犬が夜に吠える原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月29日

犬が夜中に吠えるのは、どんな理由があるのでしょうか。それには心的なものもあれば、病的なものもあります。いずれの場合について、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

愛犬のいつもと違う動作の異常や行動の変化は、何かの病気のサインかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬が夜に吠える原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬が夜に吠える原因とは?

―犬が夜になると吠えるのは、どんな理由があるのですか。

欲求を満たすために吠える

欲求を我慢できなくて吠えるケースです。犬は、お腹が空いたとか、遊びたいといった欲求を伝える手段としてしばしば吠えます。興奮した場合に吠えるのも同じことです。このケースでは、成功体験がきっかけになっています。

例えば、お腹が空いたときに吠えたら家族がおやつをくれたとか、遊びたくなったときに吠えたら相手をしてもらえた、などです。これらのように、犬は吠えれば自分の欲求が満たされるという関連付けがされると、吠えるようになります。

また、夜になって家族が帰ってくるとうれしくて吠えることもあります。

警戒して吠える

犬が警戒して吠えるのは、自分の縄張りを守ろうとする行動です。夜に突然の来客があると犬は吠えることがあります。このときも、やめさせようとしてなだめたり、おやつをあげたりすると、これらが成功体験になり、この行動が強化されてしまうのです。

また、犬の聴力は人間よりも優れています。これは人間よりも広い周波数を聞き取ることができるということです。犬は人間の実に約2倍近くの音域を聞き取ることが可能だとされています。つまり、犬は人間の聞き取れない音を聞いていて、それに対する反応として吠えている可能性があります。

もちろん、日中にもさまざまな音が聞こえていますが、夜中は音の種類が減るため、それぞれに対して反応しているのです。

不安で吠える

犬は、留守番のようなひとりでいる状況に慣れていないと、家族の姿が見えなくなったり、寝てしまったりすると不安を感じて吠えることがあります。

また、これら以外に何らかの病気によって、犬が夜になると吠える場合があります。

犬が夜に吠える原因として考えられる病気とは?

犬が夜に吠える原因として考えられる病気とは?

―犬が夜になると吠える原因としてどんな病気が考えられますか?

認知症

老犬で認知症を発症し、認知機能が低下すると、昼夜が逆転してしまうことがあります。それによって夜になると吠えるのです。

犬の寿命が延びて高齢での病気が増えていますが、その中でも診断や治療に悩む病気のひとつが認知症です。認知症は血液検査で確定診断を出せず、同じような症状が見られる病気を除外して、見つけていくという手順が必要になります。

認知症の評価には、いくつかの基準があります。家族や周りの状況を認識できなくなる「見当識障害」、人や犬と今までのようなかかわり方ができなくなってしまう「社会的交流」、トイレが今までのようにできなくなってしまう「不適切な排泄」、遊ばなくなったり、食欲の増減、徘徊行動をしたりといった「活動性」、そして、今回のテーマのように、夜に吠えるようになったり、徘徊するようになったりする「睡眠サイクル」です。

これらを総合的に評価して認知症という診断を出します。

犬の認知症について獣医師が詳しく解説

―認知症にかかりやすい犬種、特徴について教えてください。

一般的に犬では9歳以上で認知症になることが多く、加齢に伴って罹患率が増加していきます。あるデータでは、日本国内において日本犬系の雑種が最も多く、次に多いのが柴犬とされています。それ以外の犬種では、ビーグル、ヨークシャー・テリア、シー・ズー、マルチーズ、シェットランド・シープドッグなどでも発症が多いことが知られています。

犬が夜吠えるようになった。こんな症状ならすぐ病院へ

犬が夜吠えるようになった。こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない場合

愛犬の夜鳴きが問題行動なら行動診療科を受診

―愛犬が夜鳴きをするようになっても病的なものではなく、一時的なもの、家庭内で対処できる場合はありますか?

欲求を満たすために吠える、警戒して吠える、不安で吠えるといった行動は病的なものではありません。そのため、家族や近所の人の迷惑になるレベルのものでなければ、すぐに病院に行く必要はありません。

しかしながら、それが家族にとって大きなストレスになる、近所迷惑になるレベルであれば、それは問題行動となります。その場合は、行動診療科の診察をしている病院を受診したほうがいいかもしれません。

受診を強く勧める場合

―受診すべき認知症の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

見当識障害が重症化している

  • 自宅やいつも行く場所、散歩コースなのにそれが認識できていない、家族を認識できていない
  • 落ち着かず、家の中で歩き回る
  • 立ち往生したり、障害物を避けたりすることができなくなる
  • 今まで気にしていなかったもの(ぬいぐるみのようなもの)に対して異常な反応をする

これらのような変化が犬に見られる場合は、見当識障害が重症化している可能性があります。つまり、空間認知能力の低下や、家族を家族であると認識できなくなっているということです。

社会的交流の能力が重度に低下している

  • 遊びやコマンド(飼い主からの合図)に対する興味を失ってしまう
  • 同居犬に対して攻撃性が強くなる

睡眠サイクルの乱れが重症化している

  • 夜寝なくなったり、逆に寝る時間が異常に長くなったりする
  • 夜中に徘徊する

排泄のコントロールができなくなっている

  • 失禁してしまう、トイレ以外で排泄してしまう

これらの症状の進行は、生活の質が非常に低下してしまうことになります。また、家族との関係も変化してしまい、人間側にも大きなストレスがかかってしまいます。

犬の認知症の対処法

犬が夜に吠える、認知症の対処法

―犬が認知症になったら、どう対処すればいいのでしょうか?

人間でも認知症の確実な治療法がないのと同様、犬の認知症も根本的なものはありません。そのため、病気が進行するのをできるだけ食い止めること、そして、犬自身と家族との生活の質をできるだけ維持していくことが重要になります。また、認知症になるような年齢の犬では、ほかにも病気を抱えていることが少なくないため、その病気の治療も併せてしっかり行いましょう。

具体的な認知症の対処・治療としては、行動療法、食事療法、薬物療法、介護が挙げられます。

行動療法

行動療法とは、犬になるべくストレスをかけさせずに、身体的にも精神的にも活動的な生活をさせることが目的になります。具体的には、困った行動や今までできていたことができなくなることに対して怒らない、極端な部屋の模様替えや家具の変更などをしない、散歩のような軽い運動を続けて体の活動を低下させない、簡単なしつけをして脳に刺激を与えるといったことが挙げられます。

食事療法

食事療法は、抗酸化作用や抗炎症作用、神経を安定化させるような作用のあるものを取り入れます。こういった栄養素を強化した療法食やサプリメントがあるので、動物病院で相談してみてください。

薬物療法

薬物療法は、人間の認知症と同じく症状を緩和したり、進行を抑えたりするという目的で内服薬を使用します。

介護

介護については、初期の認知症ではあまり必要にはなりませんが、中期〜末期になると必要になります。自分で歩けなくなったら補助してあげる、起き上がれなくなったら褥瘡(読み:じょくそう、意味:床ずれ)ができないよう、こまめに体勢を変えてあげる、室温のこまめな管理や食事・排泄の補助などです。

まとめ

人間でも老人の介護は重要な課題ですが、犬でも寿命が長くなるにつれて認知症や介護の課題は非常に重要視されるようになってきました。問題なのは、犬自身だけでなく、ケアをするご家族にとっても大きなストレスになってしまうことです。さまざまな不安やストレスが出てきますが、なるべく抱え込まずに動物病院と連携を取りながら、無理なくケアをしてあげましょう。

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。