AZUKIちゃん
Profile
AZUKIちゃん
シー・ズーのAZUKIちゃんはそのキュートな姿からは想像もできないほど大変な手術を乗り越えたわんちゃんです。"門脈シャント"というあまり知られていない病気をみなさんに知ってもらいたいという飼い主・みゆきんぎょさんにお話を伺いました。
「大手術を乗り越えての現在なので、可愛いわが子が愛おしくてたまりません」
AZUKIちゃんは"門脈シャント"というあまり聞きなれない病気で手術をしたそうですね。
「1歳を過ぎたころからストルバイト結石で通院と投薬、そしてpHコントロールの療法食で治療していたのですが、あるときから毎朝のように嘔吐するようになったんです。食欲も低下して肝機能の数値が悪化しました。アンモニアの数値が異常に高くなり、高アンモニア血症として毎月の採血、投薬、肝臓病用の療法食で治療をしたのですがよくならないので、セカンドオピニオンを求めて受診したところ、高アンモニア血症だけではなく、小肝症、門脈シャントの疑いがあると言われ、都内の大学病院を紹介されました。
全身麻酔をして造影剤を使ってCTを取ったところ、おおきなシャント(※)が発見され、年齢も年齢だったためにすぐに手術となりました。
※シャント:消化管で発生したアンモニアなどの毒素は通常は腸管から門脈という血管を通って肝臓に運ばれ無毒化されます。しかし門脈に異常なバイパス血管があると、毒素が全身を循環してしまいます。この異常なバイパス血管がシャントです。
通常この手術は1度で済むらしいのですが、4歳を超えていたため、血液の流れを急に変えることは体への負担がかかって危険であるという判断で2度に分けての手術となりました。
このまま放置していたら肝性脳症になってしまう可能性もあったので、病院を変えていなかったら今頃どうなっていたのかと思います。セカンドオピニオンは本当に大事です。
術後も毎週のように病院へ通ったり、傷跡の回復が遅かったりして大変ではありましたが、手術から1年が経とうとしている現在は、肝機能の数値は良好です。通院はかなりの回数を重ね、採血もたくさんしました。膵炎になったこともありましたし、今現在もまだ小肝症のため疲れやすかったりしますが、それでも毎朝嘔吐していたのがうそのようです」
大変な1年でしたね。でも少しずつよくなっているようでよかったです。
「無事に1年を迎えようとしていて、これからまた採血やエコー等の検査をする予定です。
あまり知られていない"門脈シャント"ですが、なりやすい犬種もありますのでぜひみなさんに知ってもらいたいです。
また高アンモニア血症を何年も放置してしまったせいもあって、腎臓にアンモニアの石灰化がみられ、現在、経過観察中です。
術後は血液の流れが変わったため体質も変化し、皮膚の状態も悪化してしまいました。現在は、肝臓の薬と皮膚の薬を飲み続けています。
まだ若いのに大病でいきなり大手術となり、離れ離れになってしまうんじゃないか・・・という不安にかられました。それを乗り越えての現在なので、可愛いわが子が愛おしくてたまりません、」
みゆきんぎょさんにとって本当にわが子なんですね!!
「私と夫とAZUKIの3人暮らしですし、AZUKIは実家で生まれた子で、出産したときから一緒なんです。私の手で臍の緒を切って縛りました。ママ犬もパパ犬も今でも実家で元気にしています。
じつは私が自分の病気、手術でかなり精神的に追い込まれていたときにAZUKIが生まれて我が家にやってきたんです。
それから私は元気になって、生きる希望を与えてもらったのでAZUKIは私のために生まれてきてくれたんだと思っています。私の生きがい、宝物、子供です。AZUKIへの思い入れが強いため、リンクしていて、体調が悪くなる時は同時、同じ場所が悪くなります。不思議ですよね・・・」
シー・ズーという犬種の特性を理解したうえでの皮膚・被毛のケアも怠りません
現在、AZUKIちゃんはお散歩や運動はしているのでしょうか?
「肝臓が悪いと診断されてからは運動は極力控えて、気分転換のための抱っこ散歩が中心でした。でも現在は走らせても大丈夫という許可が出たので無理のない範囲で楽しませてあげています。"楽しい!もっと遊びたい!"という気持ちを我慢させることは辛いですが、楽しいからといって好きなだけ遊ばせてしまうと体への負担が大きいので、特にドックランやロング散歩などでは疲れるまで遊ばせずに、まだ遊びたいところでも我慢させています。そうしないと肝臓が弱いため、次の日にぐったりしてずっと寝てしまうのです。楽しかった次の日が辛いのはかわいそうですから。
しっかり体調や病気のことを考えたうえで<遊びの時間を作り、遊んだ次の日にはゆっくり休ませてあげる><連続しての外遊びは控える><次の日は特に体調をよくみてあげてる>ということをしています」
AZUKIちゃんの健康に気遣って家の中で工夫されていることはありますか?
「フローリングは滑って足腰によくないので廊下にはカーペットを、リビングには絨毯を敷いて、極力フローリングの場所をなくしています。
またベッドやソファにも登りやすいようにステップを置いて足腰に負担がかからないようにしてあります。
あと、皮膚が弱いので人間の赤ちゃん用の、界面活性剤の一切入っていない洗剤を利用してAZUKIのものだけ別に洗っています、もちろん柔軟剤などは使用しません。体につくものは極力天然のもので皮膚への負担を減らしています。
いつも綺麗にトリミングしていますが被毛のお手入れはどうされているのでしょうか?
「2週に1度はトリミングサロンでシャンプーとカットしてもらっています。ブラッシングは毎日していますが、皮膚が弱いため、コートのお手入れ剤が皮膚につかないようにしています。
シー・ズーは元々皮膚の弱い犬種なので、マラセチアや多汗症、脂漏症、膿皮症などにもなりやすいため薬用シャンプーでこまめに洗っています」
AZUKIちゃんと一緒に楽しんでいることはありますか?
「あまり運動はさせられないので、公園をお散歩することとドックカフェで家族で過ごすまったりとした幸せな時間を楽しんでいます♪」
"門脈シャント"という病気とセカンドオピニオンの大切さについて、貴重なお話を聞くことができました。みゆきんぎょさん、ありがとうございました。
獣医師さんのワンポイントアドバイス
門脈シャントの手術を乗り越え、現在は安定した状態で生活を送っているAZUKIちゃんと飼い主さんのみゆきんぎょさんに心から「良かったですね!」と言いたい気持ちでいっぱいです。
この病気は術後も細やかなケアと検査が継続的に必要です。それを安定したところまでもっていってあげることができたのは、ひとえにAZUKIちゃんの頑張りとみゆきんぎょさんの愛情の賜物だと思います。
そしてセカンドオピニオンの大切さは、さまざまな病に悩む飼い主さんたちに今後も是非伝え続けてください。多くの獣医さんが日々切磋琢磨しているなかでも、知識や経験の差が出てきてしまうことは現実的に否めません。
そして医療レベルの差異だけでなく、患者であるペット、ひいては飼い主さんとお医者さんのフィーリングや相性もあると思います。
それを直接セカンドオピニオンという手段を通して飼い主さん自身が見極めてあげることができるのであれば、何よりもペットのためになり、飼い主さんもより安心して治療に専念することができます。
シー・ズーという犬種の特性も理解し、衣食住の中でできる限りのことをしてあげるという、みゆきんぎょさんの日々の努力がすばらしいと思います。AZUKIちゃんと愛にあふれた穏やかな暮らしが末永く送れるといいですね。