犬の誤飲の理由とは?やめさせる方法を行動診療科獣医が解説

ちょっと目を離した隙に愛犬が何かをくわえていて、思わず声を上げた瞬間、飲み込んでしまった! そんな経験ありませんか? また、どんなに家の中を片付けていても散歩中に拾い食いしてしまう可能性もあるでしょう。

本稿では、動物行動学や問題行動に詳しい獣医行動診療科認定医の奥田順之先生に、犬の誤飲の原因と問題性、予防と対策についてお話を伺いました。

犬の誤飲の理由とは?やめさせる方法を行動診療科獣医が解説

犬が誤飲してしまう原因

口に物を入れるのは調べるためや遊びの場合も

犬の誤飲は、命にかかわる行動ですので、しっかりと防がなければなりません。

しかし、犬は好奇心旺盛な動物で、興味の引かれる物を見つけると、何でも調べたくなってしまうのが常です。また、犬は人間と違って、手で物を持つことができません。そのため、最も感覚が優れている口を使っていろいろなものを調べます。ときには、口の中に入れて、食べられる物かどうかを調べることもあります。ですから、「口に入れている=誤飲」というわけではないのです。

また、遊んでいるだけのこともよくあります。しかし、それを見て焦った飼い主さんが、愛犬の口をこじ開けて無理やり取り出そうとすると、犬は「大切な物を奪われたくない」という気持ちから、そのまま飲み込んでしまうことがあるのです。

犬の誤飲の問題点とは?

犬の誤飲の問題点とは?

全身麻酔をして手術をしなければならない可能性

犬が危険な物を誤飲してしまえば、早急に動物病院を受診して、吐き戻しの処置を行う必要があります。しかし、大きな物を誤飲したり、誤飲から時間が経過したりしていれば、内視鏡を使った手術や、開腹手術で取り出さなければなりません。これは全身麻酔が必要な処置で、犬に大きな負担となります。

犬が誤飲しやすいものとその注意点

焼き鳥の串、鳥の骨など、食べ物に関連したもの

家でのパーティや散歩中に拾って飲み込んでしまうことがあります。先が尖っている骨や、長いものは、消化管に刺さってしまうので注意が必要です。

人用や同居動物の薬、防腐剤・殺鼠剤など

薬も誤飲されやすい物です。飼い主が犬の誤飲に気付かず、薬の作用が発現してしまえば、命にかかわることがあります。また、家庭内で使用する殺鼠剤や防腐剤など、化学物質を飲み込んでしまった場合も非常に危険です。

食べてはいけない物

玉ねぎ、ネギ、にんにく、チョコレート、レーズンなど、人間に害がなくても犬が食べてはいけない物を食べてしまうことがあります。少量でも中毒を引き起こし、死亡例もあるため注意が必要です。

おもちゃの一部や布製の物

ロープをかじって半分食べてしまった、遊んでいたひもを飲み込んでしまったなどの誤飲も見られます。ひも状の物は、腸に絡まって、腸閉塞を起こすことがあります。

犬の誤飲を予防する方法としつけのポイント

犬の誤飲を予防する方法としつけのポイント

室内

片付けをして行動範囲を制限し、物に近づけさせない

室内で犬の誤飲を予防する方法は、第一に物を片付けるということです。あるいは、台所のような物が多い場所に行けないよう、ドッグガードといったもので行動範囲を制限することも重要です。犬が食べてはいけないものを口に入れなければ、誤飲は絶対に起こりません。特に子犬の時期に、食べてはいけない物を口にくわえる経験を積ませなければ、将来的にも、そうしたものに興味を示しにくくなり、誤飲を予防できます。

「交換」で持っている物を放すようにする

次に、「交換」を教えておくことです。ロープ遊びなどの際に、途中で「交換」と伝えて、犬においしいおやつを与えるようにします。犬はおやつを食べようとロープを放すため、交換が成立します。繰り返していくと、「交換」と言うと、犬は持っている物を放すようになっていきます。

屋外

ごみが落ちている場所ではリードを短く持ち、足早に通り過ぎる

屋外での犬の誤飲は、落ちているごみを拾ってしまうことから起こります。リードを伸ばして、犬を自由に歩かせている時は、特に注意が必要です。特に、ごみが落ちているような場所では、リードを短く持ち、足早に通り過ぎましょう。

散歩中にフードを与え、飼い主に注目させる

散歩の際、普段食べているフードを給与量の3分の1程度持って行くことも有効です。歩きながら与え続けると、飼い主さんに対する犬の注目が高まり、何かを拾ってしまうリスクを減らせます。

犬の誤飲に対して、してはいけない飼い主さんのNG行動

犬の誤飲に対して、してはいけない飼い主さんのNG行動

慌てて無理に取り出そうとしないこと

犬が口の中に何か入れた時に、慌てて取り出そうとすることはよくあること。しかし、それを無理やり取り出そうとすれば、犬は本気でかみついてくることがあり危険です。さらに、そうした行為が、犬を「取られる前に早く飲み込まなきゃ」という気持ちにさせ、むしろ、飲み込ませてしまうことがあります。

まずは、犬が大好きなおやつで「交換」を試してみるのが無難です。手元にあれば、犬が食べても平気な人間の食べ物を使うことも有効です。犬にとって守っている物よりも価値が高い物であれば、交換に応じるでしょう。

それでも出さない場合、飲み込むと本当に危険な物なら、かまれることを覚悟で無理やり口を開けることも考えましょう。

まとめ

誤飲のリスクは飼い主の予防次第で軽減できる

誤飲は、命にかかわる場合がある危険な行動です。一方で、飼い主の予防次第で、リスクは大きく軽減します。物を片付け、行動範囲を制限し、不適切な物を口に入れるという経験を積ませないようにしましょう。そして、犬に「交換」を教え、食べてはいけない物を拾ってしまっても、安全に取り出せるようにしましょう。

それでも、「誤飲してしまった」、あるいは「誤飲したかも」と思ったら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。

そのほか愛犬の行動やしぐさが気になったら、獣医師監修の「犬の問題行動、どうしたらいい?」を併せてご覧ください。

執筆者プロフィール

獣医行動診療科認定医の奥田順之 先生

奥田順之 先生

ぎふ動物行動クリニック院長、獣医行動診療科認定医、鹿児島大学獣医学部講師(動物行動学)。
犬猫の殺処分問題を解決するために、2012年NPO法人『人と動物の共生センター』を設立。家庭犬トレーナーと共に、犬のしつけ教室『ONE Life』を開業。2014年には問題行動の診察を専門に行う『ぎふ動物行動クリニック』を開業。著書に『"動物の精神科医"が教える犬の咬みグセ解決塾』ほか。