する猫の種類
や行に属する猫の種類
ら行に属する猫の種類