犬の前十字靭帯断裂の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬の前十字靭帯断裂ってどんな病気?

膝関節が不安定になり後ろ足を引きずる

前十字靱帯は膝関節の中にあり、太ももの骨である大腿骨の後ろ側と脛(すね)の骨である脛骨の前側をつなぐことにより、膝関節を安定化しています。この靭帯の主な機能は次の3つです。

  • 大腿骨に対して脛骨が前に滑り出ないようにする
  • 大腿骨に対して脛骨がねじれた位置に来ないようにする
  • 膝が過剰に伸びないようにする

犬の前十字靱帯断裂は、犬猫の関節疾患として遭遇する機会の最も多い病気です。前十字靱帯が切れてしまうと、膝関節が不安定になり後ろ足を引きずるようになります。そして、関節軟骨が削れてしまい、変形性関節症と呼ばれる関節炎を引き起こすのです。また、変形性関節症を発症すると炎症が慢性化します。

さらに、膝関節の中にあるクッションの役割をしている半月板が同時に切れてしまうこともあります。実際に、前十字靱帯断裂が起きた犬の膝の89.6%で、半月板損傷が認められるとの報告があります。なお、半月板には神経や血管が走っているため、より痛みが重度になってしまうのです。

犬の前十字靭帯断裂の原因と症状

どうして症状が出るの?原因は?

犬の前十字靱帯断裂は、1926年に初めて報告されて以来、さまざまな検証がされていますが、その原因については今もなお不明です。そのひとつとして、骨の形の異常から前十字靱帯に負担がかかり、切れやすくなるためと考えられていますが、完全な証明はされていません。

人間の前十字靱帯断裂は、大きな外力に伴って生じる急性断裂が多く、スポーツ選手にしばしば見られます。一方、犬では靱帯の強度が加齢と共に低下し、日常的な少しの外力で断裂に至ってしまうことがほとんどです。

どんな犬が前十字靭帯断裂にかかりやすいの?

中高齢の犬

犬の前十字靱帯断裂は、中高齢で生じる病気であることが知られています。実際に、ある研究では、4歳齢よりも高齢の犬に多く、平均7歳齢前後で発生するとの報告があります。

大型犬

一般的に、前十字靱帯断裂は大型犬で起こりやすいとされていますが、小型犬でも発生が認められます。欧米の疫学調査によると、前十字靭帯断裂を起こしやすい犬種として、ラブラドール・レトリーバーゴールデン・レトリーバーアメリカン・スタッフォード・シャーテリアセント・バーナード秋田犬が報告されていました。

肥満の犬

体重が重い犬では、前十字靱帯断裂を生じやすいことが知られており、肥満はリスク要因になります。

避妊雌・去勢雄

避妊・去勢手術済みの犬では、手術をしない場合と比較して前十字靱帯断裂の発生が多いと報告されています。

前十字靱帯断裂は両側性であり、膝蓋骨内方脱臼の放置が原因になることも

前十字靱帯断裂は、両側の膝に起こることが多い(両側性)と言われ、片方の膝でこの病気を起こすと、反対側に生じる可能性が非常に高いとされています。

また、膝蓋骨内方脱臼と前十字靱帯断裂は、しばしば同時に起こることが知られています。そのため、若齢時から膝蓋骨内方脱臼があり、特に症状がないために放置されると、中高齢になってから前十字靱帯断裂を発症する可能性が高くなってしまうのです。

膝蓋骨脱臼のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)」を併せてご覧ください。

前十字靭帯断裂にかかりやすい犬の特徴

  • 中高齢
  • 大型犬
  • 肥満
  • 避妊、去勢手術済み
  • 膝蓋骨内方脱臼を放置されている

犬の保険について

犬の前十字靭帯断裂の症状とチェック項目

突然後ろ足を上げる、引きずるようになる

犬の前十字靭帯断裂は、中高齢になるにつれ徐々に靱帯の強度が低下し、少しの外力で完全に切れてしまうことが多くなります。例えば、「ソファから飛び降りた直後に悲鳴をあげ、後ろ足を完全に上げるようになった」「全速力で走り回った直後から後ろ足を引きずるようになった」などといった行動から発症に気付くことが非常に多いのです。

犬の前十字靭帯断裂はどうやって診断されるの?

犬の前十字靭帯断裂は、触診とレントゲン検査により診断します。触診では、「脛骨前方引き出し試験」という特殊な検査を行います。これは、犬の大腿骨と脛骨を片方の手で持って前後に動かし、前十字靱帯断裂の際に起こる、大腿骨が脛骨に対して前側にずれる様子を検出します。また、レントゲン検査では、前十字靱帯断裂に伴い、大腿骨に対して脛骨が前方に移動する様子や、関節炎によって関節内に水がたまっている様子を検出します。

犬の前十字靭帯断裂の治療にはどんな方法があるの?

犬の前十字靭帯断裂の治療と予防

前十字靱帯断裂の治療法は大きく分けるとふたつあります。それらは、切らずに治す保存療法と手術です。

保存療法

保存療法では、消炎鎮痛剤を用いて痛みをなくす、安静にすること、体重が重たいと変形性関節症の進行速度が速くなるため、体重が重い場合には減量を行います。

靱帯が切れてしまった関節は安静にすると関節周辺が硬くなり、2、3ヶ月程度で関節自体が安定化することがあります。ただし、その最中に大きな外力が加わると安定が保たれないため、安静を徹底するのです。この方法によって外見上は通常どおり歩けるようになることがあります。しかし、体重15kg以上の犬ではこの治療法はうまくいかないという報告があります。また、一度切れてしまった靱帯は元どおりになりません。そのため多くの場合、変形性関節症は少しずつ進んでしまうのです。

手術による治療

手術による治療は大きくふたつあります。ひとつは、糸を用いて前十字靱帯の代わりに大腿骨と脛骨を結びつける「関節外制動術」という方法です。もうひとつは、骨の形を矯正することで安定化を図る「矯正骨切り術」と呼ばれる方法があります。これは、犬の骨の形状から、歩行の際、体重がかかるたびに大腿骨と脛骨がずれるような動きが生じ、関節軟骨が損傷してしまうので、それを矯正する手術です。

どちらの方法も比較的成功率が高いのですが、変形性関節症の進行度合いは矯正骨切り術のほうが低いという報告があります。

犬の前十字靭帯断裂は治せるの?

人間の前十字靱帯断裂の場合、人工靱帯を入れる方法がありますが、犬の場合、現在の技術で治す方法はありません。しかし、犬の関節の安定化を図ることで、元どおり後ろ足を使えるようになります。また、変形性関節症の進行をなるべく緩やかにすることも可能です。

どうやって予防したらいいの? 症状を緩和するにはどうしたらいいの?

肥満と膝蓋骨脱臼の放置に注意

犬の前十字靱帯断裂を完全に予防する方法はありません。しかし、肥満は前十字靱帯断裂のリスク要因なので、太りすぎに気を付けましょう。

また、膝蓋骨脱臼と前十字靱帯断裂は、しばしば同時に起こることが知られています。そのため、膝蓋骨脱臼を放置せず治療することが、前十字靱帯断裂の発生リスクの抑制につながると言えるでしょう。

保存療法では、消炎鎮痛剤を用いて痛みをなくす、安静にする、また、体重が重いと変形性関節症の進行速度が速くなるため減量を行います

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

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