2020年10月度月間 高額お支払い事例
[掲載日]

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 尿閉 約65万円
2 急性胃腸炎、消化器閉塞ほか 約60万円
3 組織球性肉腫、胸腔内出血 約55万円
4 てんかん、僧帽弁閉鎖不全ほか 約45万円
5 アトピー性皮膚炎、膵炎ほか 約45万円

※お支払い金額は1回の請求ベースで掲載しております。
※個別の契約に関してはお答えできません。個人が特定できない範囲で情報を掲載しています。

請求書類到着日から
着金するまでの日数
平均
5.35

※2020年10月1日~2020年10月31日に保険金支払手続きを行った事案
※保険金請求書類が整った日の翌日から起算してお客さまの口座に振り込まれる日までの実日数(土日祝日を含みます)

一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。

[追記日] 2021年 2月 2日

平均的なお支払い事例

保険金のお支払いは、上記のように高額なものに限りません。次に、平均的なお支払い事例としてペットの胃腸炎の診療をご紹介します。

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 胃腸炎 29,000円

上記金額は、1,000円未満を切り捨てています。

高額診療「猫の尿閉」を獣医師が解説

2020年10月度の高額保険金お支払い事例で取り上げた「猫の尿閉」の診療内容について、当社ペット保険付帯サービス『獣医師ダイヤル』を担当されています「電話どうぶつ病院Anicli24」院長、三宅亜希先生にご解説いただきました。

尿閉とは、どんな病気なのか

腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱にたまり、尿道を通って体外に排泄されます。尿閉とは、膀胱内に尿が貯留しているのに十分な排尿ができない状態のことを言います。排尿時には膀胱の出口が開き膀胱が収縮しますが、この動きが正常に行えないときや、尿道に物理的な通過障害があるときに尿閉が起こります。

前者は膀胱炎からの二次的なものや神経障害により起こりますが、今回の「猫の尿閉」では、後者の尿道閉塞による尿閉について説明したいと思います。尿道閉塞は、尿路結石、膀胱炎による炎症・血餅(けっぺい)・尿道栓子(少量のミネラル成分と多量の蛋白(たんぱく)が混ざり合ったもの)などが原因で起こります。腫瘍のようなできものが原因となることもあります。

尿閉の症状としては、何度もトイレに行くが排尿しない、ぽたぽたと血尿が垂れるなど、膀胱炎と似ていますが、尿を体外に排泄できない状態が続くと、尿毒症を起こし危険な状態になります。

尿路結石や膀胱炎はどの猫でも起こりますが、運動不足、肥満、トイレ環境(トイレが汚い、数が少ない、好みの砂ではない、などのためトイレを我慢することがある)、飲水不足などがリスクとなります。また、雌に比べると雄の尿道は細くて長いため、尿道閉塞が起こりやすく、重症化しやすいため注意が必要です。

事例の猫の尿閉の通院日数、入院日数、手術回数について

種別
傷病名 尿閉
通院日数 19日
入院日数 19日
手術回数 1回

※上記の数値は、PS保険加入者さまから請求されたものであり、ペットメディカルサポート株式会社が補償する範囲を示すものではありません。また、平均や水準を示すものでもありません。

猫の尿閉の診療内容

※下記の診察内容は、猫の尿閉の一般的な診療内容についての記述になり、PS保険にご請求いただいた事案の診療内容とは異なります。

検査

問診、視診

飼い主さんに症状が始まった時期、排尿時の様子、最後にまとまった排尿をした日時、既往歴の有無、薬の投与歴などの問診を行います。また、陰茎の色や腫れなども観察します。尿毒症を起こしている場合は、嘔吐、食欲不振、元気消失、虚脱などが起こります。

触診

膀胱を触診し、硬さを確認します。通常、膀胱は水風船のような弾力がありますが、尿道閉塞を起こし膀胱内に尿が貯留していると、ソフトボールのような硬さになります。

画像検査

超音波検査により膀胱にどれくらい尿が貯留しているか、結石があるか、などを確認します。

血液検査

血中の尿素窒素、クレアチニン、電解質などを確認します。これにより尿毒症を起こしているかどうかがわかります。

尿検査

尿の色、濃さ、蛋白や糖が出ているか、細菌や結晶成分があるか、などを確認します。正確な尿の状態を知るためには、経皮的膀胱穿刺(お腹から膀胱まで針を刺して直接膀胱内の尿を採取します)を行います。

治療法

通常入院管理となります。まずは、尿道カテーテルを用いた内科療法による閉塞の解除を試みますが、外科治療が行われることもあります。

内科治療

内科治療では、尿道カテーテルによる尿道閉塞の解除後、定期的に膀胱内の洗浄を行ったり、点滴を流し新しい尿を十分に排尿させたりすることで膀胱内をきれいにします。尿検査で細菌が見つかった場合は抗生剤を使用します。尿毒症を起こしている場合はその治療も行います。

外科治療

内科治療で尿道閉塞が解除できなかったり、解除されても繰り返し閉塞を起こしたりするような場合は、外科治療が選択されます。この手術は、細い尿道部分である陰茎を切除し、太い尿道からそのまま排尿できるようにするもので、尿道造瘻術(にょうどうぞうろうじゅつ)と言います。なお、外科治療は全身麻酔下で行うため、全身麻酔を安全に行えるのかを確認する必要があり、術前検査として血液検査や胸のレントゲン検査を行います。

予後

内科治療で改善した場合、予後は良好です。外科治療をした場合、尿道閉塞の心配はなくなりますが、細菌感染を起こしやすくなるため、造瘻部をいつも清潔に保つことが重要です。また、膀胱炎や尿路結石は繰り返すことがあるため、定期的に尿検査で通院する必要があります。尿路結石は種類によっては再発防止用の療法食があるので、それを食べることや積極的に飲水させることなども大切です。

まとめ

猫の尿閉は、尿毒症を起こし命にかかわるおそれがあるものです。日ごろから排尿時の様子を観察し、少しでも違和感がある場合は早めに受診することが大事です。また、尿閉の原因となる膀胱炎や尿石症は、食事や飲水量、トイレ環境、運動量などに気を付けることでリスクを減らせます。ぜひ、見直してみましょう。

尿閉を起こすと、思った以上に長期入院になることが多く、診療費も高額になりますが、再発防止のためにも早期からしっかりと治療をすることが重要です。

執筆者プロフィール

三宅亜希 先生

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

2020年9月度月間 高額お支払い事例
[掲載日]

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 心房中隔欠損症 約50万円
2 僧帽弁閉鎖不全症 約45万円
3 膀胱結石 約40万円
4 胆管肝炎 約40万円
5 膀胱結石、左尿管損傷 約40万円

※お支払い金額は1回の請求ベースで掲載しております。
※個別の契約に関してはお答えできません。個人が特定できない範囲で情報を掲載しています。

請求書類到着日から
着金するまでの日数
平均
3.45

※2020年9月1日~2020年9月30日に保険金支払手続きを行った事案
※保険金請求書類が整った日の翌日から起算してお客さまの口座に振り込まれる日までの実日数(土日祝日を含みます)

一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。

[追記日] 2021年 1月 2日

平均的なお支払い事例

保険金のお支払いは、上記のように高額なものに限りません。次に、平均的なお支払い事例としてペットの誤飲の診療をご紹介します。

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 誤飲 33,000円

上記金額は、1,000円未満を切り捨てています。

高額診療「猫の心房中隔欠損症」を獣医師が解説

2020年9月度の高額保険金お支払い事例で取り上げた「猫の心房中隔欠損症」の診療内容について、当社ペット保険付帯サービス『獣医師ダイヤル』を担当されています「電話どうぶつ病院Anicli24」院長、三宅亜希先生にご解説いただきました。

心房中隔欠損症とは、どんな病気なのか

心臓は血液を送り出す部屋である心室(しんしつ)と血液が戻ってくる部屋である心房(しんぼう)とに分かれています。また、心室も心房も、さらに左右2つに分かれるため、心臓は、左心室、右心室、左心房、右心房の4つの部屋に分かれます。

心房中隔欠損症とは、左心房と右心房の間に欠損部分(=穴)が生じている先天的な疾患で、欠損部分を通って、左心房から右心房に血液が流入します。心臓に「穴」が開いているというと、とても恐ろしいかもしれませんが、心房中隔欠損症の猫の多くは何の症状も現れないまま、寿命を迎えることがほとんどです。

猫に症状が現れるかどうかは心房の欠損部分の大きさによって変わり、症状が現れる場合は、少しの運動で疲れやすい、気を失うなどが見られます。また、病態が進むと、左心房から右心房に流れる血液が、右心房から左心房への流入に逆転します。この逆転が起こると、肺で新鮮な酸素を取り入れた血液を全身に送れなくなり、チアノーゼ(血液中の酸素不足)のような重篤な症状が起こります。

なお、猫の心房中隔欠損症は比較的まれな疾患で、好発品種(その病気にかかりやすい品種)は知られていません。

猫の心房中隔欠損症について詳しく

事例の猫の心房中隔欠損症の通院日数、入院日数、手術回数について

種別
傷病名 心房中隔欠損症
通院日数 5日
入院日数 18日
手術回数 1回

※上記の数値は、PS保険加入者さまから請求されたものであり、ペットメディカルサポート株式会社が補償する範囲を示すものではありません。また、平均や水準を示すものでもありません。

猫の心房中隔欠損症の診療内容

※下記の診察内容は、猫の心房中隔欠損症の一般的な診療内容についての記述になり、PS保険にご請求いただいた事案の診療内容とは異なります。
※保険責任開始前に獣医師の診断により先天性異常が発見されている場合は免責事項となり、保険金が支払われません。

検査

問診、視診

前述したように、多くは無症状ですが、症状がある場合は、症状が始まった時期やきっかけ、日常生活での様子、既往歴の有無、薬の投与歴などの問診を行います。また、呼吸の様子、粘膜や舌の色の確認、体の成長具合などを観察します。

聴診

聴診器で心臓の音や呼吸の音を確認します。心房中隔欠損症では多くの場合、心臓の雑音は聞こえません。しかし、心房の欠損部分によって心臓に流れる血液量が変化し、肺動脈という右心室から血液を送る血管の血流量が増えると雑音が聞こえることがあります。

画像検査

超音波検査により、心臓の検査を行います。心臓の断面像を観察すると、心房の欠損部分を確認できます。また、肺動脈(右心室から肺へ血液を送る血管)と大動脈(左心室から全身へ血液を送る血管)、それぞれの血流量を測定し、比較することで、重症度を予測できます。

治療法

心房中隔欠損症の猫の多くは無症状であり、この場合、特別な治療は必要ありません。しかし、心房の欠損部分が大きく、心臓に負担がかかり、症状が出ている場合は内科治療を行います。内科治療では、病態に応じて1種~数種の内服薬が処方されます。病態が進むと自宅で使用可能な酸素室の準備が必要になることもあります。

根本的な治療は外科治療ですが、病態が進むと外科手術は行えなくなります。外科治療が選択された場合は、手術により心房の欠損部分を閉鎖します。なお、心臓の外科治療を行える病院はとても少なく、また、それらの病院でも猫の心房中隔欠損症の報告はとても少ないのが現状です。

予後

心房の欠損部分が小さく症状もない場合の予後は良好ですが、治療が必要なほど大きな欠損がある場合は、内科治療を行っても病気の進行を完全に抑えることはできません。最終的にはチアノーゼ、呼吸困難、虚脱などを起こし、残念ながら長期間の安定した生活は望めないことがほとんどです。一方、外科治療を行い、手術が成功した場合の予後は良好だと考えられます。

まとめ

猫の心房中隔欠損症はあまり多くない疾患であり、無症状の場合が多く、亡くなった後に病理解剖を行った際に発見されることがほとんどです。また、先天性疾患のため予防が難しく、健康診断での発見は珍しいため早期発見も難しいでしょう。

加えて、猫の心房中隔欠損症は病態が進むと外科手術を行えないため、運よく早期に見つけることができ、症状が出ている場合は、すぐに治療を開始することが重要です。

執筆者プロフィール

三宅亜希 先生

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓蒙、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

2020年8月度月間 高額お支払い事例
[掲載日]

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 悪性リンパ腫、下痢ほか 約55万円
2 僧帽弁閉鎖不全症、アロペシアX 約45万円
3 椎間板ヘルニア、進行性脊髄軟化症 約45万円
4 両膝蓋骨脱臼、右膝靱帯損傷 約45万円
5 尿管結石、腎機能低下 約40万円

※お支払い金額は1回の請求ベースで掲載しております。
※個別の契約に関してはお答えできません。個人が特定できない範囲で情報を掲載しています。

請求書類到着日から
着金するまでの日数
平均
3.73

※2020年8月1日~2020年8月31日に保険金支払手続きを行った事案
※保険金請求書類が整った日の翌日から起算してお客さまの口座に振り込まれる日までの実日数(土日祝日を含みます)

一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。

[追記日] 2020年12月 2日

平均的なお支払い事例

保険金のお支払いは、上記のように高額なものに限りません。次に、平均的なお支払い事例としてペットの子宮蓄膿症の診療をご紹介します。

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 子宮蓄膿症 38,000円

上記金額は、1,000円未満を切り捨てています。

高額診療「犬の悪性リンパ腫」を獣医師が解説

2020年8月度の高額保険金お支払い事例で取り上げた「犬の悪性リンパ腫」の診療内容について、当社ペット保険付帯サービス『獣医師ダイヤル』を担当されています「電話どうぶつ病院Anicli24」院長、三宅亜希先生にご解説いただきました。

悪性リンパ腫とは、どんな病気なのか

血液中には、酸素を運ぶ赤血球、出血の際に血液を固める血小板、免疫を司る白血球が存在します。悪性リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ系細胞が、がん化してしまう病気です。ここではわかりやすいようにあえて悪性リンパ腫と記載していますが、良性のリンパ腫というものはなく、リンパ腫は残念ながらすべて悪性腫瘍(=がん)です。なぜ、リンパ系細胞が、がん化してリンパ腫が発生してしまうのかは、はっきりとはわかっていませんが、ある種の環境(除草剤をよく使用する、磁場が強いなど)が関与している可能性も報告されています。

リンパ系細胞は、体中に存在するため、いろいろな場所にリンパ腫が発生しますが、犬で発生するリンパ腫のほとんどは全身のリンパ節が腫脹するタイプの「多中心型」と言われるものです。

リンパ腫はアメリカではゴールデン・レトリーバーが好発犬種(その病気にかかりやすい犬種)として挙げられますが、成犬であれば性別を問わずどの犬種にも発生し、特に6~8歳くらいで発生することが多いとされています。

犬の悪性リンパ腫について詳しく

事例の犬の悪性リンパ腫の通院日数、入院日数、手術回数について

種類
傷病名 悪性リンパ腫(継続治療)
通院日数 7日
入院日数 37日
手術回数 0回

※上記の数値は、PS保険加入者さまから請求されたものであり、ペットメディカルサポート株式会社が補償する範囲を示すものではありません。また、平均や水準を示すものでもありません。

犬の悪性リンパ腫の診療内容

※下記の診察内容は、犬の悪性リンパ腫の一般的な診療内容についての記述になり、PS保険にご請求いただいた事案の診療内容とは異なります。

検査

問診、視診

飼い主さんに症状が始まった時期やきっかけ、日常生活での様子、既往歴の有無、薬の投与歴などの問診を行います。犬のリンパ腫のほとんどを占める「多中心型」では、多くの場合、リンパ節の腫れという症状以外は普段と変わりません。胸腔内にリンパ腫が発生する「縦郭型」では、咳や呼吸困難などの呼吸器症状が、胃や腸にリンパ腫が発生する「消化器型」では、食欲不振や下痢嘔吐などの消化器症状が起こります。そのほか、皮膚や鼻腔内にリンパ種が発生するケースもあり、それぞれ、皮膚病変(赤み、潰瘍、かさぶたなど)が出現したり、くしゃみや鼻水が増えたり鼻血が出たりします。

触診

リンパ節は体中に存在しますが、そのいくつかは皮膚の下のすぐに触れる位置(顎の下、脇の下、後肢の付け根、膝の裏など)にあります。それらのリンパ節を触診し、腫れの有無を確認して大きさを測ります。

血液検査

採血をして、貧血の有無、各臓器への影響の有無などを確認します。また、リンパ腫は症状が進むと血液中にもがん化したリンパ系細胞が出現することがあるため、その確認も行います。

画像検査

レントゲン検査や超音波検査により、リンパ腫の拡がり具合を確認します。また、「多中心型」以外のリンパ腫(縦郭型、消化器型、その他)を確認できます。

細胞診、病理検査

腫大が見られるリンパ節に細い針を刺し、中の細胞を少し取ってきて顕微鏡で確認します。それにより、リンパ腫なのか、それ以外の原因(炎症、過形成など)で腫れているのかを鑑別します。リンパ腫と判断できた場合は、さらに悪性度の高さを確認します。

細い針を刺しただけでは確認が難しい場合は、麻酔をかけて、リンパ節の一部を切り取ったり、リンパ節ごと切除したりして細胞を調べる病理検査を行います。

遺伝子検査(PCR検査)

リンパ節などから採取した細胞を遺伝子検査することにより、リンパ腫のさらに詳しい情報を得ます。リンパ球には、T細胞という細胞由来のものと、B細胞という細胞由来のものがあり、どちらの型かによって、予後が異なります。また、治療に使用する薬が変わることもあります。

骨髄検査

リンパ腫の骨髄への転移が疑われる際には、麻酔をかけて、骨髄に針を刺して髄液を採取し検査を行います。

治療法

治療方法は、リンパ腫の進み具合、悪性度の高さ、T細胞型かB細胞型か、などによって変わってきますが、一般的に化学療法(抗がん剤)が選択されます。化学療法は数種類の薬を組み合わせて行い、通院治療となりますが、状況に応じては、入院治療が必要となることもあります。治療は、週に1度の抗がん剤の注射と毎日の内服が主です。

抗がん剤の注射はワクチンとは異なり静脈内に注射をすることや、注射の前に血液検査で血球数を確認することなどから、通院治療の場合でも多くが数時間~半日ほど病院に預けることになります。この週に1度の注射と毎日の内服をまずは4週間行い、寛解(がん化したリンパ球が消失し見つからなくなること)したと判断できた場合は、注射の頻度が少なくなりますが、半年ほどは化学療法による治療が続きます。

悪性度が低く、リンパ節腫大以外に症状が何もない場合には、治療をせずに経過を観察することもあります。

予後

リンパ腫は、多くの場合、生命にかかわる重篤な病気であり、化学療法を行わない場合は1か月以内に命を落とすことが多いのです。化学療法を行った場合、病状によりますが、平均的な生存期間は1年ほどです。また、悪性度が低く、治療をせずに長期生存するケースもあります。

まとめ

リンパ腫は、犬の悪性腫瘍の中でも多く見られる病気です。犬のリンパ腫のほとんどは全身のリンパ節が腫れるタイプのものであり、外から触って確認できる腫瘍です。そのため、日ごろのブラッシングやスキンシップの際に犬の首、脇、膝裏なども意識して触れるようにすることで、早期発見が可能になります。

がんですので、治療後も楽観視はできませんが、適切な治療を受けることで一緒に暮らす時間を増やすことができます。

執筆者プロフィール

三宅亜希 先生

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓蒙、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

2020年7月度月間 高額お支払い事例
[掲載日]

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 異物誤飲、眼科疾患 約60万円
2 副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症ほか 約45万円
3 右十字靭帯損傷 約40万円
4 椎間板ヘルニア、脳腫瘍 約40万円
5 炎症性疾患 約40万円

※お支払い金額は1回の請求ベースで掲載しております。
※個別の契約に関してはお答えできません。個人が特定できない範囲で情報を掲載しています。

請求書類到着日から
着金するまでの日数
平均
6.52

※2020年7月1日~2020年7月31日に保険金支払手続きを行った事案
※保険金請求書類が整った日の翌日から起算してお客さまの口座に振り込まれる日までの実日数(土日祝日を含みます)

一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。

[追記日] 2020年10月27日

平均的なお支払い事例

保険金のお支払いは、上記のように高額なものに限りません。次に、平均的なお支払い事例としてペットの歯科診療をご紹介します。

事例 種類 病気・怪我の種類 お支払い金額
1 歯科疾患 33,000円

上記金額は、1,000円未満を切り捨てています。

高額診療「犬の前十字靭帯損傷」を獣医師が解説

2020年7月度の高額保険金お支払い事例で取り上げた「犬の前十字靭帯損傷」の診療内容について、当社ペット保険付帯サービス『獣医師ダイヤル』を担当されております「電話どうぶつ病院Anicli24」院長、三宅亜希先生にご解説いただきました。

前十字靭帯損傷とは、どんなケガなのか

前十字靭帯は膝にある靭帯で、大腿骨と脛骨をつないでいます。前十字靭帯損傷は、人の場合、事故による外傷で起こることが多いようです。しかし、犬の場合、純粋な外傷性前十字靭帯損傷は若い年齢で起こることがあるものの、多くは加齢とともに変性する前十字靭帯によって発生すると考えられています。この変性した前十字靭帯が、外傷により損傷したり、慢性的に少しずつ損傷したりするのです。前十字靭帯の損傷が、部分的な断裂なのか完全な断裂なのかにより、症状の程度は異なりますが、愛犬が痛みを訴え、後ろ肢の跛行(正常ではない歩行)が起こります。

前十字靭帯損傷は大型犬で多く見られ、ニューファンドランド、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、セント・バーナードなどが好発犬種(その病気にかかりやすい犬種)として挙げられますが、中型犬、小型犬でも起こります。特に、膝蓋骨脱臼(膝のお皿が正しい位置からずれてしまう疾患)を併発して前十字靭帯損傷が起こることが多く、この場合では、先天的に膝蓋骨脱臼を起こしやすいトイ種(チワワ、ポメラニアン、マルチーズ、ヨークシャー・テリア、トイプードルなど)でリスクが高まります。

また、肥満や膝にできる腫瘍などが前十字靭帯損傷の要因になることもあります。

犬の前十字靭帯損傷について詳しく

事例の犬の前十字靭帯損傷の通院日数、入院日数、手術回数について

犬種
傷病名と発症箇所 前十字靭帯損傷
通院日数 4日
入院日数 14日
手術回数 1回

※上記の数値は、PS保険加入者さまからご請求されたものであり、ペットメディカルサポート株式会社が補償する範囲を示すものではありません。また、平均や水準を示すものでもありません。

犬の前十字靭帯損傷の診療内容

※下記の診察内容は、犬の前十字靭帯損傷の一般的な診療内容についての記述になり、PS保険にご請求いただいた事案の診療内容とは異なります。

検査

問診、視診

飼い主さんに症状が始まった時期やきっかけ、日常生活での様子、既往歴の有無、薬の投与歴などの問診を行い、犬の体格、四肢の位置、体重のかけ方、座り方、筋肉のつき方などを観察します。

歩行検査

ゆっくり歩いたり、速足で歩いたりなど、犬の歩行の状態を観察します。

触診、整形外科学的検査

犬の関節の腫れや熱感の有無、肢の変形の有無、筋肉のつき方などを診ます。これによって、関節が動く範囲、関節の不安定性、脱臼の有無、痛みの有無などを確認します。

画像検査

以上の検査で犬に前十字靭帯損傷が疑われたら、レントゲン検査を行います。前十字靭帯はレントゲン検査で写りませんが、関節の変形の有無を確認したり、骨の位置から前十字靭帯断裂があるかどうかを推測したりします。また、ほかの疾患(骨折、腫瘍など)を除外する目的もあります。
前十字靭帯損傷を診断するために、CT検査やMRI検査を追加で行うこともありますが、これらの際は全身麻酔が必要です。

関節液検査

関節の中にある関節液という液体を採取し、その性質を調べます。この検査により、ほかの疾患(免疫介在性疾患、腫瘍など)を除外します。

関節鏡検査

関節鏡という特殊な機械を使用して、犬の関節内を観察し、診断することもあります。膝に小さな穴を開け、そこからカメラの付いた細い管を挿入し撮影します(胃カメラを飲んで胃の中を撮影するのと似ています)。これにより、前十字靭帯の損傷程度を確認することができます。この検査には全身麻酔が必要です。

治療法

犬の前十字靭帯損傷では、外科治療が第一選択ですが、場合によっては内科治療で経過を見ることもあります。

内科治療

内科治療では、炎症を抑える薬を使用し、完全なケージレストを行います。特に小型犬では、内科治療により改善が期待できることもありますが、症状に変化がなかった場合は、外科治療に移行します。

※ケージに犬を入れ、動きを制限して安静を保つこと。

外科治療

外科治療では、前十字靭帯の損傷により不安定になった膝関節を安定させる手術を行います。この術式は数種類あり、前十字靭帯の損傷の状態、変形性関節症の有無、犬の状態などから総合的に判断して決定されます。ただし、断裂した前十字靭帯を再建する手術は獣医療において行われていません。

なお、外科治療は全身麻酔下で行うため、全身麻酔を安全に行えるのかを確認する必要があり、術前検査として血液検査や胸のレントゲン検査を行います。

予後

術式によって予後も異なりますが、通常は手術から2週間後に抜糸を行い、術後1か月程度は膝への負担がかからないようなるべく安静に過ごし、術後2か月くらいから徐々に運動をし始めます。抜糸までの間にどれだけ安静に過ごせるかがとても重要なため、自宅で愛犬を安静にすることが難しい場合では、術後の入院期間が長くなることがあります。また、術後に患部の腫れや痛みがある場合は内服が必要になるため、定期的な診察を行い、経過を観察します。

まとめ

前十字靭帯損傷は、犬の後肢に起こる跛行の原因として珍しくない疾患であり、かかりやすい犬種は存在するものの、どの犬種でも起こるおそれがあります。また、受傷から治療までのスピードが重要ですので、愛犬の歩き方に少しでも違和感を覚えたら、病院を受診し、必要に応じて詳しい検査を受けるようにしましょう。
ベストな治療は外科手術であり、診療費が高額ではありますが、適切なタイミングで適切な治療を受けることで、犬は痛みから早く解放され、通常どおりお散歩やお出かけなど日常生活を楽しむことができるようになります。

執筆者プロフィール

三宅亜希 先生

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓蒙、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。