犬のマウンティングの理由とは?やめさせる方法を行動診療科獣医が解説

「犬のマウンティング」は、性行動だけではなく、成長過程やコミュニケーションのひとつとされ、犬にとって自然な行動です。しかし、実社会で犬のマウンティングを放置することは、マナーとして好ましくありません。では、どうやって犬のマウンティングに対処すればいいのでしょうか。

本稿では、動物行動学や問題行動に詳しい獣医行動診療科認定医の奥田順之先生に、犬のマウンティングの原因と問題性、予防と対策についてお話を伺いました。

犬のマウンティングの原因と対策

目次

犬のマウンティングとは?

犬のマウンティングとは、人やほかの犬、ぬいぐるみなどに覆いかぶさる行動を指します。交尾の行動に見えることから、性的なものとして見られがちですが、犬同士では、取っ組み合いの遊びの中での力比べや、互いの社会的な地位の確認の場面で、マウンティングが見られます。この行動には、「自分のほうが、力が強いんだぞ!」というような意味があるのです。

また、家族に対して犬がマウンティングするのは、「どうだ! 僕は強いんだぞ! 乗れるんだぞ!」という意味や、家族のリアクションを面白がって繰り返している場合があります。

犬のマウンティングの原因

子犬にとって大切な成長過程

性成熟前の子犬の場合、取っ組み合いの遊びの中で、マウンティングをすることがよくあります。子犬たちは、マウンティングしたり、されたりを繰り返していきますが、これは、身のこなしを覚えたり、獲物を捉える身体能力を高めたりしていく大切な成長過程なのです。

犬のマウンティングの原因

性ホルモンや発育環境による影響

雌雄差については、必ずしもオスだけがマウンティングするわけではなく、メスでもマウンティングします。しかし、性ホルモンの影響で、やはりオス犬のほうがマウンティングすることが多いようです。

また、犬は、母親のお腹の中で複数頭が一緒になって育ちます。子宮の中でオス犬に挟まれて成長したメス犬は、ホルモンの影響を受け、オスっぽい行動を取りやすくなります。そうした育ちによっても、マウンティングのしやすさは変わってくるのです。

犬のマウンティングを放置すると何が問題なのか

吠えやかみつきに発展する可能性がある

犬のマウンティングは、正常なコミュニケーション行動のひとつですから、犬同士の遊びの中で多少することは問題ないでしょう。しかし、愛犬が日常的に執拗なマウンティングをしてくると困ってしまいます。また、それを放置することは、飼い主が「あなた(犬)を管理する能力は私にありません」と、犬に示すようなものです。飼い主さんのこうした態度によって、ほかの場面でも犬の自己主張的行動が強くなり、吠えやかみつきなどに発展する可能性があります。

犬のマウンティングを放置すると何が問題なのか

他人に危害を加えかねない

家庭内のみならず、さらに他人に対してもマウンティングするようになると、問題はより大きくなります。例えば、散歩中に他人にマウンティングしようと跳びかかり、相手を転ばせてケガをさせてしまうかもしれません。

犬のマウンティングをやめさせる方法

愛犬にマウンティングをやめさせるには、第一にマウンティングしようとしたら止めることです。犬はマウンティングをさせればさせるほど、繰り返すようになります。次に、お座りや伏せなどを教え、適切な行動を導くことです。

ほかの犬へのマウンティングのやめさせ方

同居犬とのマウンティングは、多少のことであれば、遊びの範疇(はんちゅう)であり、気にすることはありません。しかし、執拗に、また一方的にマウンティングする場合や、激しいけんかに発展してしまう場合は、注意が必要です。家の中でも生活空間を分け、犬同士を一緒にするときはリードを付け、飼い主さんが制止できるようにしておきましょう。

一方、愛犬が散歩中、ほかの犬にマウンティングをすることを許してはいけません。相手の犬に嫌な思いをさせてしまうかもしれませんので、愛犬のリードを短く持ち、止めるようにしましょう。

犬のマウンティングをやめさせる方法<

人間へのマウンティングのやめさせ方

愛犬が家族に対して執拗にマウンティングを繰り返す場合は、家の中でもリードを付けておき、止められるようにしておきましょう。その上で、お座りや伏せといった落ち着く行動を繰り返し教え、指示どおりにできたら手持ちのフードを与え、褒めるようにしましょう。

クッションやぬいぐるみなどへのマウンティングのやめさせ方

クッションやぬいぐるみなどへのマウンティングについては、放置しても構わないかと思います。なぜなら、してもいいものを用意しておかないと、ほかの犬や人にマウンティングする欲求が高まる可能性があるからです。

愛犬がほかの犬からマウンティングされそうになったら

愛犬が、散歩中にほかの犬からマウンティングされそうになった場合、犬の性格や社会的スキルにもよりますが、リードで愛犬を引き寄せて、その場を離れるのが無難でしょう。特にほかの犬とのコミュニケーションが得意でない場合、いきなりマウンティングされたら、トラウマになってしまうからです。

してはいけない飼い主さんのNG行動

飼い主が愛犬にマウンティングしてはいけない

愛犬がマウンティングしてくるからと言って、「飼い主が上だと教えないといけない」と思い、飼い主さんが愛犬に馬乗りになってマウンティングするのはお勧めできません。こうした行為は、犬を余計に興奮させ、飼い主さんとの間に対立的な関係を生み出してしまったり、犬に強い恐怖心を植え付けてしまったりすることがあるからです。

まとめ

犬のマウンティング自体は、正常な行動であり、犬同士のコミュニケーションとして多少発生することは問題ないでしょう。しかし、人に対して繰り返し行うもの、犬同士でも執拗なマウンティングを許してはいけません。

愛犬にマウンティングをさせないように止めることと、お座りや伏せといった適切な行動を誘導し、褒めることでマウンティングを減らし、いい関係を築いていきましょう。

そのほか愛犬の行動やしぐさが気になったら、獣医師監修の「犬の問題行動、どうしたらいい?」を併せてご覧ください。

執筆者プロフィール

獣医行動診療科認定医の奥田順之 先生

奥田順之 先生

ぎふ動物行動クリニック院長、獣医行動診療科認定医、鹿児島大学獣医学部講師(動物行動学)。
犬猫の殺処分問題を解決するために、2012年NPO法人『人と動物の共生センター』を設立。家庭犬トレーナーと共に、犬のしつけ教室『ONE Life』を開業。2014年には問題行動の診察を専門に行う『ぎふ動物行動クリニック』を開業。著書に『"動物の精神科医"が教える犬の咬みグセ解決塾』ほか。