犬の股関節脱臼の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年03月14日

犬の股関節脱臼の症状

犬の股関節脱臼の症状と原因

股関節とは、骨盤と大腿骨(だいたいこつ)がつながっている関節を指します。骨盤にある寛骨臼(かんこつきゅう)というくぼんだ部分に、大腿骨の骨盤側にある大腿骨頭がはまるようにつながっています。

股関節に何らかの衝撃が加わり、寛骨臼と大腿骨頭が外れると、外傷性の股関節脱臼が起こります。痛みを伴うため、犬は足を引きずりながら歩くようになります。

また、犬によっては遺伝による股関節形成不全で股関節脱臼が起こる場合があります。寛骨臼のくぼみが先天的に浅いため、大腿骨頭が外れやすくなったり、外れたままになったりして、犬に歩行困難を引き起こします。

犬が股関節脱臼を起こすと、次のような症状が現れます。

  • 跛行(はこう:歩くときに足を引きずる状態)
  • 挙上(足を地面に着けず浮かせている状態)
  • 震えてじっとしている
  • 触ろうとすると嫌がる
  • 起き上がることができない

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

犬に次のような症状が見られる場合、痛みが激しい可能性が考えられます。

  • 元気や食欲がない
  • 足をかばって動くことができない
  • 悲鳴を上げる
  • 震えが激しい

痛みが軽い場合、犬に足をかばう様子が見られても、食欲や元気がなくなるのはまれです。しかし、痛みが強くなると、激しい震えが出たり、起き上がれずに体調が悪くなったりします。

愛犬に股関節脱臼を疑う症状が出ている場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。痛みが激しいと、普段はかまない犬でもかみつく可能性があります。厚めのバスタオルや毛布などで犬をくるみ、かまれないように注意してください。

犬の股関節脱臼の原因

股関節は寛骨臼と大腿骨頭で構成され、大腿骨頭靭帯(だいたいこつとうじんたい)や関節包などで強固に連結されているため、簡単には外れない構造になっています。しかし、次のような出来事で犬の股関節に強い衝撃が加わると、股関節脱臼が起こる場合があります。

  • 交通事故に遭う
  • いすやソファーなど高所から飛び降りる
  • フローリングや廊下など滑りやすい場所で横転する

犬が低い位置からの飛び降り、散歩中に走ったなど、軽い負荷が股関節にかかっただけで外れてしまう場合は、亜脱臼(不完全な脱臼)やゆるみなどの異常がもともとあった可能性が考えられます。

股関節脱臼を引き起こす可能性のある傷病

  • 股関節形成不全
  • レッグ・ペルテス病
  • 股関節炎
  • 大腿骨や骨盤の骨折

先天的な骨の変形だけでなく、後天的な傷病が原因となって、犬の股関節脱臼を引き起こす可能性があります。

股関節脱臼にかかりやすい犬の特徴は?

外傷性の股関節脱臼は、どの犬種でも起こる可能性があります。股関節形成不全が原因で起こる先天性の股関節脱臼は、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパードなど大型犬や超大型犬に多く見られます。

犬の保険について

犬の股関節脱臼の治療法

犬の股関節脱臼の治療法と予防法」

検査内容

歩行状態の観察

初めに、犬がどの足をどのように動かしているか、歩行状態を見定めます。

触診

次に、異常を起こしている犬の足の状態を触って確認します。犬が亜脱臼を起こしていると、カクカクと引っかかるような違和感があり、痛みを伴うケースが多く見られます。完全に脱臼している場合は、犬はだらんと脱力した状態で足を引きずります。

X線検査

犬を横向きや仰向きで撮影し、どの部位がどのような状態になっているか、脱臼の状態を詳しく把握します。

CT検査

X腺検査ではわからない部位は、必要に応じてCT検査で確認します。

治療法

犬の股関節脱臼の治療は、手術せずに手で脱臼を元に戻す「非観血的整復(ひかんけつてきせいふく)」と、手術によって脱臼を整復する「観血的整復」があります。

脱臼してからの時間、過去に同じ場所を脱臼していないか(再脱臼)、骨折の有無、変形性関節炎の有無などを確認し、どちらの方法で治療するかを総合的に判断します。

非観血的整復

痛みを伴うため、麻酔下で施術を行います。犬の脱臼している方向や程度により方法は若干異なりますが、脱臼した関節をはめ、10~14日間包帯を巻いて固定するのが一般的です。ただし、一度整復できても再脱臼のおそれがあり、何度も繰り返す場合は観血的整復を行う可能性があります。

観血的整復

非観血的整復は、犬の脱臼を戻すのが難しい場合や脱臼を繰り返す場合、変形性関節炎や骨折がある場合などに選択されます。代表的な手術方法には、ピンニング法、トグルピン法、大腿骨頭切除術、股関節全置換術などがあり、犬の脱臼の程度に合った方法で手術を行います。

股関節形成不全症やレッグ・ペルテス病、骨頭骨折など犬の股関節に異常がある場合は、人工関節に取り換える手術をします。

無治療の場合

犬の股関節脱臼は、自然に治る可能性はほとんど期待できません。脱臼の程度が非常に軽い犬の場合は、ごくまれに自然と正常な位置にはまり、違和感なく歩けるようになりますが、やがて脱臼を繰り返すようになります。

股関節がはまっていない状態で放置すると、ほとんどの場合、しばらくして関節炎が起こります。数年後には関節の骨が増生(特定の細胞が増殖して肥大すること)して、犬は激しい痛みで歩けなくなります。

愛犬に股関節脱臼が疑われる症状が見られた場合は、様子を見ずに、動物病院で適切な治療を受けてください。

犬の股関節脱臼の予防法

日常生活の中で愛犬がケガをするリスクを下げると、股関節脱臼の予防につながります。次のような対策が効果的です。

  • 落下するおそれのある高い場所に登らせない
  • フローリングや廊下が滑らないように工夫する
  • 散歩中はリードを着け、首輪やハーネスが抜けないようにしっかり装着する
  • 抱っこの際は、落とさないようにしっかり抱く
  • 子どもは座った状態で抱っこし、大人がそばで見守る

また、愛犬の体重管理を行い、関節への負担を軽減するのも予防策のひとつです。食事量に気を付けたり、適度な運動をさせたりして、肥満を避け、愛犬の体調を整えてください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。