犬が足を引きずる原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月25日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
犬が足を引きずる、歩き方がおかしい原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。
見た目にはわからなくて、骨折や重い病気にかかっているのかもしれません。犬の行動やふるまいに異常や変化を感じたらすぐに獣医師さんに相談しましょう。
犬が(片)足を引きずるようにして歩く原因は?
―犬が足を引きずる、かばうようにして歩くといった異常の原因として、どんなものが考えられますか?
歩くときにきちんと体重を支えることができず、足を引きずる状態を「跛行」(はこう)と呼びます。跛行は、主にその足に痛みや違和感があるときに見られる症状です。
仮病(痛がらない)
まれに、痛みや違和感がないのに犬が跛行することがあります。いわゆる仮病のようなもので、もっと構ってほしい、もっと注目してほしい、もっと心配してほしいという気持ちから、わざと跛行するのです。この場合、犬の足に触ってもまったく痛がらないし、いろいろ検査をしても何も異常が見つかりません。
こうした行為は、すべての犬がするわけではありません。以前に足を痛めて跛行していた時に、家族がすごく心配され、構ってもらったり注目してもらったりした経験のある犬が行う現象です。犬自身がしゃべるわけではないため、異常との見極めが非常に難しいのですが、たまに跛行する足が変わり、仮病だと気が付くことがあります。
外傷
交通事故や落下事故、激しい運動による外傷で、犬が足を引きずるようになることがあります。その場合、犬に骨折や脱臼、靭帯損傷などが疑われます。
先天的・遺伝的
先天的・遺伝的な問題により、骨や関節が正常に形成されない、または異常を生じる病気があります。
関節炎
さまざまな原因で関節に炎症が起こることがあります。炎症があると痛みが出るため、その足をかばって足を挙げたり、引きずったりします。
腫瘍
主に老齢犬で見られることが多いのですが、腫瘍による痛みや違和感から跛行することがあります。
これらのようなことを原因としてさまざまな病気が起こります。
犬のこんな症状、足の様子がおかしいようならすぐ病院へ
―犬が足を引きずる病気やケガとして、どんなものが考えられますか?
犬の年齢やサイズに関係なく見られるもの
骨折や脱臼など、外傷性の跛行があります。当然ですがどの足でも見られる可能性があり、かなり強い痛みが出ます。そのため、その足は完全に挙げっぱなしになります。
骨折の場合は、しばらくすると腫れてくる可能性があります。また、痛みが強く犬にかかるストレスも大きくなるため、早めに動物病院を受診しましょう。
骨折と脱臼のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬の骨折」「犬の脱臼」を併せてご覧ください。
発育期の小型犬に多いもの
発育期の小型犬には、レッグ・ペルテス病、膝蓋骨脱臼、成長板早期閉鎖といった病気が見られます。
レッグ・ペルテス病
レッグ・ペルテス病は生後1歳以下、特に6~7ヶ月齢の小型犬によく見られます。子の病気は、後ろ足の大腿骨の骨頭部分(股関節を形成する部分)が血流阻害により壊死・変形を起こします。原因ははっきりわかっていませんが、遺伝的な関与があると考えられています。
発症すると、突然、ヒョコヒョコと歩くようになります。また、病気が進行すると痛みが強くなってきて、跛行が目立つようになります。多くの場合、治療には手術が必要になりますが、ごく初期に発見できれば手術を回避できるかもしれないため、できるだけ早く受診しましょう。
レッグ・ペルテス病のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬のレッグ・ペルテス病」を併せてご覧ください。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は小型犬で非常に多く、後ろ足の膝の部分にある膝蓋骨という骨がずれてしまう状態です。
ケガで脱臼する場合は、どの年齢や犬種でも起こりますが、発育期に滑りやすい環境で遊んでいると脱臼が慢性化してしまい、そのまま骨格が形成されてしまいます。成長とともに脱臼が慢性化する場合、犬はほとんど気にしないことが多いのですが、先天的な脱臼では骨格の歪みが大きくなり、歩きづらくなることがあります。
膝蓋骨脱臼のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)」を併せてご覧ください。
成長板早期閉鎖
前足の手首と肘の間には、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という2本の骨があります。成長期の骨の端っこには成長板という軟骨部分があり、ここが伸びていくのですが、橈骨、または尺骨のどちらかの成長板が損傷し、成長が止まってしまうと、2本の骨の成長にズレが生じてしまいます。これが成長板早期閉鎖と呼ばれるもので、前足でしばしば見られる異常です。この病気を発症すると、前足が歪んでしまい歩きにくくなります。なお、歪みが大きくなる場合は外科手術による矯正を行います。
成熟期の小型犬に多いもの
成熟期の小型犬では、前十字靭帯疾患、関節炎、腫瘍といった病気がよく見られます。
前十字靭帯疾患
前十字靭帯疾患は、後ろ足の膝の中にある前十字靭帯が傷んだり、断裂してしまったりする病気です。この原因は、運動している時に膝にかかる衝撃によって靭帯を損傷してしまうためと考えられています。靭帯の損傷は急激に起こり、犬は強い痛みを感じるので、ほとんど足を挙げっぱなしになります。その後、落ち着いてくると引きずるようになるのです。
前十字靭帯断裂のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬の前十字靭帯断裂」を併せてご覧ください。
関節炎
関節炎は関節に炎症が起こり、痛みで跛行が見られる病気です。前足も後ろ足も、関節がある場所であれば関節炎になる可能性があります。感染性や非感染性といった分類で分けられますが、近年では非感染性のリウマチのような免疫介在性関節炎のようなタイプが増えています。
症状は重症度によってさまざまで、発熱や、元気・食欲の低下があります。また、引きずる足が日によって変わることもあります。こちらは緊急性がある病気ではありませんが、診断が難しいため、できるだけ早く受診しましょう。
関節炎のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬の関節炎」を併せてご覧ください。
診断方法
―診断方法について教えてください。
年齢や犬種、症状の経過、実際の歩行状態、触診、レントゲンが基本的な診断のための検査です。病気によっては、CT検査、関節液検査といった特殊検査が必要になるものもあります。
「PS保険」では、24時間365日、獣医師による無料※電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しております。病院へ足を運ぶまでの応急処置を含む医療相談から、素朴な疑問まで幅広く応対してくれるので、もしものときも安心です。
※:通話料はお客さまのご負担になります。
※当サービスは、株式会社チェリッシュライフジャパン(CLJ)と提携し、アニクリ24のサービスを提供するものです。
※Anicli24(アニクリ24)は獣医師による電話医療相談サービスを提供する動物病院です。
犬の足の異常の対処法と予防法
ご家庭で様子を見る場合
―家庭でできる対処法・応急処置を教えてください。
犬が足を引きずる、歩き方がおかしい場合、犬は痛みやストレスを感じている可能性が高いため、静かに過ごせるような環境を作ってあげましょう。そうは言っても特別なことをすると犬が緊張してしまうかもしれないので、普段どおりの生活をしていれば十分です。また、足を無理に触るとかまれることがあるため、触らないようにしてください。
治療が必要な場合
―病気が疑われる場合は、受診の際、どんな用意をすればいいですか?
跛行診断には、歩行状態の観察が非常に重要です。病院で犬が緊張してしまうと足を引きずらなくなることがあります。また、病院内が狭いと正確に跛行状態を評価できないため、動画をいくつか撮影してください。複数のアングルから撮影できるとより良いでしょう。
―犬の足の異常には、どんな治療を行うのですか?
犬が足を引きずる、歩き方がおかしくなる原因はいろいろありますが、ほぼ共通する対策は、安静にする、体重をコントロールする、消炎鎮痛剤やサプリメントの投与です。異常によっては手術が必要になるものもあります。
―治療中に特に気を付けなければならないことはありますか?
一般的に治療中は安静にするよう指示されます。それに、きちんと従いましょう。
犬の足の異常に対する予防法
―予防法や飼い主が日ごろから気を付けたいことがあれば教えてください。
ケガは飼い主さんの不注意で起こることが多々あります。例えば、散歩時はリードを短めにするといった対策をしましょう。また、室内では、犬がソファやベッド、階段の昇り降りの時に転んで足を痛めることが多いため、これらをできるだけ避ける環境を作りましょう。
まとめ
跛行は犬にとって辛い症状です。内科治療で改善する場合も、手術が必要になる場合でも、早期発見、早期治療ができれば犬が苦しむ期間を短くできます。そのため、愛犬の異常を感じたらできるだけ早く受診しましょう。
犬の歩き方に関連する記事
そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- ブル・テリア
- ブルドッグ
- ブルマスティフ
- フレンチ・ブルドッグ
- ペキニーズ
- ベドリントン・テリア
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
- ボーダー・コリー
- ボーダー・テリア
- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
- ボクサー
- ボストン・テリア
- 北海道
- ポメラニアン
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
- ボルゾイ
- ボロニーズ
- ホワイト・シェパード・ドッグ
マ行
- マスティフ
- マルチーズ
- マンチェスター・テリア
- ミディアム・プードル
- ミニ・オーストラリアン・ブルドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・ピンシャー
- ミニチュア・プードル
- ミニチュア・ブル・テリア
ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。