犬の痙攣(けいれん)の原因とは?気になる症状と対処法を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月08日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
犬が、けいれんを起こす原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミングや対処法、予防などを獣医師さんに伺ってみました。
犬が、けいれんを起こす様子は、飼い主だけでなく、誰にとってもつらいものです。だからこそ、その対処をきちんと知り、適切に行動できるようにしましょう。また、日ごろから愛犬の様子を観察し、動作の異常や症状の変化で気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談してください。
そもそも犬の痙攣(けいれん)とは?
犬の「痙攣(けいれん)」とは、一般的に「てんかん発作」と呼ばれており、何かしらの原因によって脳の神経細胞が過剰に興奮することです。
犬自身の意思とは全く関係なく、突然意識を失い倒れて手足を痙攣させる全身性の発作や、よだれを垂らしたり顔の一部がピクピクしたりする局所的な発作などが見られます。
愛犬に痙攣が見られたらパニックになってしまう飼い主さんも多いと思いますが、まずは冷静になるとともに愛犬に触ることはせず、そのぶん周囲の環境に気を配ってあげる必要があります。
例えば、痙攣を起こしている愛犬の近くに机の角などがあると危険なため、クッションか何かで覆うようにしましょう。
また、動物病院を受診した際に動画を見せることで診断がスムーズに進むことがあるため、可能ならば痙攣を起こしている様子を撮影するとともに痙攣が続いた時間やその時の引き金となりそうな現象を記録しておくことをおすすめします。
犬のけいれんの原因となる病気とは?
犬のけいれんの原因として、次のような病気が挙げられます。
てんかん
犬のけいれんの原因として最も見られるのが、いわゆる「てんかん」であり、特発性てんかんのことを差します。突発性てんかんは、脳の中にけいれんの原因となる炎症や腫瘍のような病変がなく、また全身的にも異常がないのに、てんかん発作が起きてしまう病気です。これは、遺伝的な要因が強く疑われます。
代謝の異常
体の中の老廃物を代謝・排泄する肝臓や腎臓などの臓器がきちんと機能できなくなると、毒素を蓄積してしまい、けいれんを起こすことがあります。こうした内臓の機能不全として、肝硬変や慢性腎不全といった病気が知られています。
中毒
犬に痙攣を引き起こししてしまう原因の1つに「有害物質を摂取したことによる中毒」を挙げることができます。
犬に与えてはいけない食べ物の1つに「コーヒー」が存在しますが、これは主にコーヒーに含まれるカフェインによって嘔吐や下痢、痙攣などが 見られるカフェイン中毒を引き起こしてしまうからとなります。
コーヒー以外にも犬に中毒を引き起こす食べ物や薬物は多く存在するため、飼い主さんは注意するようにしましょう。
感染症
犬に痙攣を引き起こししてしまう代表的な感染症として「犬ジステンパーウイルス感染症」があります。
「犬ジステンパー感染症」はウイルスが感染することで脳に異常を起こす疾患です。 「犬ジステンパーウイルス」に罹患した犬の鼻水や唾液などに触れてしまったり、咳やくしゃみによって空中に飛散したウイルスを吸い込んでしまったりすることで感染します。
「犬ジステンパーウイルス感染症」は全ての犬が接種することを推奨される「コアワクチン」に含まれているため、適切な頻度で混合ワクチン接種を実施していれば予防することはできます。
しかし、まだ接種スケジュールが完了していない子犬などには感染リスクが高いため、気をつける必要があります。
水頭症
脳脊髄の中は脳脊髄液が循環しています。何らかの原因によって、脳脊髄液の産生・循環・吸収に異常が起こってしまい、脳内にたまりすぎて脳圧が高くなる病態を水頭症と呼びます。
脳の炎症や腫瘍
脳炎や脳腫瘍のような異常を脳の器質的異常と呼びます。これらは、いわゆるてんかん発作を起こす可能性があり、このタイプのてんかんは、症候性てんかんと呼ばれます。
犬のけいれんで、こんな症状ならすぐ病院へ
心配のいらない犬のけいれんの症状
犬がけいれんを起こしてもすぐに回復して、その後、まったく症状がなければ家で様子を見てもいいでしょう。ただし、けいれんしていた時間や細かい症状、前後の状況などは、できるだけ記録しておいてください。
犬が寝ている時、手足がビクッと動いたり、走るようにバタバタしたりすることがありますが、これは病的なものではありません。犬も人間と同じように、寝ている間に浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」を交互に繰り返しています。
人間は眠りのうち8割がノンレム睡眠だと言われていますが、犬は8割がレム睡眠です。レム睡眠時は脳が覚醒している状態で、この時に夢を見てピクピク動いたり、しゃべったりしていると考えられています。
受診を強く勧める犬のけいれんの症状
犬が1日に何度もけいれんを起こす(群発発作)、けいれんしている途中で別のけいれんを起こす(重積発作)ようだと、危険で緊急性が高くなります。こうしたけいれんは、脳にダメージを蓄積してしまうからです。
犬のけいれんのほとんどは長くても数分で落ち着きます。そのため、病院に行く場合は、発作が終わり、犬が落ち着いてからにしましょう。ただし、上記のような、けいれんが短時間に続く場合はすぐに病院を受診してください。
病気によっては、犬がけいれんを起こしても、その後、何事もなかったように普通に戻ります。また、けいれんとけいれんの間隔はさまざまで、その間隔が空いていれば治療の必要がない場合もあります。そのため、犬の元気や食欲などに問題がなければ、次の発作まで様子を見てもいいかもしれません。
犬がけいれんを起こしたときの対処法
犬がてんかん発作を原因として、けいれんを起こす場合
けいれんを起こした直後
愛犬がてんかん発作やけいれんを起こしたら、何とか対処したいという気持ちから、「愛犬を抱っこしたい」「少しでも落ち着けるように愛犬の体や顔をなでてあげたい」と感じられる方は多いと思いますが、絶対にやめましょう。
けいれんは、犬自身の意思とまったく関係なく起こっています。もし、けいれん中に、犬があなたの体をかんでしまっても、犬の意思ではやめられません。そのため、一歩間違えると大ケガにつながる危険があるのです。そこで、犬の周囲をクッションのようなもので囲って、犬自身のケガの危険を減らしてあげましょう。
けいれん中
ひとえにけいれんと言っても、さまざまな種類があり、それを獣医師に確認してもらうため、動画を撮影しておきましょう。また、犬のけいれんの様子を見ていると、すごく長い時間が経っているように感じられるものですが、正確なけいれんの持続時間を測定しておくことも重要です。加えて、重積発作が起きていないかも確認してください。
けいれん後
けいれんが終わると、犬はしばらくもうろうとしたり、フラフラしたりといった状態になりますが、やがて落ち着きます。その後、ほとんどの場合は、いつもどおりの状態になります。
一度回復したら、群発発作が起きていないかどうかの見極めが大事です。可能であれば、犬と一日一緒にいて様子を見てあげましょう。また、けいれんが激しいとケガをすることがあるため、体のどこかを気にしたり、痛がったりしていないかを確認してください。
犬のけいれんの原因がてんかんだった場合、ある一定以上の頻度でけいれんが起きるようであれば、抗てんかん薬を投与します。
犬がてんかん以外の病気を原因として、けいれんを起こす場合
代謝の異常
犬に代謝の異常が認められる場合は、体内に蓄積した毒素を出すために点滴治療を行います。また、それぞれの原因に対して、症状の緩和や進行を遅くするような薬を投与します。このほか、食事を療法食にすることも大事です。
中毒
犬が中毒症状を起こして、けいれんしている場合は、解毒剤を投与しますが、それがない場合は、点滴治療や問題の起きている臓器を保護する薬を投与します。
感染症
犬が感染症によってけいれんを起こしている場合、ウイルスを確実に無毒化する薬はないため、点滴治療や二次感染予防のために抗生物質の投与などを行います。栄養状態が悪いようであれば、しっかり栄養を取らせます。
水頭症
水頭症の場合は、脳内に脳脊髄液がたまることで脳圧が上昇し、けいれんが起きるため、利尿剤を投与して脳脊髄液を減らします。また、外科手術を行うケースもあります。これらに加えて、けいれんが続くようであれば、抗てんかん薬を投与します。
脳の炎症や腫瘍
脳の炎症や腫瘍の場合は、ステロイドのような抗炎症作用のある薬で炎症を抑える、また、摘出可能な腫瘍であれば外科手術を行います。それでも、けいれんが起きる場合は抗てんかん薬を投与します。
犬のけいれんの予防
犬のけいれんの原因として最も多いてんかんとそれ以外の病気に分けて、それぞれの予防法や対処法を解説します。
てんかんの予防
犬のてんかんは、遺伝的、家族的な要因で起こると考えられており、予防は困難です。症状の緩和のために、抗てんかん薬を投与します。
それ以外の病気の予防
代謝の異常に対しては、定期的な健康診断で早期発見して早期治療を行います。中毒は異物誤飲で起こる場合が多いため、犬が誤飲しないように注意しましょう。感染症はワクチン接種で予防可能です。犬の水頭症は予防が難しいため、利尿剤で症状を緩和します。脳の炎症や腫瘍も予防は難しいため、薬で症状を抑えます。
まとめ
犬のけいれんはさまざまな原因で起こりますが、どんなものでも見ていてとても痛々しく、獣医師にとってもつらいものです。病気によっては完全にけいれんを抑えることが難しいので、犬がけいれんを起こしたとき、適切に行動できるように普段から準備をしておきましょう。
犬の異常行動の関連記事
そのほか気になる犬の脳・神経系の病気については、獣医師監修の「犬の疾患 脳・神経系の病気」をご覧ください。
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- ブル・テリア
- ブルドッグ
- ブルマスティフ
- フレンチ・ブルドッグ
- ペキニーズ
- ベドリントン・テリア
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
- ボーダー・コリー
- ボーダー・テリア
- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
- ボクサー
- ボストン・テリア
- 北海道
- ポメラニアン
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
- ボルゾイ
- ボロニーズ
- ホワイト・シェパード・ドッグ
マ行
- マスティフ
- マルチーズ
- マンチェスター・テリア
- ミディアム・プードル
- ミニ・オーストラリアン・ブルドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・ピンシャー
- ミニチュア・プードル
- ミニチュア・ブル・テリア
ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。