犬の落ち着きがない原因や病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

犬が落ち着かない、ウロウロしているのは、どんな原因があるのでしょうか。環境の変化によるストレスや、病気を原因とする場合もあります。それらについて、また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

愛犬がそわそわして落ち着かないなど、いつもと異なる行動や気になる症状があれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬の落ち着きがない原因や病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬の落ち着きがない、ウロウロする原因とは?

―犬がそわそわしたり、落ち着きがなく歩き回ったりする原因について教えてください。

犬の落ち着きがなくなる原因として以下に挙げるようなものが考えられます。

不安やストレスを感じている

犬は、何らかの要因で精神的に強い不安を感じると、人と同じようにリラックスできず、眠ることができなくなったり、落ち着きがなくなったりします。例えば、ペットホテルのような普段いる自宅とは異なる場所に預けられてひとりになったり、いつもいる自宅であっても来客があり、その人に抱っこされたり構われたりすると、たとえ犬が喜んでいるように見えても少なからずストレスを受けているのです。

興奮している

犬が興奮するときというのは、怒ったり警戒したりしているときだけでなく、うれしいときも気持ちが高ぶり、落ち着かなくなります。例えば、飼い主が帰宅したときや、ご飯がもらえるときなどは待ちきれなくなり、飼い主の指示を無視することさえあります。

痛みを感じている

犬はケガをすると、その痛みによって傷口を舐めるなどして落ち着かなくなります。痛みの程度によっては、ゆっくり眠ることさえできなくなってしまいます。

これらのほか、何らかの病気が原因で、犬が落ち着かなくなることがあります。

犬の落ち着きがなくなる原因として考えられる病気とは?

犬の落ち着きがなくなる原因として考えられる病気とは?

―犬が落ち着かなくなってしまう原因としてどんな病気が考えられますか?

病気が原因で落ち着きがなくなる場合というのは、さまざまな病気が当てはまります。なぜなら体調が悪いときというのは、リラックスして寝付けなくなりますし、じっとしていられない場合のほうが多いからです。特に「落ち着きがなくなる」という症状が目立つ病気としては、以下のものが挙げられます。

認知症

認知症は、比較的高齢の犬に見られる病気です。症状としては、一度に眠る時間が短くなり、また昼夜が逆転したような生活行動の変化が見られるようになります。また、症状が進行すると、夜鳴きをしたり、同じところをいつまでもグルグルと回ったりするようになります。

犬の認知症について詳しく

副甲状腺機能低下症

犬が副甲状腺機能低下症という病気になると、症状として落ち着きがなく、物事に過敏になることがあります。

副甲状腺とは上皮小体とも呼ばれ、甲状腺に付着するように存在する非常に小さな組織です。副甲状腺からはパラソルモンというホルモンが分泌されます。パラソルモンは、生きるため体の働きを維持するのに必要なカルシウムやリンの濃度を調整するする役割があります。

この副甲状腺から何らかのきっかけでパラソルモンの分泌が少なくなると、血液中のカルシウム濃度が下がって、低カルシウム血症という状態となります。そして、震えや運動失調、神経過敏になったり、攻撃性が増したりといった症状が現れます。ひどくなると痙攣(けいれん)を引き起こし、亡くなることもあります。

てんかん

犬がさっきまで普通にしていたにもかかわらず急に落ち着かなくなったときには、「てんかん」による発作の可能性があります。症状が強く出る場合には、突然倒れてけいれんを引き起こしますが、てんかんの前兆であったり、軽度なものであれば、よだれを垂らしたり、そわそわするだけで終わる場合もあります。

通常、てんかん発作は数十秒から数分で治まり、その後、落ち着きなくウロウロする症状がしばらく続きます。けいれん発作を起こしている時は、飼い主がたまたま見ていないだけで、その後の落ち着きがない状態の時に気付いたという場合があるので、愛犬のよだれの有無を参考にするといいでしょう。

もし、てんかんである場合には、あまり長い間、発作状態にあると愛犬の命にかかわることがあるので、愛犬が落ち着いていてもいなくても病院で一度診てもらいましょう。

犬のてんかんについて詳しく

犬が落ち着かず、そわそわしている。こんな症状ならすぐ病院へ

犬が落ち着かず、そわそわしている。こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない場合

―犬の落ち着きがなくても放っておいていいのはどんな場合ですか?

まずは愛犬の普段の様子をよく観察することが大切ですが、その上で、原因として精神的にストレスを受けていることが強く考えられる場合は、様子を見ても大丈夫でしょう。ペットホテルに預けた、最近引っ越した、来客があった、愛犬が緊張するようなことがあった、など思い当たる節があれば、その原因をできるだけ解消してあげてください。

受診を強く勧める場合

―何らかの病気が疑われて、受診すべき症状の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

愛犬に下記のような症状が見られる場合は認知症の可能性があります。

  • 同じところをぐるぐると回って歩いている
  • 狭いところに入り込んだまま抜け出せずじっとしている
  • 夜鳴きがひどい

愛犬の夜鳴きや昼夜逆転の行動により近所から苦情が来ることや、治療を行い、症状を落ち着かせる必要が出てくる場合もあります。症状が重くなる前に早めに病院で診てもらえば、症状が落ち着く可能性があります。

これらのほかには、次のような症状が出るときには、副甲状腺機能低下症が疑われます。

  • 震えやけいれんがある
  • 食欲が落ちた
  • 神経過敏になっている
  • すぐ怒るようになり、攻撃性が増した

副甲状腺機能低下症は、放置するとけいれんがひどくなり、死亡することもある怖い病気です。血液検査によってわかりますので、早めに病院で診てもらいましょう。

さらに、下記に挙げるような様子が愛犬に見られたら、直前にてんかん発作があったか、てんかんの前触れである可能性があります。

  • よだれを垂らす
  • 落ち着かなくなる症状が突然現れた
  • 失禁した

これら場合には、よく観察せずにいると、愛犬のけいれんを見逃してしまい、よだれや食べ物を誤飲して窒息する危険性があります。

犬の落ち着きがない場合の対処法

犬の落ち着きがない場合の対処法

認知症が疑われる場合は、円形のペットサークルを用意

―犬がウロウロ歩き回る、何をするでもなく落ち着きがない場合、どう対処すればいいのでしょうか?

愛犬に認知症が疑われる場合は、狭い所にはまってしまうと、しばしば自力では抜け出せないので、円形のペットサークルを用意してあげるといいでしょう。その中で歩かせるようにすると、どこかに体をぶつけることがなくなり、犬のストレスが軽減されます。愛犬を自由に歩かせてあげたいからといって、ペットサークルを用意せずにいるのは、狭い所に体が挟まり、窒息したりパニックを起こしたりするので良くありません。

やさしく声をかける

認知症以外で落ち着きがない場合には、愛犬にやさしく声をかけて、触って落ち着くかどうかを見てあげてください。神経過敏になっている可能性があるので、あまり大きな声で呼びかけたり、物音を立てすぎたりしないようにすることが大切です。

まとめ

犬が落ち着かないときには何らかの原因が必ずあります。病気以外であれば、何が原因で落ち着かなくなっているのかを飼い主さん自身が推測できますので、愛犬の気持ちになって接してあげましょう。

もちろん病気が原因で落ち着かないこともあるので、おかしいなと感じたときには、一度病院で診察されることをお勧めします。もしできるなら、落ち着かない行動を動画に撮っておくと、病院で診察してもらう際に相談しやすく、役に立つでしょう。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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カ行
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サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
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  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
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  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。