犬の唸る理由とは?やめさせる方法を行動診療科獣医が解説

最終更新日:2024年07月09日

犬が唸るとき、その背景にはさまざま理由があります。犬は訳もなく唸るのではなく、伝えたいメッセージがあって唸るのです。そんな犬の気持ちを理解せず、犬の唸りをやめさせようとしても逆効果かもしれません。

本稿では、動物行動学や問題行動に詳しい獣医行動診療科認定医の奥田順之先生に、犬が唸る原因と問題性、予防と対策についてお話を伺いました。

犬が唸る原因と対策

犬が唸る理由と気持ちを理解しよう

「唸る=犬からのメッセージ」と捉えることが大切

犬にとって、「唸る」という行動は、相手に対して、「これからそれ以上嫌なことをすると攻撃するぞ!」という意思表示のための行動です。しかし、「唸る=悪い行動」と考えるのではなく、「唸る=犬からのメッセージ」と捉えることが大切です。

ただし、「唸る」行動がすべて攻撃につながるわけではありません。引っ張りっこや、取っ組み合い遊びの中で唸るという行動もありますので、行動の前後関係を見て、危険性を判断する必要があります。

犬が唸る原因

犬が唸る原因

犬の唸る行動は、さまざまな場面で発生します。遊びの場面以外では、基本的に犬が置かれた状況に対する「嫌」を示すために起こるのです。

物を守って唸る

最も多いのは、噛んではいけない物を犬から取り上げようとした際に唸るケースです。物を無理やり取り上げることを繰り返すと、犬は「飼い主が近づいてくると大切な物を奪われる」と学習し、唸る行動が悪化していきます。

触る・なでる・抱っこしようとすると唸る

接触や拘束に対して不快感・恐怖感があり、唸るケースです。ブラッシングや足ふきなど、無理やり犬の身体を拘束してケアを行うと、犬は拘束や接触に対して嫌悪感を抱き、それを避けるために唸るようになります。

まれに、普段は触っても唸らないのに、急に唸るようになったということもあります。その場合、お腹が痛い、頭が痛い、関節が痛いといった身体的な不調があり、「今は触らないでほしい」と唸っていることも考えられます。

近づくだけで唸る

ケージにいる犬、ソファーやクッションで寝ている犬に近づくだけで唸るということもあります。唸っても触るのを止めてくれない、むしろ叱られるなど、「この人には、私の気持ちを伝えてもわかってくれない」という経験が繰り返されると、犬は飼い主に対する不信感を募らせ、近づくだけで唸る行動に発展することがあります。

遊びの中での唸り

遊びの中での唸りとは、主にロープ遊び、取っ組み合い遊び、追いかけっこ遊びの中で発生するケースです。多くの場合、攻撃に発展するものではありません。人間でもテンションが上がると、盛り上がって声を出すことがありますが、それと同じです。しかし、中には、おもちゃをくわえて放さず、物を守る唸りになっている場合があるので注意が必要です。

犬が唸るのを放置すると何が問題なのか

犬が唸るのを放置すると何が問題なのか

誰に対しても唸るようになり、弊害を生じさせる

犬に唸る行動を繰り返させることは、「唸れば、嫌なことが終わる」という成功体験を積ませることになります。そのため、繰り返せば繰り返すほど、唸る行動はさらに増えます。ひいては、家族だけでなく、動物病院やトリミングサロンでも唸るようになり、診察やトリミングができなくなることがあります。また、放置することで、大きな事故につながることもあります。

犬が唸る行為をやめさせる方法としつけのポイント

犬の唸る行動は、予防が何より重要であることを意識しておく必要があります。

物を守らせない

物を守る唸りに対しては、犬に守らせる物を与えないことが最も大切です。部屋を片付けたり、ドッグガードで行動範囲を区切ったりして、犬が不適切な物を見つけてしまわないよう未然に防ぎましょう。

物を持ったら交換

犬が物を持ってしまった場合は、おやつで交換しましょう。しかも、飛び切りおいしいおやつにするのです。無理やり取り上げることは、「物を奪われる」経験を積ませてしまうことになります。交換ならば、犬も納得して応じてくれるでしょう。

犬が唸る行為をやめさせる方法としつけのポイント

交換の練習

「交換」は、普段から、おもちゃで練習しておくといいでしょう。例えば、おもちゃとして犬にロープを噛ませ、「交換」と伝えたら、おやつを与えます。ロープを噛みながらおやつを食べられないので、ロープを放すはずです。その後、再び遊んであげることで、「放しても、また遊べるし、おやつももらえる」と犬に教えていきましょう。

無理やりケアしない

犬が嫌がっても無理やりブラシや足ふきなどのケアをすることは、犬の警戒心を育ててしまう行為です。おやつやフードを使いながら、触られるとフードをもらえるといった形で、触られることへの警戒心を抱かせないようにしましょう。

ハウスのトレーニング

犬を追いかけ回して、無理やりハウスに入れることも唸りの原因になります。そこで、おやつを使って、ハウスに自分から入れるように練習していきましょう。ハウスにおやつを投げ入れ、自分から取りに行かせます。扉を開けたまま繰り返すと、徐々にハウスに入る警戒心が下がっていきます。

してはいけない飼い主さんのNG行動

「唸ったら叱る」を繰り返すと前触れなく攻撃されるかも

「唸ったら叱る」という行為は、犬を一方的に抑圧しているだけです。唸りは攻撃の前兆であり、犬は「やめてほしいという気持ちを飼い主に伝えよう」として唸っています。唸りに対して、叱責を繰り返すと、犬は「この人に唸っても意味がない、実力行使するしかない」と考え、唸らず、前触れなく攻撃してくるようになることもあります。

まとめ

「唸る」は犬のメッセージ。犬の気持ちに配慮しよう

犬が唸って発する、「それ以上やめて」「僕は嫌なんだよ」というメッセージを受け取り、犬の気持ちに配慮してあげることが何より大切です。「ダメ!」と犬に叱責するのではなく、唸らなくていい、安心できる環境・関係を整えていきましょう。

そのほか愛犬の行動やしぐさが気になったら、獣医師監修の「犬の問題行動、どうしたらいい?」を併せてご覧ください。

執筆者プロフィール

獣医行動診療科認定医の奥田順之 先生

奥田順之 先生

ぎふ動物行動クリニック院長、獣医行動診療科認定医、鹿児島大学獣医学部講師(動物行動学)。
犬猫の殺処分問題を解決するために、2012年NPO法人『人と動物の共生センター』を設立。家庭犬トレーナーと共に、犬のしつけ教室『ONE Life』を開業。2014年には問題行動の診察を専門に行う『ぎふ動物行動クリニック』を開業。著書に『"動物の精神科医"が教える犬の咬みグセ解決塾』ほか。