犬の貧血の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年07月09日

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犬の貧血の症状と原因

犬の貧血の症状

犬の貧血は、血液中の赤血球や赤血球の色素であるヘモグロビンが減少して引き起こされます。赤血球やヘモグロビンは酸素を全身に運搬する役割を担っているため、犬が貧血になると、すべての臓器に酸素が行き渡らなくなり、酸欠状態に陥って命にかかわる場合があります。

愛犬が貧血になっているかどうかを見分ける方法として、次のような症状が挙げられます。

  • 歯ぐきや結膜などの粘膜の色が白っぽくなる
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 食欲がなくなる
  • 呼吸が早くなる
  • 足元がふらついている

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

次のような症状が犬に見られる場合は、重度の貧血が疑われます。命にかかわるおそれがありますので、様子を見ずにすぐに動物病院を受診してください。

  • 明らかな出血があり、出血量も多い
  • 歯ぐきや結膜などの粘膜の色が真っ白になっている
  • 意識が朦朧(もうろう)としている
  • 元気や食欲がない状態が数日続いている

犬の貧血の原因

犬の貧血は、赤血球の破壊の亢進(こうしん:必要以上に活発な状態)や赤血球産生の低下などによって生じます。犬が貧血を引き起こす原因には、以下のような病気が挙げられます。

溶血性貧血

犬の血液中の赤血球が破壊される状態を「溶血(ようけつ)」と言い、溶血が起きる原因によって現れる症状も異なります。

免疫介在性溶血性貧血

犬の体内の抗体やマクロファージ、ナチュラルキラー細胞などの免疫細胞が赤血球を破壊して引き起こされる貧血です。基礎疾患が認められない原発性と、基礎疾患が原因で起こる続発性に分けられます。

愛犬が免疫介在性溶血性貧血を発症すると、食欲不振や元気消失、可視粘膜(まぶたの裏や歯ぐき)の蒼白、運動不耐性などの症状が見られる場合があります。

溶血性輸血副反応

主に輸血により、愛犬と異なる血液型の血液が体内に入り込むと、入ってきた血液に対する抗体が産生され、赤血球が破壊される場合があります。症状としては発熱や呼吸困難、流涎(りゅうぜん:よだれを流すこと)、尿失禁などが見られ、重篤化すると呼吸困難や低血圧を引き起こします。

レプトスピラ症

細菌による感染症で、犬の溶血性貧血の原因になります。黄疸(おうだん)や発熱、食欲不振、嘔吐(おうと)、血色素尿(赤血球が大量に破壊されたことで遊離した血色素が尿中に排出されている状態)などの症状が現れます。

再生不良性貧血

犬の血液中の赤血球を産生している骨髄が何らかの原因で傷つき、機能不全に陥って血液不足になる貧血です。原因不明の特発性と、化学療法剤や中毒により引き起こされる二次性に分けられます。

出血性貧血

犬が受けた外傷や手術、消化管潰瘍などによる慢性的な出血、脾臓(ひぞう)の破裂などによって引き起こされる貧血です。

中毒

犬の場合、中毒が原因となって引き起こされる貧血の代表例に、玉ねぎ中毒があります。玉ねぎに含まれる酸化剤により、赤血球が破壊されることで発生します。玉ねぎに含まれる酸化剤は、加熱処理をしても分解されないため、愛犬に与えるのは避けましょう。

鉄欠乏性貧血

犬の鉄欠乏性貧血は、出血や失血により鉄の貯蔵量が低下することで引き起こされます。原因となる疾患には、腫瘍や外傷、寄生虫、血液凝固不全、消化管出血などが考えられます。

寄生虫

バベシア症

犬のバベシア症は、ダニが媒介する原虫によって引き起こされる溶血性貧血の一種です。

ノミ、マダニ

愛犬がノミやマダニなどの外部寄生虫に重度に寄生され吸血されると、失血性の鉄欠乏症貧血を起こす場合があります。

鉤虫(こうちゅう)

犬の消化管内に寄生虫である鉤虫が寄生すると、鉤虫感染症を発症します。鉤虫は小腸の粘膜から吸血するため、慢性的に失血状態に陥り、鉄欠乏症貧血を引き起こします。

貧血になりやすい犬の特徴は?

犬の貧血には、溶血性貧血・再生不良性貧血・出血性貧血・中毒・鉄欠乏性貧血・寄生虫などの原因があります。それぞれの原因において貧血になりやすいと報告のある犬の特徴は、次のようなものになります。

溶血性貧血

溶血性貧血を発症しやすい犬種には、プードル、アメリカン・コッカー・スパニエル、コリーなどが挙げられます。

玉ねぎ中毒による貧血

玉ねぎ中毒による貧血では、柴犬や秋田犬などのアジア系の犬種で重症化しやすいとの報告があります。

バベシア症

犬のバベシア症は、西日本で多く感染が報告されています。そのため、西日本に住んでいる場合には頭にとどめておきましょう。

犬の貧血の治療法

犬の貧血の治療法と予防法

貧血の原因によって、検査や治療法が異なります。

検査内容

身体検査

犬の口腔内の粘膜や結膜などの色を診察し、貧血の状態を確認します。ノミやマダニの寄生の有無も確認します。

血液検査

犬の血液を採取して、貧血の程度や全身状態を調べます。また、血液塗抹検査(けつえきとまつけんさ)も併せて行うと、貧血の原因をある程度推定できます。

尿検査

犬の尿中の菌体や血色素(ヘモグロビン)を顕微鏡で確認します。貧血の原因の鑑別を行い、レプトスピラ症を診断できる場合もあります。

直接クームス試験

犬に免疫介在性溶血性貧血が疑われる場合、必要に応じて行います。赤血球に自己抗体や補体といった赤血球を傷害する物質が結合しているか判定する試験です。

治療法

溶血性貧血

免疫介在性溶血性貧血の場合、ステロイドやスクロスポリンなどの免疫抑制剤を愛犬に投与する治療がメインです。

主な原因が輸血である溶血性輸血副反応の場合は、ただちに輸血を中止し、対症療法を行います。

また、レプトスピラ症が原因の場合は、愛犬に抗菌薬を投与して治療します。

再生不良性貧血

愛犬への化学療法が原因の場合、投薬を中止します。造血剤を投与し、赤血球の産生を促進する場合もあります。

出血性貧血

愛犬が受けた外傷が原因の場合、出血部位の治療を行います。胃や十二指腸の潰瘍などが原因の場合は、必要に応じて粘膜を保護する薬を使います。

中毒

玉ねぎやニンニクなどの中毒物質を愛犬が食べた直後であれば、吐かせる処置を行います。すでに愛犬に貧血の症状が出ている場合は、輸血を始めとする対症療法を行います。

寄生虫

愛犬に駆虫薬を投与することで、寄生虫を除去します。ノミやマダニが原因の場合は、予防薬を月1回投与すると駆除と予防が同時に行えます。

無治療の場合

愛犬の重度の貧血状態をそのままにすると、昏睡状態に陥り、最悪の場合には命を落とす場合があります。

犬の貧血の予防法

食事による貧血の予防法

玉ねぎ中毒を防ぐために、ネギ科の食べ物は犬に与えないでください。また、犬が誤食する場合もあるので、食事の準備中や食事中も食材を床に落とさないよう注意が必要です。

寄生虫や細菌による貧血の予防法

ノミやマダニは、定期的に予防薬を投与することで、寄生を予防できます。動物病院で購入が可能です。

細菌によって引き起こされるレプトスピラ症は、年1回の混合ワクチンの接種で予防が可能です。

寄生虫や細菌による貧血の予防については、獣医師に相談して対応すると良いでしょう。

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犬の血液・リンパ系の病気

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。