犬の前庭疾患の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年07月08日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬の前庭疾患の症状

犬の前庭疾患の症状と原因

犬の前庭疾患とは、内耳にある前庭と呼ばれる部分が正常に働かなくなり、神経症状が起こる病気です。

前庭部は平衡感覚をつかさどっていて、体のバランスをとるために欠かせない器官です。

高齢の犬に多い病気で、突然発症する場合がほとんどです。目立った前兆はほとんどありませんが、元気がない、食欲不振、呼吸が荒い、震え、よだれがひどい、嘔吐(おうと)するなどが前触れとして多く現れます。

愛犬に前庭疾患が起こると次のような症状が現れます。気になる症状があれば、動物病院を受診しましょう。

  • 眼球が横一定方向に連続して揺れる(眼振)
  • 正面から見たときに頭が傾いたままになる(捻転斜頸:ねんてんしゃけい)
  • 同じ方向にグルグル回りながら歩く(旋回)
  • 真っすぐ歩けず、ふらふらしてしまう
  • 食欲不振
  • 元気がない
  • 嘔吐する
  • よだれがひどい

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

前庭疾患は、さまざまな症状が急に起こるケースがほとんどで、飼い主さんも慌ててしまいがちです。

特に次のような症状が起きている場合は、回復までに時間がかかったり、回復しても後遺症が残ったりする可能性があります。眼振が縦揺れの場合には、前庭疾患ではなく脳腫瘍の疑いがありますが、いずれの場合も様子を見ないで早急に動物病院を受診しましょう。

  • 眼球が縦に揺れている
  • 前庭疾患の症状が起きた後、起き上がれない
  • 嘔吐がひどい

数時間前までは問題がなかったのに、急に症状が出始めるケースは珍しくありません。

夜間やかかりつけの動物病院の休診日に起こる場合も考えられます。そのため、夜間対応している動物病院をあらかじめ見つけておくと安心です。

犬の前庭疾患の原因

犬の前庭疾患の原因は、平衡感覚をつかさどる前庭神経に何らかの要因で異常が生じているためと考えられています。

前庭疾患は、末梢性、中枢性、特発性の大きく3つに分けられます。前庭は末梢と中枢に分かれ、前庭疾患の多くは末梢性です。中枢性は比較的まれですが、経過が悪いケースが多く見られます。

犬の平衡感覚をつかさどる器官とは

鼓膜のさらに奥にある内耳は、蝸牛(かぎゅう)、前庭、三半規管から構成されています。このうち、前庭と三半規管が平衡感覚に関係する器官です。

また、小脳や延髄にある平衡感覚をつかさどる中枢と前庭や三半規管は、神経でつながっています。これらの平衡感覚を正常に保つ器官をまとめて前庭系と言います。

この前庭と呼ばれる領域に異常が発生することが前庭疾患の原因となっています。

末梢性前庭疾患

犬の内耳や内耳につながる神経が障害を起こして発症します。次のような病気が障害を起こす原因になります。

  • 中耳炎
  • 内耳炎
  • 外傷
  • 異物や腫瘍
  • 甲状腺機能低下症
  • 聴器毒性のある薬剤による中毒
  • 先天性

中枢性前庭疾患

犬の小脳や延髄にある前庭系の部位に障害が起こり発症します。次のような病気が原因になります。

  • 脳梗塞
  • 脳の炎症
  • 腫瘍
  • 外傷
  • ビタミンB1欠乏症

特発性前庭疾患

さまざまな検査を行っても異常個所が特定できず、原因不明な前庭疾患を特発性前庭疾患と言います。老犬で比較的多く見られます。

前庭疾患にかかりやすい犬の特徴

前庭疾患は、年齢や犬種を問わず発症する可能性がある病気です。

特に高齢の犬に多く見られ、とりわけ柴犬や柴犬ミックスに多い傾向があります。老犬の飼い主さんは注意が必要と言えるでしょう。

犬の前庭疾患の治療法

犬の前庭疾患の治療法と予防法

検査内容

血液検査

犬の腎臓や肝臓などの臓器に問題が起こっていないかを確認します。腎不全や肝不全、低血糖は神経症状を引き起こす可能性がある病気のため、鑑別が必要です。

神経学的検査

犬の障害が発生している神経を特定するための検査です。無麻酔で行います。

歩行検査

犬の平衡感覚を確認します。

耳鏡検査

犬の外耳から鼓膜までを観察します。外耳炎の程度や鼓膜の破れなどを確認し、外耳の炎症が中耳や内耳に及んでいないかを調べます。

電気生理学的検査

必要に応じて、犬に脳波検査や聴覚刺激試験を行い、神経の働きを確認します。

MRI検査、CT検査

ほかの検査で大きな異常が見つからない場合、全身麻酔下でCT検査、MRI検査を行い、異常が起きている部位を探します。MRI検査のほうが、異常のある部位を発見しやすい傾向にあります。

治療法

検査の結果、原因が判明した場合には、それに対する治療を行います。

ほとんどの場合は投薬治療になりますが、前庭疾患の原因が腫瘍のときには、手術といった外科的処置が必要になる可能性もあります。しかし、腫瘍ができている場所によっては手術が困難なこともあるため、獣医師とよく相談してください。

一方、原因がわからない特発性前庭疾患の場合は、今のところ明確な治療方法がありません。現れる症状に合わせて犬に対症療法を行い、自然回復を待ちます。回復期間は個体差がありますが、数週間から数か月かかり、後遺症が犬に残る場合もあります。

無治療の場合

犬の特発性前庭疾患の場合は、無治療でも徐々に回復する事例があったり、急激にひどい症状が起こっても2~3日目位から徐々に良くなり、数週間で回復する事例もあったりします。

しかし、原因にかかわらず大きな後遺症が犬に残り、生活に大きな支障が出たり、介護が必要になったりすることもあります。

家庭内でできること

犬が前庭疾患を発症すると真っすぐ歩けなくなったり、ぐるぐる周りながら歩いたりといった症状が現れます。平衡感覚がうまく取れなくなるため、フラフラして倒れる犬もしばしばいます。

家庭内では、「生活範囲を限定して歩く範囲を狭める」「階段から落ちないようにゲートをつける」などの工夫が必要です。ケガをしないように、ぶつかると危ないものを片づけ、どうしても移動できない家具などは角を座布団やクッションなどでカバーしましょう。お風呂マットで壁を作るのもおすすめです。

また、症状を悪化させないために、頭の位置が急に変わるような抱っこの仕方は避けましょう。横抱っこから急に縦抱っこにする、体の向きを変えるために急に動かすなどがやってはいけない例です。

方向転換をゆっくり行わないと、眼振がひどくなる場合がありますので注意しましょう。

なお、マッサージは自己判断で実施するのではなく、動物病院で獣医師に相談してください。

身動きが取れなくなってしまったときの対応

万が一、愛犬がうずくまり、身動きが取れなくなってしまった場合は、寝かせ方を工夫する必要があります。同じ側を下にして長時間寝かせると床ずれになりやすいので、厚めのベッドに寝かせたり、こまめに体位を変えてあげたりしましょう。

犬の前庭疾患の予防法

前庭疾患は突発的に発症するため、明確な予防方法はありません。

ただし、ひどい慢性的な外耳炎は、外耳道の炎症が中耳や内耳に及ぶ場合がありますので、外耳炎の治療はしっかり行ってください。

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犬の脳・神経系の病気

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。