犬の認知症の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年07月09日

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犬の認知症の症状

犬の認知症の症状と原因

犬の認知症は、老化や病気の影響によって脳神経細胞や自律神経の機能が低下して発症する病気です。進行性のため、時間がたつにつれて、犬に異常な行動が増えていく傾向にあります。

犬の場合、10歳(人間に換算すると50代後半)を超えたあたりから認知症の症状が現れ始め、13~14歳ぐらい(人間に換算すると70代半ば)から急増します。大型犬では8歳を過ぎたころから、小型犬では10歳を過ぎたあたりから対策が必要です。

以下のような症状が犬に見られたら、認知症を疑いましょう。

  • 徘徊(はいかい):目的もなくひたすらうろうろする
  • 旋回:くるくる回るように歩く
  • 夜鳴き
  • 昼夜逆転
  • 見当識障害:自分がどこにいるのか、今がいつなのかがわからなくなる
  • ヘッドプレス:角や壁に頭を押し付けたまま動かない
  • 無関心、無気力:何事にも興味がなく、呼びかけに反応しない
  • 性格の変化:イライラしたり、攻撃的になったりする
  • 食欲が異常にある
  • 急にトイレの失敗が多くなる

愛犬にこんな症状が見られたら、すぐに動物病院を受診

次のような症状が犬にある場合は、認知症を疑い、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。飼い主さんと愛犬の負担を少しでも減らすためには、普段から認知症対策が重要です。また、不安な点や気になる点などは獣医師に相談してください。

  • 日中ぐっすり寝て、夜間ずっと起きている
  • 夜中に吠(ほ)え続ける
  • 家族を認識できない
  • 狭い場所に入ると前には進めるが、下がれない
  • ぼんやりしている時間が多い
  • 凶暴になり近寄れない

犬の認知症の原因

犬が認知症を発症するのは、次のような原因があると考えられています。

  • 脳の神経細胞の減少
  • 神経から神経へ情報伝達する物質(神経伝達物質)の減少
  • アミロイドの蓄積

アミロイドは脳内で作られるたんぱく質の一種で、健康な人間や犬の脳に存在する物質です。しかし、アミロイド同士が結合して異常なアミロイドができると、細胞内に蓄積され、機能障害や細胞死を起こします。

犬の場合、脳内の血管周囲や脳にアミロイドが蓄積すると、認知症につながると考えられています。

認知症になりやすい犬の特徴は?

以下のような事例に当てはまる犬は、認知症になりやすいと言われています。

  • 13歳以上の高齢犬
  • 柴犬を代表とする日本犬、日本犬の雑種
  • 飼い主さん家族との接触が少ない
  • 単調な毎日を過している
  • 孤独にぽつんと過ごす時間が長い
  • 散歩の回数が少ない
  • 飼い主さん家族やほかの犬と遊ぶ時間がほとんどない

ただし、どの犬種でも認知症になる可能性はあるため、日ごろから愛犬の様子をよく観察しましょう。

犬の認知症の検査と治療法

犬の認知症の検査と治療法、予防法

検査内容

問診

飼い主さんから愛犬の症状が始まった時期やきっかけ、日常生活での様子、既往歴の有無、薬の投与歴など現在の様子をしっかり聞きとります。

犬痴呆(いぬちほう)の診断基準100点法

犬に認知症が疑われる場合は、獣医師の内野富弥先生が開発した「犬痴呆の診断基準100点法」を使って、犬の状態をチェックします。

血液検査

犬が、低カルシウム血症や低血糖、そのほかの体調不良になると、認知症に似た症状が見られる場合があります。そのため、認知症以外の可能性を排除するために血液検査を実施します。

MRI検査

犬が、脳腫瘍や脳梗塞を起こしていると、認知症と似た症状を示す場合があります。これらの病気を確認するために、全身麻酔下でMRI検査を行う場合があります。ただし、高齢犬に全身麻酔をかけるのはリスクを伴うため、獣医師とよく相談して検討してください。

治療法

犬の認知症に有効な治療方法はありません。犬の症状の進行を遅らせたり、緩和させたりする目的で、食事療法や症状に合わせた薬の処方、生活習慣の改善を行います。

認知力や記憶力の向上が期待されるフードやサプリ

犬が認知症になった場合は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エンコサペタエン酸)といったオメガ3脂肪酸や、ビタミンE、レシチンなどが多く含まれるサプリメントや処方食の利用が推奨されます。

  • DHA
    DHAは、サンマやイワシといった背が青い魚に多く含まれる成分です。犬の脳の神経細胞を活性化させたり、傷ついた神経細胞を修復したりする効果が期待できます。
  • EPA
    EPAは、DHA同様、背が青い魚に多く含まれます。犬の脳神経の機能を高める働きがあるため、アドレナリンやドーパミンなど、脳に情報を伝える成分をスムーズに受け取れるようになる効果が期待できます。
  • ビタミンE
    ビタミンEは、抗酸化作用がある栄養素です。細胞の酸化は脳神経だけでなく、犬の体内のあらゆる部位に影響を与えます。ビタミンEを日ごろからしっかり摂取すると酸化予防に効果的です。
  • レシチン
    レシチンは、細胞膜を構成している成分であり、神経伝達物質であるアセチルコリンの材料になります。脳の栄養素とも言われ、犬の認知症の予防効果が期待されている成分です。

犬の認知症の症状を緩和させるためにできること

  • 日光浴をさせる
    体内時計が乱れると昼夜逆転が起こりやすくなります。人間と同様に犬の場合にも、適度な日光浴が体内時計の改善や気分転換に効果があるとされています。
  • 積極的に運動させる
    愛犬に十分な散歩やボール遊びなどで、しっかり筋肉を動かす時間を確保しましょう。愛犬の筋力が低下して寝たきりになると、認知症が進行しやすくなるため、積極的に運動させてください。また、愛犬に日中しっかり運動をさせて、昼寝をさせない習慣にすると、昼夜逆転の対策にもつながります。
  • 散歩に行き、刺激を与える
    刺激のない退屈な日々を過ごす犬は、徐々に認知症が進む傾向にあります。散歩を習慣づけ、たまにはコースや時間を変えるなど工夫をして、愛犬に刺激を与えましょう。
  • スキンシップを十分にとる
    愛犬の体に触れる、ブラッシングを行う、話しかける、遊びに誘うなど、どんな方法でも構いません。毎日、短い時間でも愛犬とスキンシップやコミュニケーションをとりましょう。

犬の認知症の予防法

犬の認知症は予防が難しい病気のため、できるだけ早く愛犬の異変に気付き、治療や対策を早期に行うことが重要です。日光浴をかねたこまめな散歩や、散歩コースを変えるのも犬にとって刺激になり、認知症の予防効果があります。

また、犬は高齢期に入ると、少しずつ脳の機能も落ちていきます。愛犬に認知症の症状がまったく感じられない場合でも、脳の細胞は減少しているのです。まだ症状が出ていない段階から、DHAやEPAが含まれている高齢犬用のドッグフードに切り替えたり、サプリメントを与えたりすると認知症の予防につながります。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。