犬の熱が高い、発熱の原因は?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月08日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬の体が何だか熱っぽい、熱がある原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

ちょっとした風邪かな、すぐ治るだろうと思っていたら、あっという間に病状が悪化し、取り返しのつかない事態になってしまうかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬の熱が高い、発熱する原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬の体温について

犬の平熱は?

―犬の平熱は何度くらいですか? 熱が高い、発熱と見なす目安を教えてください。

人間の平均的な平熱は36.5~37.2℃くらいですが、犬の平熱は人間よりも高く、38.0~39.0℃くらいが平均です。

体温が39.5℃以上なら高め、40.0℃を超えると発熱

ただし、犬の平熱は犬種や年齢などによって異なりますし、運動後や興奮しているときなどは体温が上がりやすくなっています。そのため、39.0℃より体温が高いからといって必ずしも発熱していると見なすわけではなく、一般的には39.5℃を超えると熱が高めとみなし、40.0℃を超えると発熱と見なします。

犬の体温の測り方

肛門に挿して直腸温を計測

―家庭で行う犬の熱の測り方を教えてください。

犬の場合は、一般的に体温計を肛門に挿して直腸温を測ります。

体温計は人間用のものを使用してもいいのですが、犬が動いてしまうと痛みを伴ったり、直腸を傷つけてしまったりすることがあります。そのため、家庭で犬の熱を測るときは、先がやわらかいペット用の体温計を使用するとより安心です。

犬の体温計測はふたりがかりで

体温を測るときは、ふたりがかりで測ることをお勧めします。やや高い台の上に犬を四つ足で立たせ、ひとりは犬の正面に立ち、頭をなででてあげたり、前足をつかんであげたりして、なるべく犬が動かないようにします。もうひとりは犬の後ろ側に立ち、体温計をアルコール消毒するか、使い捨ての専用カバーを装着し、オリーブオイルなどの食用油を塗ったら、利き手に体温計を持ちます。

次に、反対側の手で犬のしっぽを上に持ち上げ、肛門にゆっくりと体温計を3~5cmくらい挿入します。体温計の目盛りが動き出すのを確認したら、しっぽを下げ、体温計が抜けないように利き手でしっぽと体温計を一緒に持ちます。

体温計の測定部分にちょうどうんちがあったり、挿入が浅かったりすると、体温が低く出てしまうことがあるため、注意しましょう。

犬の熱の原因として考えられる病気とは?

犬の熱の原因として考えられる病気とは?

主な原因は、熱中症、感染症、悪性腫瘍、特発性多発性関節炎など

―犬の発熱の原因としてどんな病気が考えられますか?

犬の発熱の原因としては、熱中症、細菌やウイルスなどの感染症、悪性腫瘍、特発性多発性関節炎などさまざまな病気が考えられます。

熱中症

犬は体温調節が苦手で、地面に近い場所にいることなどから、熱中症になりやすい動物です。犬が熱中症になると、最初は、体温が上がる、呼吸数が速くなる、よだれが増えるなどの症状が見られます。犬の熱中症について獣医師が詳しく解説します。

そのままにしてしまうと嘔吐や下痢、ぐったりするなどの症状が見られるようになります。さらに、重度の場合には、意識がなくなる、けいれん発作を起こすなどして、最悪の場合は命にかかわることもあります。

感染症

ひとくちに感染症と言っても、さまざまな細菌やウイルス、寄生虫によるものがあります。例えば、以下に挙げるようなものです。

悪性腫瘍

犬は、リンパ腫や白血病、多発性骨髄腫、悪性組織球症などの悪性腫瘍ができると発熱することがあります。腫瘍の種類や腫瘍ができる部位などによって症状は異なりますが、どの腫瘍にも共通して、発熱以外にも体重の減少や元気・食欲の低下などの症状が見られます。以下に、犬の悪性腫瘍やリンパ腫について獣医師が解説しています。

特発性多発性関節炎

犬の不明熱(発熱の原因が不明である疾患)の原因として最も多いのが、この「特発性多発性関節炎」です。関節に炎症が起こるため、発熱以外にも足の痛みから跛行(はこう:正常な歩行ができない状態)や元気・食欲の低下などの症状が見られることがあります。

犬が発熱すると見られるサインとは?

―私たち人間は、頭がぼうっとしたり、体がだるくなったりして、熱っぽく感じますが、犬の場合は、どんな症状、様子の変化が見られるのでしょうか?

私たち人間と共通するのですが、体が熱い、元気や食欲がなくなる、ぐったりする、呼吸が速いなどの症状が見られます。

犬の熱で、こんな症状ならすぐ病院へ

犬の熱で、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない犬の熱の症状

―人間の場合は、多少熱があっても様子を見ることがありますが、犬の場合はどうでしょうか。

運動後のような一時的に体温が上がっている場合や、40℃を下回っていて発熱以外に特に症状が見られない場合にはあまり心配はありません。ゆっくり犬を休ませて様子を見てください。

受診を強く勧める犬の発熱の症状

体温が40℃を超えていたら、すぐ病院へ

―受診すべき発熱の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

犬は「恒温動物」といって、環境の温度にかかわらず、体温調節をして常に一定の体温を保つことで生命を維持しています。しかし、体温が41℃を超えると脳に障害が起こって意識がなくなり、42℃を超えた状態が続くと多臓器不全を起こして死に至ります。

このことから、体温が40℃を超えた場合は、すみやかに動物病院を受診するようにしてください。

また、先ほど紹介した病気の中でも、熱中症や子宮蓄膿症、犬パルボウイルス感染症は病態の進行が早く、すぐに処置をしなければ重度の脱水やショック症状などを起こし、死に至る危険性のある病気です。

これらのほか、下記に挙げるような症状が見られる場合も様子は見ずに、すぐに動物病院を受診するようにしてください。

受診前にすべきこと

―受診前にどんな準備をしておけばいいですか?

特に、先ほど紹介した熱中症や子宮蓄膿症、犬パルボウイルス感染症は一刻を争います。そのため、動物病院に到着したら、すみやかに治療を受けられるように、あらかじめ動物病院に電話で連絡を入れておくようにしてください。

犬の発熱の対処法

犬の発熱の対処法

―応急処置として熱の下げ方を教えてください。

とにかく体を冷やすことが大切です。脇やうち太もも部分には太い血管があるので、保冷剤や凍らせたペットボトルをタオルで包んだものを脇や股に挟みながら、動物病院へ向かいましょう。

―ネットでは、水分補給のためポカリ(ポカリスエット)のようなスポーツドリンクを飲ませるという記事がありますが?

発熱していて下痢が続き、脱水が疑われる場合には人間用のスポーツドリンクを与えても特に問題はありません。スポーツドリンクは、水よりも甘いため、犬が水分をとれないような状態でも比較的口にしやすいと思います。

ただし、人間用のスポーツドリンクには糖分が多く含まれているため、緊急時以外には犬に与えないようにしましょう。また、キシリトール入りのものは、犬が中毒を起こす危険性があるため、絶対に与えないでください。

また、ポカリスエットを販売している大塚グループの会社から、ペット用のスポーツドリンクも販売されています。カロリーが控えめで犬でも飲みやすいヨーグルト風味になっているので、万が一のときのために常備しておくといいかもしれません。

まとめ

私たち人間の場合は「発熱=風邪」というイメージが強いのですが、犬の発熱はさまざまな病気のバロメーターとなります。中にはすぐに対処をしないと命にかかわるような病気があるため、日ごろから体温を測る習慣をつけておくと、早期発見に役立ちます。犬の体温は自宅でも簡単に測れますので、今日からでもぜひ実践してみてください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。