事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 歯周炎、胆嚢粘液嚢腫 約75万円
2 乳腺腫瘍、皮膚腫瘤ほか 約45万円
3 脳腫瘍 約45万円
4 膿皮症、胆嚢破裂など 約45万円
5 肥満細胞腫 約45万円

※お支払い金額は1回の請求ベースで掲載しております。
※個別の契約に関してはお答えできません。個人が特定できない範囲で情報を掲載しています。

請求書類到着日から
着金するまでの日数
平均
15.55

※2022年5月1日~2022年5月31日に保険金支払手続きを行った事案
※保険金請求書類が整った日の翌日から起算してお客さまの口座に振り込まれる日までの実日数(土日祝日を含みます)

一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。

[追記日] 2022年9月7日

平均的な保険金のお支払い事例

保険金のお支払いは、上記のように高額なものに限りません。次に、平均的な保険金のお支払い事例としてペットのマラセチア性外耳炎の診療をご紹介します。

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 マラセチア性外耳炎 約24,000円

上記金額は、1,000円未満を切り捨てています。

高額診療「犬の肥満細胞腫」を獣医師が解説

2022年5月度の高額保険金お支払い事例で取り上げた「犬の肥満細胞腫」の診療内容について、当社ペット保険付帯サービス『獣医師ダイヤル』を担当されています「電話どうぶつ病院Anicli24」院長、三宅亜希先生にご解説いただきました。

肥満細胞腫とは、どんな病気なのか

肥満細胞腫は、血管の周囲、皮膚、皮下組織、肺、消化管など、体のいたるところに存在する造血幹細胞(骨髄で血球を作るもとになっている細胞)由来の肥満細胞ががん化する病気です。単発で発生する場合と、多発する場合があります。

犬の肥満細胞腫は皮膚にできるケースがほとんどで、犬に一番多く見られる皮膚腫瘍です。皮膚の腫瘤(しゅりゅう:しこりのこと)やリンパ節の腫れ以外の初期症状はほぼありませんが、触った刺激などで腫瘤内の肥満細胞からヒスタミンなどが放出されることにより、周囲が急に腫れたり、赤くなったりする「ダリエ徴候」と呼ばれる症状が現れる場合があります。その後、腫れは引いてくるため、「腫瘍が急に大きくなったがすぐにまた小さくなった」という報告を飼い主さんからされることがあります。

この、肥満細胞からのヒスタミンなどの放出は、主要部分以外にも影響するため、肥満細胞腫になると多量のヒスタミンによって消化管潰瘍や血圧の低下が起こる場合があります。

犬の肥満細胞腫は、ボクサー、ボストン・テリア、パグ、イングリッシュ・ブルドッグ、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーなどが好発犬種(病気にかかりやすい犬種)です。

事例の犬の肥満細胞腫の通院日数、入院日数、手術回数について

種別
傷病名 肥満細胞腫
通院日数 13日
入院日数 15日
手術回数 1回

※上記の数値は、PS保険加入者さまから請求されたものであり、ペットメディカルサポート株式会社が補償する範囲を示すものではありません。また、平均や水準を示すものでもありません。

犬の肥満細胞腫の診療内容

※下記の内容は、犬の肥満細胞腫の一般的な診療についての記述であり、PS保険にご請求いただいた事案の診療内容とは異なります。

検査

問診、視診

飼い主さんに皮膚病変を見つけた時期やきっかけ、日常生活での様子、既往歴の有無、薬の投与歴などの問診を行います。

触診

あごの下、脇の下、後ろ足の付け根、膝の裏など、皮膚のすぐ下にあるリンパ節を触って、腫れの有無を確認したり、腫瘍の大きさを測ったりします。

血液検査

採血をして、貧血や各臓器への影響の有無などを確認します。全身性の肥満細胞腫では、血液中に多数の肥満細胞腫を確認できることもあります。

画像検査

レントゲン検査や超音波検査により、肺、肝臓や腎臓などの臓器、リンパ節への転移の有無を確認します。臓器への転移は画像で確認できない場合も多く、必要に応じて細胞診を行います。

細胞診

腫瘍に細い針を刺して採取した細胞を顕微鏡で観察し、肥満細胞腫なのか、炎症や過形成(過剰に細胞が増殖した状態)などほかの原因で腫れているのか鑑別します。肥満細胞腫と判断できた場合は、悪性度の高さも確認します。

リンパ節への転移の有無を確認することは重要であるため、リンパ節の細胞診も行うことが多いです。また、各臓器の細胞診を行う場合もあります。

遺伝子検査(c-kit遺伝子検査)

腫瘍やリンパ節などから採取した細胞の遺伝子を検査します。肥満細胞腫の中でも、c-kit遺伝子※が変異したタイプなのか判断が可能で、治療薬の選択に役立ちます。

※肥満細胞の表面に存在し、増殖の信号を出すKITたんぱくというたんぱく質の設計図にあたる遺伝子

治療法

犬の肥満細胞腫の治療方法には、外科手術、放射線治療、化学療法があり、悪性度や原発巣(最初に腫瘍が発生した病変)が切除可能かで変わります。明らかな転移がある、飼い主さんが外科治療を望まないなどの理由で外科治療を行わないケースでは、化学療法や放射線治療から開始します。

外科手術

十分なマージン(がん細胞が存在しないと想定される範囲)を確保して、腫瘍を切除します。

悪性度が高い場合や、転移がある場合、腫瘤が十分に切除しきれない場合は、外科手術と併用して化学療法や放射線治療を行います。

放射線治療

強力なX線を当ててがん細胞を傷害し、腫瘍を小さくする効果があります。外科手術後に行うのがより有効ですが、マージンが確保できない場合は放射線治療から始める場合もあります。放射線治療が行える動物病院は少なく、大学病院などで行うことがほとんどです。

化学療法

抗がん剤を投与して、細胞分裂を阻害し腫瘍をコントロールします。肥満細胞に効果を示す抗がん剤はいくつかあり、効果の反応を見ながら組み合わせて使用します。c-kit遺伝子に変異があるタイプには、分子標的薬という抗がん剤が効果的です。ただし、c-kit遺伝子の変異が検出されなかった場合でも分子標的薬が効果を示す例もあります。

消化管潰瘍や血圧の低下が見られる場合は、必要に応じて抗ヒスタミン薬が処方されます。化学療法は数か月、場合によっては数年行われます。

予後

リンパ節や臓器に転移しておらず、腫瘍の悪性度も低く、十分なマージンを確保して切除できた場合、定期観察となり、予後は良好です。悪性度が高い場合や完全に切除しきれなかった場合は、長期的な化学療法が必要になります。化学療法を行っている間は、副作用の影響を考慮して定期的に血液検査を行います。

まとめ

肥満細胞腫の外観はさまざまで、見た目だけでは悪性度が高い腫瘍に見えない場合もあるため、つい見過ごしてしまう飼い主さんも少なくありません。転移が起こる前に診察や検査を受け、早期発見・早期治療が重要です。愛犬にしこりや病変を見つけたら、小さいからと放置せず、動物病院を早めに受診しましょう。

執筆者プロフィール

三宅亜希 先生
三宅亜希 先生

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。