犬が震える原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

犬が小刻みに震える原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師の三宅亜希先生に監修いただきました。

寒さで犬が震えているならば、暖めてあげればいいのでしょう。しかし、その震えの原因が病気であれば、何らかの対処が必要です。犬が震えている、いつもと様子が違うなど気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬が小刻みに震える原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

犬の震えの原因

―犬が震える原因として、どんなものが考えられますか?

寒さ

犬は寒さを感じると震えます。これは、震えることによって熱を発生させる「シバリング」という正常な行動であり、私たちが寒くて小刻みにブルブル震えるのとまったく同じです。寒さによる震えは、体が温まると止まるため、寒さが原因かどうかの判断は簡単です。

恐怖心や警戒心

犬は、初めての場所に行ったとき、初対面の人や嫌いな人に会ったときなどに震える場合があります。また、動物病院に入っただけで震える犬もいれば、診察台に乗ると震え始める犬もいます。

あるいは、近所の工事や地震、雷や花火で震える犬もいます。こういった場合は音だけでなく振動で怖がっており、高い所に逃げようとすることがあります。

ストレス

恐怖心や警戒心との区別が難しいのですが、犬はストレスを感じて震えることがあります。中でも環境の変化は、犬にとって大きなストレスと言えるでしょう。

加齢による筋力低下

犬も年をとると徐々に筋肉が落ちていきます。その影響で踏ん張りがきかなくなり、小刻みに震えるようになるのです。そのため、排便時のような、いきむときにその震えが目立ちます。

経験

非常にまれではありますが、以前震えたときに犬にとってうれしい経験(飼い主さんが抱っこしてくれた、心配しておやつをくれたなど)があると、同じ経験をしたくて震えることがあります。その場合は犬が意識的にやっているため、変な震え方をしたり、人が見ていないと思うと震えが止まったりします。

これら以外に何らかの病気によって、犬の震えが見られる場合があります。

犬の震えの原因となる病気とは?

犬の震えの原因となる病気とは?

―犬が小刻みに震える原因としてどんな病気が考えられますか?

脳障害による震え

けいれんを起こすような病気では、その軽い症状として、また、けいれんの前兆として震えることがあります。具体的には、てんかん脳炎、脳腫瘍、水頭症のような脳自体に異常がある場合であり、神経症状としての震えが見られるのです。

※犬で見られるてんかんの多くは、脳そのものに物理的な障害はないのに脳波が乱れる、原因不明の特発性てんかんですが、脳の問題ということでこのカテゴリーに入れています。

犬の脳や神経系の病気の原因、症状、治療法などについては、獣医師監修の「犬の脳・神経系の病気」を併せてご覧ください。

中毒症状や低血糖による震え

犬は、中毒症状や低血糖によって小刻みに震える場合があります。低血糖になる病気はいくつかありますが、子犬では食欲不振や嘔吐、下痢が続いただけでも低血糖症を起こすおそれがあります。

低血糖症の原因、予防と対策については、「犬の低血糖症」の記事を併せてご覧ください。

代謝や排泄をする臓器の機能障害による震え

肝臓や腎臓といった体の中の老廃物を代謝、排泄する臓器がきちんと機能できなくなると、毒素が蓄積してけいれんなどの神経症状が起き、その前兆として震えることがあります。その代表的な病気として、肝硬変や慢性腎臓病が知られています。

慢性腎臓病の詳しい症状、原因、治療法については、獣医師監修の記事「犬の疾患 慢性腎不全」を併せてご覧ください。

痛みによる震え

犬が痛みを感じると、動かなくなり震えることがあります。その例として、椎間板ヘルニアを紹介しましょう。この病気の一番軽度な状態(グレード1)では足(肢)の麻痺は起こらずに、背中や腰の痛みだけが症状として出ます。そのため、犬が動いたときにキャンと鳴いたり、動かずにブルブル震えたりするという主訴(しゅそ:患者、飼い主の訴え)で受診されることが多いのです。

椎間板ヘルニアの原因、症状、治療や予防法については、「犬の椎間板ヘルニア」を併せてお読みください。

犬が震えて、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない犬の震えの症状

―心配のいらない震えについて教えてください。

最初に挙げた、寒さ、恐怖心や警戒心、ストレス、加齢による筋力低下、経験による震えは、病的なものではありません。震えの原因が明らかにこれらのどれかであれば、心配はいらないでしょう。

ただし、恐怖心や警戒心、ストレスは、原因が取り除かれないと元気や食欲がなくなったり、体調を崩したりすることがあるので注意が必要です。

受診を強く勧める犬の震え以外の症状

―受診すべき震えの見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

震えがけいれんに進行してしまう場合や、震えているときに呼びかけても聞こえていない様子だったり、先述した病気以外の震えに思い当たることがなかったりする場合は、病気が原因になっていると強く疑われます。また、痛みが強いと震えだけでなく犬自身が体を動かさなくなります。

ほかには、元気や食欲がなくなる、下痢や嘔吐が見られるなど震えに加え、犬に何らかの体調不良を示す症状があるようだと早めに受診したほうがいいでしょう。

犬が震えるときの対処法

犬が震えていたらどう対処したらいい?

―犬が震えを起こしたら、どう対処すればいいのでしょうか?

脳障害による震えの対処

てんかん、脳炎、脳腫瘍、水頭症のような脳自体に異常がある場合は、震えに続いて、けいれんが起こる可能性があります。

これらの病気が疑われる場合、犬に震えが見られたら部屋の真ん中に犬を寝かせ、周囲をクッションのようなやわらかいもので囲ってあげましょう。これは、けいれんによって犬にかまれることや、犬自身が体をぶつけ、ケガをしてしまうのを防ぐためです。けいれんが落ち着いたら、動物病院を受診しましょう。

中毒症状や低血糖による震えの対処

中毒症状は家庭で対処できないため、一刻も早く受診しましょう。

中でも子犬、特に小型犬の子犬では、空腹時間が長く、下痢や嘔吐があると、あっという間に低血糖を起こす場合があります。低血糖が疑われる場合は、できるだけ早く犬に糖分を与えましょう。

なお、砂糖水を飲ませれば犬の血糖値は上がりますが、震えが出ている場合はうまく飲み込めず、誤嚥(食道ではなく、気管に入ってしまうこと)をしてしまうおそれがあるので注意してください。処置が難しければすぐに受診しましょう。また、砂糖水で一過性に血糖値が上がっても、砂糖水によって下痢をしたり、砂糖水が代謝されたらすぐに低血糖状態に陥ったりするおそれがあるため、受診は必ずしてください。

痛みによる震えの対処

犬が痛みによって震えていると、飼い主としては、どこが痛いのかを調べたくなるかもしれません。しかし、むやみに触ると、犬が痛みのせいで防御反応を起こし、ご家族であってもかみ付いてしまうおそれがあります。そのため、あまり触れずにハードタイプのキャリーに入れ、受診をするようにしましょう。

寒さによる震えの対処

―犬が寒さで震えている場合は、防寒着を着せたほうがいいのでしょうか。その際の注意点はありますか?

散歩の際などは、犬に防寒着を着せてあげるのも選択肢のひとつですが、室内の場合はエアコンなどで室温を上げたほうが効果的です。

また、普段から服を着ることに慣れていれば問題ありませんが、慣れていないと違和感によってストレスになる場合があります。

犬の震えの予防

犬の震えの対策。筋力低下、脳障害、中毒や低血糖、痛みをどう予防するか

―犬の震えを予防するには、どうしたらいいですか?

恐怖心や警戒心、ストレスによる震えの予防

恐怖心や警戒心、ストレスによる震えに対しては、その原因を取り除けば症状がなくなります。何に対して震えるのかは犬によって個体差があるため、普段から嫌がるものを見つけておき、それを避ける、または慣れさせる練習が予防と言えるでしょう。

筋力低下による震えの予防

加齢による筋力低下で震えるのは、ある程度なら仕方がありません。老犬(高齢犬)が運動によって再びしっかりした筋肉を付けるのは難しいため、ケケガをしないように無理のない程度の運動にとどめましょう。また、場合によって排便時に身体を支えるなどの介助も必要です。

脳障害の予防

脳に異常がある病気は予防が難しいものが多いため、原因が特定できたら必要な治療をきちんと行うことが症状の緩和につながります。

中毒と低血糖の予防

中毒は中毒物質の摂取をしないようにすることが予防であり、最も大切です。

食事が足りないことによる低血糖については、犬がきちんと食べているかどうかを確認しておき、場合によっては少量でも十分なカロリーが摂取可能な高カロリーのフードを用意しておくことも必要です。

痛みの予防

急激に強い痛みが出る病気のひとつとして椎間板ヘルニアがあります。椎間板ヘルニアの完全な予防法はありませんが、犬を肥満にさせない、首や背中、腰に負担がかかる運動を避けるようにすれば後天的なリスクは減らせます。

まとめ

犬が震えていたら、飼い主さんはとても心配になるかと思います。まずは気温が適切か、何か怖いことはないかなどを確認し、思い当たる場合は対処します。犬が震えていても呼びかけたり、遊びに誘ったりした際にピタッと止まり再度起こらないような場合は心配ないでしょう。

震えには実に多くの原因がありますので、心配なときはひとりで悩まず、かかりつけの先生に相談してみるといいでしょう。その際には震えている様子を動画で撮影しておくことをおすすめします。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

犬が震えるに関連する記事

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。