犬ジステンパーウイルス感染症の症状と原因、治療法について

犬ジステンパーウイルス感染症の症状

犬の犬ジステンパーウイルス感染症の症状と原因

犬ジステンパーウイルス感染症は、パラミクソウイルス科モルビリウイルス属犬ジステンパーウイルスの感染によって引き起こされる犬の感染症です。また、感染力や致死率が非常に高く、感染すると50~90%の犬が命を落とすと言われています。

犬ジステンパーウイルスの潜伏期間は1~4週間以上と幅広く、軽症の場合は症状がほとんど現れないケースもあります。

呼吸器のリンパ組織で増殖した犬ジステンパーウイルスが全身に広がっていくと、発熱や鼻水、くしゃみなどの症状を引き起こします。感染から2週間後までに十分な免疫を獲得できれば、ほとんど症状が現れずに回復していきます。

ただし、免疫の成立の遅れや細菌の二次感染などが起こると、症状が悪化して、血が混じった下痢や嘔吐(おうと)などが見られる場合があります。さらに、犬ジステンパーウイルスが脳を始めとする中枢神経系にまで広がると、けいれんや震え、麻痺(まひ)などの激しい神経症状を起こして命を落とす可能性が高くなります。

急性の場合、以下のような症状が犬に現れます。様子を見ずに、早めに動物病院を受診しましょう。

  • 発熱
  • 食欲が低下する
  • 涙が多くなる
  • 鼻水が出る
  • 結膜炎が生じる
  • 下痢

急性では、感染してから数日~1週間で発熱が見られます。一度、熱が下がっても数日後に再度、発熱する二峰性(にほうせい:時間の経過に伴い、状態や数量の変化が2回の高まりをもつ様子)が特徴です。

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

犬ジステンパーウイルスが犬の脳に侵入すると、末期症状としてジステンパー脳炎を引き起こし、次のような脳神経症状が見られる場合があります。

  • けいれん
  • 震え
  • 歩行異常

脳神経症状が見られると予後は不良で、けいれんといった後遺症が残る可能性があります。また、致死率が高く、ワクチン未接種の若い犬の致死率は90%を超えると報告されています。

犬ジステンパーウイルス感染症の原因

犬ジステンパーウイルスは、感染動物との直接接触や排泄物(はいせつぶつ)・分泌物との接触、飛沫などが原因となって感染します。

例えば、感染している犬の鼻水や唾液、尿などから犬ジステンパーウイルスが排出されるため、ほかの犬がその排出物に接触した場合に感染します。また、感染している犬と同じ空間にいる場合には飛沫感染する可能性や、散歩中に感染している犬の尿を踏んだ愛犬が、自分の足をなめて感染する可能性もあります。

多頭飼育の場合は、1頭が感染するとまん延するおそれがあり、特に注意が必要です。

犬ジステンパーウイルス感染症にかかりやすい犬の特徴は?

ワクチン未接種の子犬は、犬ジステンパーウイルス感染症の感染リスクが高くなります。また、成犬でもワクチンを接種していない場合に、感染や重篤化のリスクがあります。

犬ジステンパーウイルス感染症の治療法

犬の犬ジステンパーウイルス感染症の治療法と予防法

検査内容

犬の全身の状態を確認し、原因となる病気を絞り込むための検査を行います。

血液検査

犬ジステンパーウイルス感染症にかかっていると、リンパ球と白血球の減少が見られます。細菌の二次感染がある場合は、白血球数が増加していることがあります。

レントゲン検査

呼吸器症状が出ている場合、胸部のレントゲン撮影を、血便や嘔吐などの消化器症状が出ている場合、腹部のレントゲン撮影をそれぞれ行います。

MRI検査

神経症状が犬に見られる場合、必要に応じてMRI検査で脳の状態を確認します。犬ジステンパーウイルス感染症を発症していると、脳の炎症や側脳室の拡大などが見られます。

ウイルス抗原、ウイルス遺伝子の検出

犬ジステンパーウイルス感染症の確定診断をするために行います。ウイルス抗原の検出には、結膜や扁頭(へんとう)、呼吸器の上皮、白血球、骨髄、尿などの標本を使います。ウイルス遺伝子の検出には、尿、便、呼吸器ぬぐい液、脳脊髄液を材料にし、PCR法を用います。

治療法

犬ジステンパーウイルス感染症に、直接、有効な治療薬は存在しません。治療の基本は、症状を緩和して自然治癒力を高める対症療法と、細菌による二次感染を防ぐための抗菌薬の投与です。

炎症反応が見られる場合

必要に応じてステロイド剤を犬に投与します。

肺炎が見られる場合

去痰剤(きょたんざい)や気管支拡張剤を使用します。

下痢や嘔吐が見られる場合

下痢止めや吐き気止め、点滴による水分補給を行います。

目やにや鼻水が出ている場合

目やにや鼻水をきれいに拭き取り、目薬といった抗菌薬を投与します。

無治療の場合

無治療で犬が重症化した場合、血が混じった下痢や嘔吐など重篤な消化器症状や肺炎を引き起こして亡くなる可能性があります。また、けいれん発作や震え、麻痺などの神経症状に移行した場合には、高い確率で命を落とします。そのため、重症化する前の早期発見、早期治療が大切です。

犬ジステンパーウイルス感染症の予防法

混合ワクチンの接種が、犬ジステンパーウイルス感染症の最大の予防法です。

混合ワクチンによる予防法

混合ワクチンは、生後2か月ごろから接種できます。最初の混合ワクチンを3~4週ごとに2~3回接種すると、しっかり免疫を獲得できます。その後は年1回の接種が基本です。

子犬の場合、散歩やほかの犬との接触を開始するのは、ワクチンを2~3回接種し終えて一週間くらいたってからにすると、犬ジステンパーウイルスの感染予防に有効です。愛犬が免疫を獲得できたかは抗体価検査で確認できるため、心配な場合は獣医師に相談しましょう。

2か月齢に満たない子犬の予防法

2か月齢に満たない子犬はワクチンによる予防ができないため、外に出す際には抱っこする、犬同士の接触を避けるなどの工夫が必要です。集団飼育している場合は、犬ジステンパーウイルスがまん延するおそれがあるため、特に注意しましょう。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。