犬の脱水症状の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
犬が脱水を起こす原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。
脱水は犬の臓器に悪い影響を及ぼします。迅速かつ適切な処置を施さないと、命にかかわる事態に陥ってしまうかもしれません。犬が脱水症状を起こしたら、自宅でしばらく様子を見ようとせず、すぐに動物病院を受診してください。
- 犬の脱水症状とは?
- 家庭内でできる犬の脱水症状の見分け方
- 犬の脱水症状の原因として考えられる病気とは?
- 犬が脱水症状を起こしたときの対処法と応急処置
- 犬が脱水症状を起こしたら、すぐに病院へ
- 犬の脱水症状を予防するには?
- まとめ
犬の脱水症状とは?
犬の脱水症状が起こる体内メカニズム
―犬の脱水症状について教えてください。
犬の脱水症状とは、犬の健康維持に必要な水分が体内から過剰に失われて起こる症状のことです。犬の体の水分は、尿や便を始めとして皮膚や口などからも常に失われていますが、犬はその失われた水分を都度摂取して健康を保っています。しかし、季節、環境、年齢、病気などが引き金となって水分が過剰に失われてしまうと、脱水症状が出現するのです。
犬の脱水は、夏だけでなく一年中起こりうる
―犬が脱水症状を起こすのは、真夏だけとは限らないのですか?
確かに真夏の熱中症による犬の脱水は珍しくありませんが、脱水そのものは一年中いつでも起こります。むしろ夏は、熱中症の状態にならないように飼い主さんの多くが注意し、犬自身も水分を多く摂取する傾向にあるため、脱水が予防されやすい季節とも言えます。
一方で、秋から冬の寒い時期には、犬が水分をあまり取らなくなることに加えて、暖房の効いた部屋やこたつの中で長時間過ごすため、脱水しやすくなるのです。また、春から初夏にかけても、気温の急上昇に犬の体がまだ慣れていないので、脱水が起こりやすい傾向にあります。
犬の脱水時に見られる症状
- 食欲が落ちている
- 元気が落ちている
- 吐いている
- 下痢をしている
- 舌を出してハァハァと息をすることが続く
- いつもより皮膚に弾力がない
- おしっこが濃く、少ない
家庭でできる犬の脱水症状の見分け方
―自宅でできる犬の脱水症状の見分け方について教えてください。
皮膚つまみ試験を行う
愛犬の背中や腰の皮膚をつまんでから離します。そして、離してから元の状態に戻るまでの時間を計測します。 これを皮膚つまみ試験(ツルゴールテスト)と呼びます。
2秒以内に戻る状態が正常の目安とされており、それ以上かかる場合には、やや強い脱水を疑います。ただし、年齢や体格、皮膚をつまむ場所によって時間が変わりますので、あらかじめ愛犬が元気な時に皮膚をつまみ、戻るまでの時間を計測しておくといいでしょう。これによって脱水が心配なときに、正常時と比較して1秒でも長くなっていれば、明らかに脱水していると判断できます。
犬の水を飲む量が増える
犬が脱水を起こし始めると、通常、水分を多く飲むようになります。愛犬の給水ボトルを交換するとき、水の残りがいつもより少ない場合には、脱水を起こし始めている可能性があります。
犬のおしっこが少なく、色が濃い
脱水が起きると、体から水分が余計に失われないように尿の量が少なくなり、濃くなります。ペットシーツを確認すると染みている愛犬の尿が普段より少なく、濃い場合には、脱水が起こっている可能性があります。
犬の体重が急に減少
通常、犬が痩せるには時間がかかりますが、脱水時には急激に体重が減ります。これまでの愛犬の体重と比較して、1日で急に減少した場合には脱水が強く疑われます。
犬の脱水症状の原因として考えられる病気とは?
―犬の脱水症状の原因として、どんなものが考えられますか?
次の病気が犬の脱水症状の原因として挙げられます。
- 熱中症
犬の体が高温にさらされると、体内の水分が体外へ過剰に失われます。犬の熱中症について詳しく - 糖尿病
尿が必要以上に多く出てしまい、脱水が進行します。犬の糖尿病について詳しく - 慢性腎臓病
食欲が落ち、尿が必要以上に多く出てしまい、脱水が起こります。 - 副腎皮質機能低下症
副腎皮質機能低下症(アジソン病)によって水分維持に必要なホルモンが低下し、尿が必要以上に多く出てしまい、脱水します。 - 下痢や嘔吐
犬は下痢や嘔吐を起こすと、体内の水分が過剰に失われてしまい、どんな原因でも脱水につながります。
また、これらのほかに胃腸炎、急性膵炎、腎臓病、腫瘍、異物摂取、熱中症など多くの疾患から犬の脱水が起こります。
犬が脱水症状を起こしたときの対処法と応急処置
口から水分を取らせ、様子を見ずに動物病院へ
―愛犬が脱水症状を起こした場合、自宅でできる応急処置について教えてください。
応急処置としては、水分を口から摂取させることです。愛犬が自分で飲むことができる場合には飲水容器から与え、飲めない場合はスポイトのようなものを使って少しずつ与えてください。
ただし、そのまま経過観察をすることは危険です。脱水症状を起こしているときには、ほとんどの場合、口からの水分摂取だけでは不十分です。応急処置ができた、できなかったにかかわらず、迷わず動物病院を受診し、脱水有無の検査や治療を受けてください。
薄めたスポーツドリンクを与えても可
―犬に脱水症状が見られたら、ポカリスエットのようなスポーツドリンクを与えると良いという話を聞いたことがあるのですが。
一般的には水を与えて水分補給をすることが一番安全ですが、ポカリスエットのような人間用のスポーツドリンクの使用も可能です。ただし、日常的に与えていると塩分や糖分が過多になるおそれがありますので、継続的に使う場合には、水で薄めて使用しましょう。一方で、スポーツドリンクを与えた後に下痢を起こしやすい子には、市販の犬用の経口補水液や、あらかじめ体に合うものを探しておいて、与えるといいでしょう。
愛犬が水を飲まないときの対処法
―愛犬が水を飲んでくれないときは、どうしたらいいですか?
下記に挙げる方法を試してみてください。
- 毎日の食事に水分を多めに混ぜる
- 新鮮な水に交換する
- スポイトで水分をこまめに与える
- 給水容器の形状や場所を変えて水を飲みやすくする
また、ポカリスエットのようなスポーツドリンクや、鶏のささみの煮汁を水や食事に加えるなど、風味を変えて水分の摂取を刺激する方法もいいでしょう。
下痢や嘔吐をしていたら、すぐに受診を
―愛犬が下痢や嘔吐でぐったりしていたら、できるだけ水分を取らせたほうがいいのですか?
愛犬が下痢や嘔吐を起こしているときに、無理に水分をとらせると症状が悪化してしまう場合があります。また、ぐったりしているときには、どんな原因であっても脱水がかなり進んでいることも想像されます。
ご自宅で時間をかけて愛犬に水分を取らせることよりも、できる限り早くに動物病院を受診することをお勧めします。
犬が脱水症状を起こしたら、すぐに病院へ
脱水は適切な処置が遅れると犬の命にかかわる
―脱水症状で、危険な状態について教えてください。
どんな原因であっても、脱水は体のすべての臓器に悪い影響を及ぼします。特に、以下のような状態のときには、命にかかわるレベルで脱水を起こしている可能性がありますので、すぐに動物病院を受診してください。
- 立てない
- 歩けない
- 体が熱い
- 体が冷たい
- 呼吸が荒い
- 体の一部、または全身がけいれんしている
- 声かけへの反応が遅い、または反応がない
- おしっこがかなり少ない、または1日以上出ていない
- 血の混じった嘔吐や下痢をしている
―愛犬が脱水症状を起こしたら、とにかく急いで病院に連れて行かなければいけないのですね。
そのとおりです。脱水に対して適切な処置が遅れてしまうと、命にかかわる場合があります。また、たとえ治療によって状態が良くなったとしても、全身の臓器に不可逆的(元に戻らない)なダメージが残ってしまう場合があります。できるだけ早く、動物病院を受診してください。
犬の脱水症状を予防するには?
いつでも愛犬が水分補給をできるように。また、水分を含んだフードを与える
―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。
愛犬の脱水を予防するために、いつでも水分を摂取できる環境にしておくことが大切です。自宅では、給水容器が一日を通じて空にならないように、そして、愛犬と一緒に外に出るときには携帯型の給水容器を持っていきましょう。
また、寒い季節や高齢犬では、自分から十分に水分を摂取しないので、無自覚に脱水してしまうことがあります。こうした状態を予防するために、毎日のドライフードに水分を混ぜる、ウエットフードを使うなどの手段も有効です。
まとめ
どんな原因でも、脱水は命にかかわることがある危険な状態です。そして、犬は、多くの場合、脱水が一定程度進行してからでないと症状が現れません。愛犬の脱水が疑われたときには、迷わず動物病院を受診してください。
犬の全身的な症状の関連記事
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- ブル・テリア
- ブルドッグ
- ブルマスティフ
- フレンチ・ブルドッグ
- ペキニーズ
- ベドリントン・テリア
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
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- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
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- 北海道
- ポメラニアン
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
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マ行
- マスティフ
- マルチーズ
- マンチェスター・テリア
- ミディアム・プードル
- ミニ・オーストラリアン・ブルドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・ピンシャー
- ミニチュア・プードル
- ミニチュア・ブル・テリア
ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。