犬の便秘の原因とは?予防と解消法を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月22日

犬が便秘になる、うんちが出ない原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師の三宅亜希先生に監修いただきました。

人が便秘になったら、ビオフェルミンのような整腸剤を飲んだり、食事に気を配ったりできますが、犬にはそれができません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬の便秘の原因とは?対処と予防を獣医師が解説

犬の保険について

犬は何日くらいうんちが出ないと便秘なのか?

犬の便秘の具体的な基準はない

人では3日以上排便がない場合や残便感が残る場合を便秘と呼ぶようですが、実ははっきりとした定義はないようです。犬の場合も同様に具体的な基準はありません。

うんちの回数は犬それぞれ

犬の一日あたりのうんちの回数も基準はありませんが、子犬は回数が多いことが一般的です。中には、一日に5回以上うんちをする犬もいます。

犬は成長とともに徐々にうんちの回数が減っていき、一日に1~2回程度が多いようです。しかし、これも食事内容によって排便回数が変わります。例えば、ダイエット用の療法食には繊維質が多く含まれているため、通常のフードに比べて便の回数が増えます。

大事なのは、愛犬が毎日どれくらいの量の便をするのかを把握しておき、排便量や回数が突然増えたり減ったりするという変化を見逃さないことです。

便秘を疑う犬の症状

犬が便秘になると、うんちをしないだけでなく、排便姿勢を取っているのに便が出ない、排便時に鳴く、食欲が低下する、などの症状、行動の変化が見られます。

犬の便秘の原因とは?

運動不足

犬が運動不足で消化管、大腸の動きが悪くなると、便秘になる場合があります。大腸は、便を押し出す蠕動運動(ぜんどううんどう:内容物を運ぶ動き)をしていますが、この運動が十分に起こらないと大腸の中に便がたまっていきます。大腸では、便の水分吸収が行われているため、そこにとどまっていると便の水分がどんどんなくなり、カチカチに硬くなるのです。その結果、犬が便秘になる場合があります。

食べ物による影響や水分不足

犬のフードが合わない、食物繊維の過剰摂取、水分の不足から、便が硬くなり、便秘になる場合があります。

加齢による筋力不足

犬も加齢により筋力が衰えます。老犬になり、排便するのに必要な筋力が低下すると、便秘になる場合があります。

自律神経の乱れ

通常、副交感神経がうまく働くことでスムーズな排便が行われます。しかし、何らかの原因で犬の交感神経と副交感神経のバランスが乱れると、大腸が緊張して便がうまく運ばれず、便秘になります。こうした自律神経の乱れによる犬の下痢は、環境変化のようなストレスがかかったときに見られます。

排便を我慢した場合

犬は、何らかの理由により排便を我慢していると、便が直腸まで運ばれていても、そこで排便のサインに気付きづらくなり、便秘になるケースもあります。

例えば、トイレを失敗して飼い主に怒られた、トイレが気にいらないといったストレスが、排便を我慢するきっかけとなり、便秘の原因となるのです。

ここまでが、便が作られる過程や排便の仕組みに問題があって便秘になるものです。

ほかには、物理的な閉塞のような消化管の通過障害によって、犬が便秘になる場合があります。こうしたケースでは、何らかの病気が原因になっている場合があります。

犬が便秘になる病気とは?

犬が便秘になる病気とは?

蠕動運動が不十分になるもの

犬の消化管の蠕動運動が不十分になる原因としては、年齢によるもの、運動不足、食物繊維の不足のほか、甲状腺機能低下症という病気があります。一般的に中高齢の犬によく見られる甲状腺機能低下症は、全身の代謝が低下するため、腸の蠕動運動も低下し、便秘になるのです。

神経や骨に痛みを生じさせるもの

犬の肛門周囲に傷ができたり、肛門嚢炎といった炎症が起こったり、馬尾症候群による神経障害があると、痛みのために排便を我慢する場合があります。犬がこうした病気で痛みを抱えている場合、便は直腸まで運ばれますが、そこで停滞して便秘になるのです。骨盤や後肢の骨折、関節炎などの場合も犬は痛みで踏ん張れないため、同様の状態になる可能性があります。なお、馬尾症候群は、小型犬よりも大型犬での発生が多い病気です。

直腸に痛みを生じされるもの

ほかに犬の排泄時に痛みを生じさせるものには、直腸内の異物や腫瘍があります。外傷や骨折は年齢に関係なく見られますが、そのほかは中高齢の犬でよく見られます。また、椎間板ヘルニアのような麻痺に起因して排便困難となり、便秘が生じる場合もあります。

閉塞による消化管の通過障害

閉塞による犬の消化管の通過障害は、誤飲、ヘルニア、腫瘍、ポリープ、前立腺肥大などで起こります。

ヘルニアの中でも会陰ヘルニアは、去勢していない中高齢のオス犬で多く見られます。この病気は、会陰部というお尻の周りの筋肉が薄くなり、その隙間から骨盤内の臓器や脂肪が逸脱してしまうのです。犬の会陰ヘルニアは、肛門付近が膨らみから発見されます。

前立腺肥大も去勢していない中高齢のオス犬で見られ、便秘のほか排尿障害が出ることもあります。また、犬の消化管に物理的に閉塞が起こっていないものの、腸が麻痺して動かない場合もあり、これは麻痺性腸閉塞と呼ばれます。

犬が下痢のあと、便秘になる原因とは?

犬は一度便秘になると、腸に便がたまってしまいカチカチになり、あとから流れてくる便を蓋のように留めてしまいます。その後、消化吸収機能が低下すると下痢便になりますが、便秘で蓋をされているため、犬はその下痢便を排出できません。

その状態で犬の便秘を解消すると蓋がなくなるため、下痢になってしまうのです。腸の状態によっては便秘と下痢を繰り返す場合もあります。どちらにしても、犬の腸は正常ではないため、適切な治療が必要です。なお、下痢のあと、丸一日便が出ないというケースがありますが、通常、良便として排泄される予定だった便が、下痢として早い段階で排泄されてしまっただけという場合が多いので、これは便秘とは異なります。

犬の便秘でこんな症状が見られたら、すぐ病院へ

犬の便秘でこんな症状が見られたら、すぐ病院へ

便秘は具体的な基準がないため、その子その子の変化を見つけることが重要です。

例えば、毎日便が出ている子が、3日も便が出ていなければ明らかにおかしいですし、1日おきにしか出ない子であれば、もしかしたら、たまたまなのかもしれません。いつもより間隔が空いていても、元気で食欲があれば少し様子を見ても問題ないと思われます。

しかし、次のように明らかに愛犬の具合が悪そうであれば、できるだけ早く受診してください。

  • 犬が苦しそうにしている
  • ぐったりしている

また、そこまでの状態ではなくても、以下のような症状が愛犬に見られれば、早めに受診してください。なぜなら、便秘状態が続くと脱水や衰弱が起こる危険があるからです。

  • 吐き気がある
  • 食欲が落ちている

犬の保険について

犬の便秘の予防と解消法

犬の便秘の予防と解消法

適度な運動

運動で体を動かすことは、ストレスを軽減し、犬の便秘の予防や解消につながります。通常は普段の散歩で十分ですが、狩猟犬や牧羊犬など運動量が必要なタイプの犬種では、十分に走り回る機会も与えてあげましょう。

食事内容の見直しや水分摂取

食事を変更したタイミングで犬が便秘を起こした場合は、変更前の食事に戻しましょう。また、積極的に水分を取らせることも愛犬の便秘解消に効果的です。常に愛犬が新鮮な水を飲めるようにしてください。また、ドライフードに水を加えたり、ウェットフードを与えたりするのもいいでしょう。

愛犬の便秘対策として、さつまいもやバナナなど食物繊維を与える方もいますが、食物繊維の取りすぎは、犬のうんちを硬くし、逆に便秘の原因になる可能性もありますので注意が必要です。

犬のお腹のマッサージ

犬のお腹をマッサージすると腸の蠕動を促し、便秘の予防や解消にとても有効です。勢いよく押さえると、反射的に犬がお腹に力を入れてしまうため、ゆっくりとやさしい力でマッサージをしてあげましょう。お腹の上からお尻方向に便を動かすようなイメージでやるのがお勧めです。背中や腰をなでるようにマッサージするのもいいでしょう。

まとめ

人の便秘は、排便時にすっきりとした感覚があるかどうかでよく判断されますが、犬の便秘の場合はそれを確かめられません。そのため、普段から愛犬の排便時の様子、排便回数、排便量などを観察し、変化に気付けるようにしておくと安心です。高齢犬では筋肉が痩せてきて、踏ん張れずに便秘になるケースもあります。排便時にふらつきがないかなども観察しましょう。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。