犬にとって危険なトマトの部位を食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

最終更新日:2024年02月26日

犬にトマトを与えても問題ありません。ただし、どんなものも食べすぎは良くありませんし、犬に適さないトマトの危険部位には注意が必要です。犬にとってトマトの適切な与え方や適正量、トマトの危険部位を食べてしまったときの対処法について、獣医師が解説します。

犬がトマトの危険部位を食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

犬にトマトを与えても大丈夫。その適正量は?

犬にトマトを与えるなら赤く完熟したものを

―犬にトマトを食べさせても大丈夫ですか?

犬にトマトを食べさせても基本的に問題はありません。生でも加熱処理したものでも大丈夫です。ただし、問題なく食べさせられるのは、青い未熟なトマトではなく、赤く完熟したトマトであることが前提です。

熟したトマトには「リコピン」「βカロテン」「ビタミンC」「ミネラル」などの栄養素が豊富に含まれ、犬の健康維持に与えるメリットも充分ある食材と言っていいでしょう。

犬にとってのトマトの適量

水分が豊富なトマトは与えすぎると下痢になる

犬にとって危険なトマトの部位を食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

―完熟のトマトを愛犬に与える際、適量を教えてください。

完熟トマトをドッグフードのトッピングやおやつとして犬に与える場合、一日に必要なエネルギー量の10~20%以内に収まるようにしましょう。

体重5kg程度の犬を例にすると、一日あたりエネルギー要求量(RER : Rest Energy Requirement)は約350キロカロリーと算出されます。この10%程度をトマトにする場合、35キロカロリーとなります。

トマトは、その94%が水分からできており、100gあたり19キロカロリーと低カロリーです。このことから中玉サイズ(175g)のトマトを1個食べさせてもいいことになります。また、ミニトマトの場合は100gあたり29キロカロリーであることから、1個15g程度のサイズなら7~8個食べさせられることになります。

ただし、トマトは水分が豊富であることから、与えすぎると下痢になることもあるため、与えすぎには気を付けましょう。

与え方としては、へたや葉はしっかりと取り除いたうえで、生よりも加熱するほうがより栄養を効率的に吸収できます。ミニトマトの場合は、犬が丸飲みすると喉や食道に詰まる可能性があるため、細かく切って丸飲みさせないよう注意してください。

犬にトマトを与えるときの注意点

犬にトマトを与えるときの注意点

トマトの成分「トマチン」が犬に中毒を引き起こす

トマトのへた・葉・茎・花、未熟な実を犬に与えてはいけない!

―トマトのどんな成分が、犬の健康に悪影響を与えるのですか? 与える際には、どんなことに気を付けなければいけませんか?

トマトには「トマチン」と呼ばれる有毒物質が存在しており、特にへたや葉、茎、花に非常に多く含まれています。また、未熟な青いトマトにもトマチンが比較的多く含まれており、犬に対しても有毒です。このトマチンはトマトが完熟するとほとんど含まれなくなるため、完熟トマトであれば犬に安心して与えられます。

万が一、犬がトマチンを多量に含むトマトの葉や茎などを食べてしまい、中毒を起こした場合、赤血球が破壊されたり、下痢や嘔吐の消化器症状が出たりして重症化すると、死亡する場合があります。

人では、体重50kgで未熟なトマト34個が致死量とされていますが、犬の体重に換算すると、体重5㎏の犬なら未熟なトマトを3個が致死量と推測されます。

(出典:トマチン | みんなのひろば | 日本植物生理学会 (jspp.org)

犬がトマトのへた・葉・茎・花を食べたかも!? こんな症状が見られたら病院へ

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 歯ぐきの色が白っぽい
  • ぐったりする

いずれの症状も中毒症状が現れたと推測できるため、食べたことが確実なら、できるだけ早く病院を受診してください。

その際は、トマトの葉や茎、花など食べたものと同じものを持参し、食べた量と時間も伝えられるようにするといいでしょう。

そのほかの注意点

―トマトにはいろいろな種類がありますが、完熟したトマトであれば、どれを与えても大丈夫ですか?

基本的には完熟トマトであれば、色が赤くない種類のものでも大丈夫ですが、トマチン中毒以外にも注意するべきトマトの品種があります。

例えば、フルーツトマトは糖分が多く、糖尿病の持病がある犬には与えないほうがいいと考えられます。また、ミニトマトは丸飲みしてしまうと喉や食道に詰まるリスクが高いため、そのまま与えるのは避け、細かく刻んで与えるようにしましょう。

ほかにも、トマトにアレルギーをもつ犬もいることから、トマトを食べさせる際は少しずつ与え、一度にたくさん与えることは控えましょう。

―丸飲みしないよう、市販のトマトジュースを与えるのは構いませんか?

犬にトマトジュースを与えられますが、無塩タイプの物を選ぶようにしましょう。これは、加塩タイプのトマトジュースを飲みすぎると塩分を取りすぎてしまい、腎臓や心臓に負担をかけてしまう可能性があるからです。また、トマトジュースは水分が多いため、たくさん飲むと下痢になりやすいため、飲ませる量は控えめにしましょう。

―子犬や老犬には、どのようにトマトを与えたらいいのでしょうか?

子犬は消化機能が未熟、老犬は弱まっている場合があります。そのため、トマトの栄養素を効率的に吸収させるために、皮や種は取り除いて加熱することが望ましく、また、与える量を控えめにすると胃腸に負担がかかりにくいと考えられます。

ただ、年齢に関係なくトマトに対してアレルギー反応を示す犬もいることから、食べさせた後の体調変化には気を配るようにしましょう。

犬がトマトの危険部位を食べてしまったときの応急処置

犬がトマトの危険部位を食べてしまったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置、対処法

―愛犬がトマトの危険部位、へた、茎、葉、花を食べてしまったら、家庭でどう対処したらいいのでしょうか?

愛犬の口に残っている場合はできるだけ取り除くようにしましょう。もし飲み込んでしまっていても消化される前に吐かせれば、中毒を起こさずに済む場合があるため、2時間以内に動物病院を受診し、吐かせる処置をしてもらうことが最善と考えられます。くれぐれも自宅で無理に吐かせるようなことはしないでください。

愛犬の急なトラブルに、24時間365日、獣医師が電話で直接サポート

ペットメディカルサポート株式会社のペット保険「PS保険」では、24時間365日、獣医師による電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しています。愛犬のお困りごとがありましたら、いつでも獣医師に相談できます。

病院での対処法

―病院ではどのような処置をするのですか?

血液検査やレントゲン、超音波検査などを組み合わせて犬の体調がどうなっているのかを把握するよう努めます。また、点滴や注射などによって対症療法を行います。重篤化すれば入院治療が必要になり、数万円かかる場合もあります。

まとめ「犬にトマトのへた、茎、葉、花、また未熟なトマトを食べさせてはいけない」

トマトは犬にとってメリットとなる栄養素が多く含まれており、完熟していれば食べさせても基本的に問題はありません。しかし、トマトのへたや茎、葉、花、未熟な青いトマトには犬にとって有害なトマチンという物質が多量に含まれています。食べて吸収されてからでは治療が困難になる場合があるため、絶対に食べさせないようにしましょう。

愛犬に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「犬が食べてはいけない危険な食べ物」「犬が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

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