犬が太る、肥満になる原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月27日

愛犬かわいさに、おやつをついつい与え、食べ過ぎで太らせてしまうことがあるかもしれません。あるいは何らかの病気が原因で、太ることもあります。その病気とは、どんなものでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

人間同様、犬にとっても肥満は多くの病気の要因になります。太る原因が、食べ過ぎや運動不足であれば、それらの解消を。そのほか、気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬が太る、肥満になる原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬が太る原因とは?

うちの子、太ってきたのかな?

―犬種や性差、体格によって違いがあるかと思いますが、犬の標準体型とはどのようなものでしょうか? また、どの程度になると太り気味と言えるのでしょうか。

犬には、さまざまな種類があるように標準体型も1頭1頭異なります。そのため、犬の標準体型を判断する指標として、ボディ・コンディション・スコア(Body Condition Score:BCS)というものがあります。スコアは5段階評価で、理想的な体型である標準体型をBCS 3とし、スコアが少なくなるほど痩せ気味、スコアが高くなるほど太り気味となります。

以下に、BCS 1~5を判断する体型の目安を示します。
*出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」

ボディ・コンディション・スコア(BCS)

  • BCS 1(痩せ):肋骨、腰椎、骨盤が外から容易に見える。触っても脂肪が分からない。腰のくびれと腹部の吊り上がりが顕著。
  • BCS 2(やや痩せ):肋骨が容易に触る。上から見て腰のくびれは顕著で、腹部の吊り上がりも明瞭。
  • BCS 3(理想的):過剰な脂肪の沈着なしに、肋骨が触れる。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれが見られる。横から見て腹部の吊り上がりが見られる。
  • BCS 4(やや肥満):脂肪の沈着はやや多いが、肋骨は触れる。上から見て腰のくびれは見られるが、顕著ではない。腹部の吊り上がりはやや見られる。
  • BCS 5(肥満):厚い脂肪におおわれて肋骨が容易に触れない。腰椎や尾根部にも脂肪が沈着。腰のくびれはないか、ほとんど見られない。腹部の吊り上がりは見られないか、むしろ垂れ下がっている。

このBCSを参考にすれば、BCS 4~5の体型が肥満傾向であることがわかり、愛犬が太り気味と判断することが容易になります。

犬はなぜ太るのか?

犬はなぜ太るのか?犬の肥満の原因を解説

―犬が太る原因について教えてください。

犬の体重が増加し太ってしまうのは、通常、食事による摂取カロリーが運動を始めとする消費カロリーを上回っている場合であると考えられます。具体的には以下に挙げる項目が原因になっています。

犬の運動不足

一日2~3食をしっかり与え、おやつも食べさせているにもかかわらず、愛犬が歩きたがらないからといってまったく散歩をさせなかったり、中型から大型犬であれば散歩時間が5~10分程度とかなり少なかったりすると運動不足になります。また、犬は太れば太るほど体が重くなって歩きたがらなくなるため、運動不足がさらにひどくなってしまいます。

高カロリーな食事によるもの

適度に散歩や運動をさせているにもかかわらず、犬が太ってしまう原因として、食事内容が高カロリーである可能性が考えられます。脂質や糖質の多い食べ物が主体だと太りやすくなります。例えば、脂肪の多い肉や糖質の多いパンがそれに当たります。また、犬はカボチャやサツマイモを喜んで食べますが、これらも糖質が比較的多い食べ物です。

ドッグフードの与えすぎ

栄養バランスの取れたドッグフードも、与えすぎると犬は太ってしまいます。特に、ドライフードは乾燥して粒も小さいことから、そのフードの給餌量から適正な量を判断しておかないと、ついつい多く与えてしまうので注意が必要です。

おやつの与えすぎ

犬は、ご褒美としておやつをもらえると、その後、何回もねだって欲しがります。しかし、飼い主が愛犬からねだられるままにおやつを与えてしまうと、それが毎日少しずつであっても、摂取カロリーが消費カロリーをオーバーして犬は太ってしまうのです。

犬の去勢・避妊手術

犬は去勢や避妊手術によって性ホルモンの影響を受けなくなります。このことから基礎代謝が下がり、手術後は食事量や運動量を変えないと、犬は自然と太りやすくなります。

また、これらのほかに病気を原因として、犬が太る、肥満になる場合があります。

犬が肥満になる原因として考えられる病気とは?

犬が肥満になる原因として考えられる病気とは?

―犬が太る原因としてどんな病気が考えられますか?

病気が原因で犬が太るのは、急激に太る場合に多く見られます。特に、7~8歳以上の高齢犬が急に太るときには、以下のような病気が考えられ、注意が必要です。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)とは、副腎と呼ばれる臓器から出るホルモン物質が過剰に分泌される病気で、犬のお腹が張り、たるんだような体型になります。症状としては、多飲多尿、毛が抜けて薄くなる、足腰が弱くなるなどが見られます。

甲状腺機能低下症

犬が甲状腺機能低下症になると、急に太って動きが鈍くなり、活発さがなくなります。また、毛が抜けて皮膚が見えるようになるのも特徴です。

肝臓疾患

肝機能に異常が出て肝臓が肥大すると、お腹が膨らんだようになります。また、病気が進行して肝不全を起こすと腹水が貯まり、太ったかのようにお腹が膨らみます。この場合、体が消耗しているにもかかわらず、腹水によって体重が増えることがあります。

循環器疾患

主に心臓病によって腹水がたまり、お腹が張って太ったように見えることがあります。

犬が太ってきた、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない場合

―どの程度の太り具体であれば、様子を見てもいいですか?

BCS4程度のやや肥満で、元気や食欲に問題がなければ様子を見てもいいでしょう。また、去勢や避妊後1~2年かけて徐々に増えていたり、明らかにおやつの与えすぎだったりと、原因がある程度考えられるのであれば問題ないと思われます。

食事やおやつの量を見直して、それによって体重が減少するかをよく確認しましょう。

受診を強く勧める場合

―受診すべき肥満の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

動物病院を受診すべき犬の肥満は、以下のような症状が同時に見られる場合です。

  • 食欲が低下しているのに体重が増えたり、太ったように見えたりする
  • いつもどおりの食事量なのに急に太った
  • 元気がない、動きが鈍い
  • 毛が抜けて薄くなり、毛の艶がなくなった
  • 多飲多尿(水をたくさん飲んでおしっこの量も多い)

犬にこれらの症状が見られるときには、クッシング症候群や甲状腺機能低下症といった内分泌疾患が疑われます。また、食欲が低下しているのに、お腹周りだけが急に太って見えるようになった場合には、腹水がたまる肝臓疾患や循環器疾患、腫瘍なども考えられます。

これらの疾患を放置しておくと、死亡する危険性が高まるだけでなく、治療が困難になっていきますので、早めの受診をお勧めします。

犬の肥満の対処法

犬の肥満の対処法

―犬が太り気味になったら、どう対処すればいいのでしょうか?

食べ過ぎの場合

食べすぎによる肥満であれば、体重を極力減らすようにしましょう。

愛犬は急に食べ物を減らされると、ご飯が足りないとアピールし、食べ物を欲しがります。そのため、減らす量はいきなり多くではなく、1割減程度にとどめたり、ドッグフードの一部を低カロリーの野菜や、おからなどに置き換えたりするといいでしょう。

病気が原因の場合

普段から愛犬の適正体重やBCSを把握しておくと、そこから短期間で急に外れた場合に異常であると判断しやすくなります。また、体重が増えたにもかかわらず、元気や食欲がなくなったり、毛艶といった見た目の変化が現れたりした場合も病院を受診したほうがいいでしょう。

犬の肥満を予防にするには?

愛犬の適正体重を把握し、適度な食事と運動を

―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

まずは、愛犬の適正体重を把握することが大切です。一般に1歳になった時の体重が適正体重だと言われています。そして、食事の量は、ドライフードであれば、理想とする適正体重から計算して与えるようにしてください。増えつつある体重のままで量を計算していると、ますます体重が増えてしまいます。

また、犬の食事回数は一日一食よりも二回に分けて食べさせると消化が良くなり、お勧めです。もちろん、食事だけでなく朝晩の適度な散歩や運動も大切です。

まとめ

犬は一旦肥満になると、減量させることが難しくなります。そうなる前に、肥満予防を意識して、お伝えしたことを実践すれば、きっと適正体重を維持できるはずです。

また、肥満と言っても病気が原因で太ることもあるので注意が必要です。愛犬の体重が急に増えた場合は、様子を見ずに獣医師に相談したほうがいいでしょう。

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。