猫が寝ない原因とはどんな病気?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月25日

猫が夜も昼もずっと寝ないのは、どんな原因があるのでしょうか。病院に連れて行くタイミングや対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

日ごろから愛猫の様子を観察し、状態の変化や動作の異変を感じたら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫が寝ない原因とはどんな病気?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫にとって睡眠とは?

―私たち人間にとって睡眠は大事ですが、猫の場合はどうでしょうか?

猫は、平均して一日16時間程度の睡眠時間を必要とし、平均睡眠時間8時間の人間より長時間眠ります。

眠りには、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」があり、この2種類の睡眠を繰り返しますが、猫の場合、レム睡眠の時間が長いようです。

また、猫は天気が悪い日もよく寝ると言われていて、これには気圧が影響しているようです。

―猫の場合も睡眠の質が悪いと弊害が発生するのですか?

寝不足や眠りの質の悪さは、猫にも大きな影響を与えます。周りで大きな音がすると、せっかく寝ていても目が覚めてしまいます。また、目が覚めるほど大きな音ではなくても、猫は眠りが浅いのでぐっすり眠れないのです。

猫は睡眠不足になると、ストレスからさまざまな症状が起こります。主な症状は、イライラして攻撃的になる、過剰にグルーミングを行う、食欲不振、嘔吐(おうと)や下痢などです。

猫が寝ない原因として考えられる病気とは?

猫が寝ない原因として考えられる病気とは?

―猫が寝ないのはどうしてですか?

猫が寝ない原因は、病気だけではなく、年齢や性格も関係しています。しかし、食欲がないなど、ほかの症状もある場合は病気の可能性があります。

子猫が寝ない原因

子猫が寝ない原因のほとんどは、遊んでいたい、お腹が空いたなどでしょう。しかし、遊びもせず食欲もない、元気がないならば病気の可能性があります。

考えられる病気

  • 寄生虫感染

    猫は、お腹の中に回虫やコクシジウムなどの寄生虫がいると、体調不良からあまり眠れなくなる場合があります。また、ノミや耳ダニが寄生していると、違和感やかゆみで落ち着いて寝られなくなります。

  • 胃腸炎

    猫は、細菌やウイルス感染、寄生虫が原因になって急性胃腸炎を引き起こすと、お腹の痛みや吐き気であまり寝られなくなります。

  • 猫風邪

    ワクチン接種がまだ終わっていない子猫の場合、ヘルペスウイルスやカリシウイルスの感染症にかかりやすくなります。猫風邪にかかると、くしゃみ、鼻汁、発熱などの症状が起こり、息苦しさからしっかり眠れなくなる場合があります。

成猫が寝ない原因

子猫が寝ない原因として挙げた寄生虫感染や胃腸炎は、成猫の場合でも同様です。それら以外に成猫で考えられるものとしては、以下のような場合が考えられます。

  • 発情

    避妊・去勢手術を行っていない猫の場合、発情期が来るとあまり寝ないでソワソワするようになります。

  • 膀胱炎

    ストレスや細菌感染が原因で膀胱炎になったり、膀胱結石ができたりすると、頻尿になり何度もトイレに行くようになります。寝ていても急に起き上がって排尿のポーズをとるなどして、睡眠をしっかりとれなくなる場合があります。

老猫が寝ない原因

猫は7歳を過ぎると高齢期に入ります。子猫や成猫の時期にかかる病気は、老猫でも同じように寝ない原因になり得ます。そのほかに、老猫が寝ない原因として考えられる高齢期特有の病気としては、以下のようなものが考えられます。

  • 認知症

    猫も高齢になると認知症になる場合があります。意味もなく、うろうろと歩き回ったり、急に大声で鳴いたりといった変化が見られます。夜も寝ないで徘徊することがあります。

  • 甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)

    この病気は高齢の猫に多く見られ、食欲が異常に増したり、やたらと動き回ったりします。落ち着きがなくなり、あまり寝なくなってしまう場合があります。

  • 腎不全を始めとする疾患

    高齢になると腎不全や肝疾患、心疾患にかかる確率が高くなります。このような病気にかかると、体のだるさや気持ち悪さなどから、しっかり寝られない場合があります。

猫が寝ない! こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない場合

―たまたま寝つきが悪かっただけのように、一過性で様子を見てもいい場合はありますか?

騒音や来客など、普段はない状況やストレスが原因で、猫は眠れなくなる場合があります。ストレスのもとがなくなり、しっかり寝られるようになったのであれば心配はいりません。

猫が寝ない! こんな症状ならすぐ病院へ

受診を強く勧める場合

―受診すべき行動や異変の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

猫に以下のような症状が見られる場合は、早めの受診をお勧めします。

  • 食欲がまったくない
  • 嘔吐や下痢を伴う
  • 徘徊する
  • 急に大きな声で鳴く
  • 異常に食欲があり動き回る
  • 体を異常になめ、脱毛している
  • 攻撃的になる

 

続いて症状別に考えられる病気を紹介します。

食欲がない

猫に食欲がない状態が3日続くと、肝リピドーシスという病気を引き起こしてしまいます。これは睡眠不足が直接原因になるわけではありませんが、絶食の状態が数日続くことが原因です。重症化すると黄疸が出てしまい、最悪の場合は命にかかわります。

下痢や嘔吐

できるだけ早めに治療を受けないとますます症状が悪化し、脱水症状も起こります。自然に治ることは少ないので、できるだけ早く動物病院を受診してください。

徘徊、急に大声で鳴く

老猫に多く見られる認知症の症状のひとつです。本来寝ているはずの時間もずっと歩いていたり、大声で鳴いていたりすると体力を消耗してしまいます。その結果、免疫力が落ち、病気の原因になる可能性もあるので注意が必要です。

異常な食欲、動き回る

高齢の猫で異常なほどの食欲や、落ち着きがなく動き回るといった症状が見られる場合、甲状腺機能亢進症の疑いがあります。様子を見ていると症状が進行してしまうため、早めに受診しましょう。

体を異常になめて脱毛している、攻撃的になる

猫は、睡眠不足でストレスを感じると、体をなめ続けるといった自傷行為を引き起こしたり、飼い主に対して攻撃的になったりする場合もあります。このように、何かにストレスを感じて起こる行動は治療が難しく、その後も繰り返す可能性があります。

病気やストレスを原因として、猫が寝ないときの対処法

猫が寝ないときの対処法

―猫がずっと寝ないようなら、どのように対処すればいいのでしょうか?

肝リピドーシス

肝臓を保護する内服薬を飲むと同時に、しっかり食べさせることが治療になります。自主的に食べてくれない場合は、強制給餌(きょうせいきゅうじ:強制的に食べさせること)を行わなければなりません。

下痢や嘔吐

内服薬の投与や点滴・注射での治療を行います。感染症や寄生虫が原因である場合もありますが、消化管のアレルギーや腎不全が原因になることも考えられます。治療法が異なるため検査が必要です。

認知症

認知症の原因はよくわかっておらず、完治できる治療薬はありません。ドーパミンの量を増やす薬、EPAやDHAのサプリメントを投与します。

甲状腺機能亢進症

血液検査でホルモン測定をすると診断できます。専用のキャットフードに変えたり、内服薬を投与したりして治療します。

ストレス

ストレスが原因で猫が体をなめすぎたり攻撃的になったりする場合、ストレスを取り除くことが必要です。いらだちを緩和するサプリメントがあるので、獣医師に相談してみましょう。

お勧めできないNGなケア

―猫が寝ないからといって、飼い主が実践してしまいがちなNG行為について教えてください。

猫が寝ないで、お皿の前で座っているからとフードやおやつをあげる、寝ないで走り回っているときに、疲れさせて寝かせようと、猫じゃらしで遊ばせるといった行為はNGです。お皿の前に座っていれば何かもらえる、寝ないで走り回れば遊んでもらえると勘違いしてしまいます。

このような行為を繰り返すと、猫の行動がエスカレートするので注意しましょう。

まとめ

猫が寝ない理由は、年齢によって変わる部分があります。特に高齢の猫では、早い段階で発見すべき病気が隠れている可能性があるので、いつもと違う様子が見られたら、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

獣医師 平松育子

執筆者:平松 育子

獣医師。『ふくふく動物病院』院長。京都市生まれ。山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、2006年、山口市阿知須にて『ふくふく動物病院』を開業。

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