犬のあくびが多くなる病気の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月27日

犬も私たち人間同様にあくびをします。その多くが一時的なもので、いつの間にか治まります。しかし、やたらとあくびをする、ずっと続くとすれば、その原因は何らかの病気なのかもしれません。そんな犬のあくびについて、原因となる病気、その治療法や予防法、自宅での対処、注意点などを獣医師さんに伺ってみました。

眠いわけでもないのに、愛犬があくびばかりする、様子がおかしいと思ったら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬のあくびが多くなる病気の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬のあくびとは?

犬も退屈なときや眠いときにあくびをする

―私たち人間も眠いときにあくびが出ますが、犬の場合はどうですか?

犬も退屈なときや眠いときにあくびをすることがあります。脳に酸素を送るためという説や、あくびによって温度調節をして脳のオーバーヒートを防ぐためなど、さまざまな説があります。しかし、どうして眠いときにあくびが出るのかという理由は、まだはっきりとはわかっていません。

気持ちを落ち着かせるカーミングシグナルとしてのあくび

また、眠いときだけでなく、緊張したときやストレスを感じたときなどに、気持ちを落ち着かせるための「カーミングシグナル」として、あくびをすることがあります。カーミングシグナルとは、「カーミング=落ち着かせる」「シグナル=合図」という意味で、犬が初めての場所や動物病院に行ったとき、いたずらをして叱られているときなどによく見られます。

ほかにも飼い主さんのあくびが犬に伝染する「共感あくび」もあります。この「共感あくび」は、見知らぬ人よりも親密な関係にある飼い主さんからうつることが多いという研究結果があり、信頼関係を表すサインとも言えます。

犬のあくびの原因として考えられる病気とは?

犬のあくびの原因として考えられる病気とは?

―何らかの病気が原因で犬があくびをする、あくびが増えることはありますか?

犬があくびをしたり、あくびが増えていたりするとき、考えられる病気としては、うつ病やてんかん、低血糖症、貧血などがあります。

うつ病

犬は言葉を話せないので実際の心の内はわかりませんが、いわゆる「うつ病」のように、ストレスが原因で問題行動や自傷行為、下痢嘔吐、あくびが増えるなど、さまざまな症状が出ることがあります。

てんかん

てんかんは、原因がわからない特発性てんかんや、脳腫瘍・脳炎が原因で起こる症候性てんかんなど、さまざまな原因により起こります。犬のてんかんについて獣医師は詳しく解説します。

主な症状は発作で、全身が突っ張る、手足をバタバタさせる、落ち着きがなくなる、よだれがたくさん出る、遠吠えのような声を出す、顎がガクガク震える、あくびをするなどが見られます。

低血糖症

低血糖症は、生後3か月ごろまでの子犬に多く見られ、食事量の不足、嘔吐や下痢を引き起こす寄生虫感染、ウイルス感染などが原因で起こります。しかし、成犬でもインスリノーマという膵臓の腫瘍が原因で低血糖症に陥ることがあります。

血糖値が下がりすぎてしまうと脳のエネルギーが不足してしまうため、ふらつきや元気・食欲の消失、けいれん発作、あくびが増えるなどの症状が現れ、最悪の場合、死に至ることがあります。
犬の低血糖症について獣医師が詳しく解説します。

貧血

貧血は、免疫異常や中毒、寄生虫感染、腫瘍、大量出血など、さまざまな原因で起こります。貧血が起こると、食欲不振、落ち着きがない、疲れやすい、歯ぐきが白っぽくなる、あくびが増えるなどの症状が現れます。
犬の貧血について獣医師が詳しく解説します。

犬のあくびで、こんな症状ならすぐ病院へ

犬のあくびで、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない犬のあくび

―どんなあくびであれば、心配はいりませんか?

ごはんの後やたくさん運動をした後などにあくびをしているのであれば、眠気からくるあくびの可能性が高いと言えます。また、飼い主さんのあくびにつられるようにあくびをしている場合も特に心配ありません。

見極め方が難しい場合は、元気や食欲、うんちやおしっこの状態などを確かめ、それらがいつもと変わらないようであれば特に心配はありません。

また、愛犬が知らない場所や動物病院などに行って緊張をしている場合にも心配は不要ですが、気持ちが落ち着くように愛犬をなでて、寄り添ってあげるとなおいいでしょう。

受診を強く勧める犬のあくびと諸症状

―受診すべきあくびの見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

あくびだけではなく、次に挙げるような症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診するようにしてください。

  • 元気や食欲がない
  • 嘔吐や下痢をしている
  • ふらつく
  • ぐったりしている
  • 顎がガクガク震えている

低血糖症による貧血が見られたら特に注意

これらの症状が見られる場合、特に心配される病気が低血糖症や中毒による貧血です。先ほども少し触れましたが、低血糖症は3か月ごろまでの子犬に多く見られます。飼い始めの時期であることから、様子を見てしまう飼い主さんが少なくありませんが、短期間でどんどん状態が悪化し、重い後遺症が残ることがありますし、最悪の場合、死に至ることもあります。そのため、子犬なのに元気がなく寝てばかりいる場合は、すぐに動物病院を受診してください。

中毒による貧血や嘔吐、赤い尿にも注意

中毒も比較的若齢の犬に見られますが、老犬にも起こる可能性はあります。中毒は誤飲してしまったものによって症状が異なりますが、玉ねぎのようなネギ類や人の解熱鎮痛剤(特にアセトアミノフェンを含むもの)、殺鼠剤などを誤飲してしまうと、貧血が起こる可能性があります。摂取量によっては死に至ることがあるため、これらを口にしてしまった場合や先ほど紹介したような貧血の症状が見られる場合、嘔吐や赤い色の尿が出ている場合などにはすぐに処置をする必要がありますので、様子を見ずに動物病院を受診するようにしてください。

犬のあくびが増える病気の対処

犬のあくびが増える病気の対処

犬が低血糖症を起こしたときの応急処置

―愛犬が低血糖症を起こしたら、どう対処すればいいのでしょうか?

愛犬に低血糖症が疑われる場合、特にぐったりしたりけいれんを起こしていたり、深刻な状態に陥っている場合は、ガムシロップや砂糖をぬるま湯に溶かしたものを舐めさせて、糖分を補給してあげてください。舐めることも難しい場合は、スプーンやスポイトなどを使って口の中に垂らしてあげましょう。

ただし、これらで糖分を補給できたとしても、またすぐに低血糖に陥ってしまうため、応急処置を行ったら、すぐに動物病院を受診するようにしてください。

誤飲による中毒を起こした場合の対処法

無理に吐かせようせず、すぐに受診を

―愛犬が誤飲をして中毒を起こしてしまったら、どうやって吐かせたらいいでしょうか?

愛犬が誤飲をしてしまうと、吐かせたくなる気持ちは痛いほどわかるのですが、無理に吐かせようと考えないでください。インターネット上には塩やオキシドールを使って吐かせる方法がよく載っていますが、胃の粘膜を傷つけてしまったり、食塩中毒を起こしてしまったり、別の病気を誘発してしまうおそれがありますので、絶対にやめてください。

誤飲による中毒が疑われる場合は自宅で対処しようとせず、すぐに動物病院を受診するようにしてください。

まとめ

愛犬があくびをしている姿は本当にかわいらしく、思わずこちらも笑顔になってしまいますよね。しかし、あくびをする背景はさまざまで、ときには大きな病気が原因になることもあります。

日ごろから愛犬の元気や食欲などをしっかり観察することで、ちょっとした体調の変化に素早く気付いてあげられるようになります。愛犬があくびをしているときは、たかがあくびと思わず、いつもと違う症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。