犬の下痢の原因と対処法を獣医師が解説。下痢を繰り返すなら病院へ

最終更新日:2024年07月09日

犬が下痢をする主な原因は、食事、ストレス、異物誤飲のほか、ウイルスや寄生虫感染による消化管の炎症、慢性腸症や腫瘍のような病気に起因するものなどさまざまです。これらの予防や対処法、飼い主さんが心がけたいことなどを獣医師の三宅亜希先生に監修いただきました。

元気にしているから大丈夫だろうと様子を見ていると、急激に悪化してしまう場合があります。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬の下痢の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

犬の下痢の原因・病気とは?

子犬の時期に多い下痢の原因は、寄生虫感染です。ワクチンプログラムが終わっていない場合は、下痢を引き起こすようなウイルス感染の可能性も考えなくてはなりません。

このほか世代を問わず、異物誤飲を原因とするものや消化不良が挙げられます。

犬パルボウイルス感染症による下痢

ワクチンプログラムを受けていない子犬の下痢の原因として、「犬パルボウイルス感染症」が挙げられます。犬パルボウイルス感染症の主症状は下痢と嘔吐です。パルボウイルスは、感染前であれば、ワクチンによって予防が可能です。

感染症に限らず、下痢と嘔吐はどちらも脱水を起こす危険があります。特に、体力があまりない子犬では命にかかわるおそれがあるので十分注意しましょう。

異物誤飲、誤食による下痢

おもちゃを始め食べ物以外のもの、異物を食べてしまった場合、消化せずに腸閉塞を引き起こし、下痢と嘔吐が見られる場合があります。

また、人の食べ物のようにドッグフード以外のものを盗み食いした場合も、食べなれないものを食べ、消化ができない、油分が多く含まれている、中毒を起こすなどの理由から下痢を起こす可能性があります。

犬の下痢の原因・病気とは?

慢性腸症や腫瘍による下痢

子犬ではほとんど見られませんが、成犬~老犬(高齢犬)では、慢性腸症、膵外分泌不全、腫瘍といった病気が下痢の原因になります。慢性腸症は、原因不明で腸に炎症が起こり、慢性的な下痢になる病気で、自己免疫が関与していると考えられています。膵外分泌不全は膵臓からの消化酵素がきちんと出ずに消化ができなくなる病気です。

犬の下痢に見られるゼリー状のものとは?

犬の腸に異常があると、腸から分泌される粘液や粘膜が剥がれ落ち、これらが増えてゼリー状の塊となって排出される場合があります。これは粘液便と呼ばれるものです。

食事を原因とする下痢

古くなったフードに微生物が繁殖し、その微生物が作り出す毒素が原因で犬が下痢を起こす場合があります。フード自体が劣化して、お腹の刺激になる可能性もあります。

また、犬は食べる量が多すぎたり、食べ慣れないものを食べたりすると、消化吸収できずに下痢を起こす場合があります。食物アレルギーの症状として下痢が見られることもあります。

そのため、アレルギー検査を行う、消化のいい食事をするなど、犬が下痢をしたら食事を見直してみるのも大切です。

犬がお腹をくだしているさいの最適な食事とは?

ストレスによる下痢

犬も人と同じように、体にストレスがかかると、消化管の正常な活動が妨げられ、下痢を起こす場合があります。

環境要因でストレスになるものとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 家族構成の変化
  • 近所で工事をしている
  • 台風が来た、雷が鳴った
  • 季節の変わり目、朝晩の大きな気温の変化など

寄生虫による下痢

回虫(かいちゅう)、条虫(じょうじゅう)、鞭虫(べんちゅう)のような寄生虫によって、犬に下痢が起こる場合があります。こうした寄生虫は肉眼で見えますが、中には糞便検査で検出されにくい種類もいます。

それは、トリコモナス、ジアルジア、コクシジウムといった原虫で、非常に小さいため肉眼では確認できません。これら原虫は、成犬が感染しても無症状であったり、軟便程度であったりしますが、免疫力の弱い子犬の場合は、下痢を引き起こす可能性があります。

原虫による下痢の場合は、いくつかの可能性を疑い、何度か糞便検査をしてようやく発見できることがあるため、薬を飲んでも症状が改善しない、または飲み終わるとすぐに再発する場合は、長く様子を見ようとせず、再診してください。

犬の下痢の対処法、食事や散歩はどうするの?

犬の下痢の対処法、食事や散歩はどうするの?

動物病院から食事の内容や与え方の変更、投薬、環境整備についての指示があれば、それらを確実に行いましょう。食事の指示がない場合は、次のように対処します。

成犬や老犬の下痢には、ご飯を抜いて症状が治まるのを待つ

犬が下痢をした後は絶食(ご飯を抜く)にしましょう。下痢になると腸の動きが活発になりすぎることがあり、食べたものがどんどん下痢として出てしまいます。ご飯を抜くことは、腸を休ませるのに非常に有効です。症状が収まってきたら、腸に負担をかけないように消化のいいご飯を少量頻回(少ない量で回数を多く)で与えてください。

整腸作用を促すために

ビオフェルミンのような整腸剤の成分は主に善玉菌です。薬の作用を考えると、犬の状態が悪くなることは少ないと考えられます。すぐ病院に行けない場合は飲ませるという選択肢もあるでしょう。

子犬や糖尿病の場合は、絶食に注意

子犬や糖尿病でインスリン投与を行っている犬の場合は、安易に絶食をさせないでください。これは、食べないと低血糖になる危険があるためです。

また、愛犬の散歩については、下痢の症状が治まるまで控えて、できるだけ安静にしましょう。

犬の下痢で、こんな症状が見られたらすぐ病院へ

犬の下痢で、こんな症状が見られたらすぐ病院へ

様子を見てもいい犬の下痢の症状

愛犬に見られる症状が下痢だけで食欲があり元気もあるなど、ほかの状態はいつもと変わらない場合は、しばらく様子を見てもいいでしょう。もちろん、早く病院に来てもらうのが一番いいのですが、もし、すぐに連れて行けない場合は、食事の量を減らしてみてください。

成犬であれば1日絶食するのも有効です。そのような対応で腸にかかる負担を軽くしてあげて、症状が落ち着くようであれば、そのまま自宅で経過観察してもらっても大丈夫だと言えます。

しかし、2日以上にわたり愛犬が下痢を繰り返す場合は、病院に行きましょう。下痢が続くと脱水が起こるおそれがあるからです。

食欲も元気もあるけど犬が下痢をしている時の対処法を獣医師が解説

受診を強く勧める犬の下痢の症状

下痢だけでなく、元気や食欲がなくなってくるようであれば要注意です。単純な下痢でも症状が重度だったり、ほかの病気が原因になっていたりする可能性があります。

子犬と老犬(高齢犬)の場合は、症状が軽くても免疫力や体力がないため、急激に状態が悪化するおそれがあります。そのため、元気あり、食欲ありでも、軟便以上の状態であれば早めに病院に行きましょう。

また、次のような症状が見られる場合、明らかに症状が重い場合は、かなり緊急性が高くなります。腸閉塞のような一刻を争うことが多いため、何とかして病院に連れてきてください。

犬の下痢の危険な症状チェックリスト

  • 元気がまったくない
  • 便の回数が多い
  • 下痢と嘔吐が見られる
  • 血便が出ている
  • 治療しても下痢が治らない
  • 下痢を繰り返す
  • 便の臭いがいつもと全然違う
  • ゼリー状の下痢をする
  • 噴射するように下痢をする

さらに、いつもと違う姿勢で休むなどの症状が見られた場合は、腹部の痛みによる影響が考えられ、ひどい胃腸炎や胃腸炎以外の病気のおそれがあります。

受診の際は、新鮮な便があれば糞便検査ができるため、持参してください。すぐに病院に行けない場合は、便の状態を写真撮影すると、情報量が多くなり診断の糸口になる場合があります。

犬が下痢を繰り返す原因やどう対処するのが好ましいかを獣医師が解説

犬の保険について

犬の下痢の予防法

感染性の下痢であれば、ワクチン接種や定期駆虫によって予防可能なものもあります。そのほか、適切な食事管理ができていれば、犬が下痢になる頻度は低くなります。

異物誤飲癖のある犬には、手の届くところに飲み込んでしまうような異物を置かないこと、散歩の時はリードを短く持つなどの対策が有効です。

まとめ

人と同じで犬もお腹を壊してしまう場合があります。多くは一過性の下痢であり、食事の変更や与えすぎ、食べ慣れないおやつを与えたなど、思い当たることがある場合は、それらは排除することで改善が期待できます。ですが、中には重篤な消化器疾患や別の病気が原因になっている場合もあります。そのため、日ごろから愛犬の便をよく観察し、いざというときに慌てなくていいように備えましょう。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。