犬が玉ねぎを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

最終更新日:2024年07月26日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

玉ねぎは、犬が食べると玉ねぎ中毒を引き起こし、加熱加工しても有害成分は変化しません。愛犬が玉ねぎをなめてしまった、食べてしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。

犬が玉ねぎを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

犬が玉ねぎを食べると引き起こされる症状

犬が玉ねぎを食べると引き起こされる症状

玉ねぎの成分「有機チオ硫酸化合物」が犬に中毒症状を引き起こす

消化器症状を来し、赤血球が破壊される

玉ねぎには「有機チオ硫酸化合物」という成分が含まれています。この有機チオ硫酸化合物は、人に対しては抗ガン作用や血栓予防効果など良い効果をもたらします。しかし、犬がこの成分を摂取すると、赤血球や赤血球中のヘモグロビンを酸化させ、赤血球が破壊(溶血)されてしまいます。

犬が玉ねぎを食べたかも!? こんな症状が見られたら病院へ

玉ねぎ中毒の症状は数日かけて現れる

犬が玉ねぎを大量に食べてしまうと、24時間以内に中毒症状が現れる場合がありますが、中毒症状が現れるまでに1日~数日間かかることがほとんどです。初期症状としては、下記のような消化器症状が見られます。

  • 嘔吐(おうと)
  • 下痢
  • 腹痛
  • 食欲不振

犬が溶血によって貧血に陥ると、次のような症状が現れます。

溶血性貧血にる症状

  • 口などの粘膜が白っぽくなる
  • 血色素尿
  • 黄疸(おうだん)
  • 呼吸数の増加
  • 元気がなくなる

犬の溶血性貧血について詳しく

犬が玉ねぎをどのくらい食べると危険なのか

犬が玉ねぎをどのくらい食べると危険なのか

犬が玉ねぎをなめた、少量を食べてしまったらどうなるの?

犬が玉ねぎをなめたり、少量を食べたりした程度であれば、中毒症状が出る可能性は低いと考えられます。ただし、中毒症状は1日~数日後に現れるため、数日間は愛犬の体調に変化がないかをしっかり観察してください。また、愛犬に中毒症状が現れるかどうかは個体差によるところもあるため、心配であれば動物病院を受診しましょう

玉ねぎの匂い成分の影響は?

犬の玉ねぎ中毒は、玉ねぎの成分を体に吸収することで発症しますので、匂いを嗅いだだけで重度の中毒症状を発症させる確率は低いと言えるでしょう。しかし、人間でも玉ねぎを刻んで発せられる成分で目がしみることがあり、犬にも不調を来す可能性があります。また、手や調理器具に玉ねぎの匂いがあるとすれば、成分の付着を意味しますので、愛犬がなめないよう、しっかり洗浄してください。

犬にとって危険な玉ねぎの摂取量

体重1kgあたり玉ねぎ15~30gで中毒症状が現れる

犬では一度に体重の0.5%以上、もしくは体重1kgあたり15~30gの玉ねぎを食べると中毒症状が出ることがわかっています(出典元:Allium species poisoning in dogs and cats)。一般に玉ねぎの中、Mサイズと呼ばれるもので1個あたり約200gです。

玉ねぎを含むネギ属の野菜の重さ

玉ねぎは、ネギ属の野菜です。同じネギ属の野菜の重さは、おおよそ次のようになります。

  • 玉ねぎ:1個あたり約200g
  • にら:1束あたり約100g
  • 長ねぎ:1本あたり約100g
  • わけぎ:1束あたり約120g
  • にんにく:1片あたり約8g

中毒症状が現れるネギ類の摂取量

以上のことから、体重3kgの子犬であれば、次のような摂取量で中毒症状が現れる計算になります。

  • 玉ねぎ1/5個
  • にら1/2束
  • 長ねぎ1/2本
  • わけぎ1/3束
  • にんにく5片

加熱加工された玉ねぎやネギ科の野菜も犬にとっては危険

玉ねぎに含まれる有機チオ硫酸化合物は、加熱や乾燥などの加工を加えたとしても毒性がなくなりません。そのため、加工した玉ねぎであっても犬に中毒を引き起こす危険性があります。

また、にらや長ねぎ、わけぎ、にんにくなど、ネギ属の食べ物にも玉ねぎと同じ有機チオ硫酸化合物が含まれています。そのため、ハンバーグや玉ねぎ入りの野菜ジュース、すき焼きやギョーザ、ガーリックソースを使用した料理などにも注意が必要です。

加えて、これらのエキスが溶け出したスープ類にも有機チオ硫酸化合物が含まれているため、これらを犬が口にしてしまうと中毒を引き起こす可能性があります。

日本犬は、玉ねぎ中毒に特に注意

玉ねぎ中毒による犬の死亡例は少ない一方で、日本犬は玉ねぎ中毒を起こしやすいとも言われているため、特に注意が必要です。

犬が玉ねぎを食べてしまったときの応急処置

犬が玉ねぎを食べてしまったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置、対処法

状況をメモして、動物病院に電話を

愛犬が玉ねぎを食べた直後であれば、一刻も早く吐かせたいところでしょう。しかし、自己判断で食塩やオキシドールを使って吐かせるのは、とても危険です。まずは落ち着いて、愛犬が玉ねぎを食べてしまった時間や食べた量、加工・調理したものであれば、その名前をメモに取り、すぐに動物病院に電話を入れましょう。

中毒症状が出るのは数日経ってからですが、食べた量によってはすぐに処置が必要な場合があります。そのため、夜間や休日であっても診察可能な動物病院を探し、連絡を入れてください。そして、獣医師から応急処置の指示があれば、それに従い、その後すぐに動物病院を受診しましょう。

愛犬の急なトラブルに、24時間365日、獣医師が電話で直接サポート

ペットメディカルサポート株式会社のペット保険「PS保険」では、24時間365日、獣医師による電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しています。愛犬のお困りごとがありましたら、いつでも獣医師に相談できます。

病院での対処法

催吐処置や全身麻酔をかけ胃洗浄を行うなど高額診療になることも

食べた玉ねぎの量が少量であれば、毒素を吸着してくれる活性炭の処方だけで済む場合があります。しかし、玉ねぎを食べてから、それほど時間が経っていない場合は、薬剤を使用して吐かせる処置(催吐処置:さいとしょち)を行います。玉ねぎの摂取量が多いと、全身麻酔をかけて胃洗浄を行う場合もあります。催吐処置を行う場合の治療費はおおよそ1万円前後ですが、胃洗浄を行うと2万~3万円ほどかかります。

玉ねぎ中毒による入院治療は10万円以上かかることも

すでに愛犬に中毒症状が出ている場合は、入院治療を行いますが、玉ねぎ中毒に対する解毒剤はありません。そのため、出ている症状を抑える治療を行います。重度の貧血がであれば、輸血を行ったり、呼吸が苦しそうであれば酸素室に入ったりする場合もあります。入院中はこれらの治療のほかにもさまざまな検査を行いますので、治療費はトータルで10万円以上かかることもあります。

※こちらの診療費は参考例です。平均や水準を示すものではありません。診療費は病院によって異なります。

まとめ「犬に玉ねぎを食べさせてはいけない」

玉ねぎはさまざまな料理に使われている食材であるため、思いがけず愛犬が玉ねぎを口にしてしまう場合があります。また、普段どれほど気を付けていても、ちょっとした隙に愛犬が玉ねぎを食べてしまう場合があります。そのため、万が一、愛犬が玉ねぎを口にしてしまったら、正しい対応ができるかが重要です。

犬の玉ねぎ中毒の症状は時間をおいて現れますので、まずは気持ちを落ち着かせて、なるべく早く動物病院を受診しましょう。

関連リンク

愛犬に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「犬が食べてはいけない危険な食べ物」「犬が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。