犬がおしっこをしない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月08日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬がおしっこをしない、トイレには行くけど何もしないで戻って来てしまう、そんな行動の背景には、どんな原因や病気があるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

そのうち治るだろうと様子を見ていたら、急激に病状が悪化し、取り返しのつかない事態に陥ってしまうかもしれません。愛犬に気になる様子が見られれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬がおしっこをしない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬のおしっこについて

犬のおしっこは回数よりも量の減少が注意

―犬のおしっこは一日何回くらいが適切ですか?

犬のおしっこの回数には個体差がありますが、一般的には子犬で一日あたり7~10回、成犬で3~5回、老犬で5~6回くらいだと言われています。

―犬のおしっこは、一日に最低、何回以上出ないと注意が必要ですか?

犬のおしっこの回数について、これくらいまで減ったら注意が必要という基準はありません。犬にとって、おしっこの回数よりもおしっこの量が減ることのほうが注意が必要です。

犬が一日に出す、おしっこの量は健康体の場合、体重1キログラムあたり20~45ミリリットルです。しかし、犬のおしっこの量が体重1キログラムあたり7ミリリットル以下になると「乏尿」、2ミリリットル以下になると「無尿」と呼ばれ、何かしらの病気にかかっている可能性が考えられます。

病気が疑われる犬のおしっこの量(体重1キログラムあたり)

  • 7ミリリットル以下になると乏尿
  • 2ミリリットル以下になると無尿(病気の可能性)

犬がおしっこをしない原因として考えられる病気とは?

犬がおしっこをしない原因として考えられる病気とは?

犬の尿量が少ない、おしっこをしない場合、尿路結石症や膀胱炎、前立腺肥大、慢性腎臓病など、さまざまな病気が考えられます。

尿路結石症

尿路結石症は名前のとおり、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に結石ができる病気です。細菌感染や食事、ストレスなどが原因で起こり、メス犬によく見られます。犬に次のような症状が見られます。また、犬の体内にできた結石が尿路を塞ぐと、おしっこがまったく出なくなってしまい、重篤な事態に陥る危険性があります。

  • 血尿
  • 頻尿
  • 排尿痛(おしっこをするときに痛みから鳴くことが多い)

膀胱炎

膀胱炎は、細菌感染や膀胱結石、膀胱腫瘍などが原因で膀胱に炎症が起る病気で、細菌感染による膀胱炎は尿道が短いメス犬に、膀胱腫瘍は高齢犬のメスに多く見られます。犬が膀胱炎になると、主な症状として頻尿や血尿などが見られますが、残尿感があるため何度もトイレに行くのに、おしっこが出ない場合もあります。また、犬の体内にできた膀胱結石や膀胱腫瘍が尿路を塞いでしまうと、おしっこが出なくなる可能性もあります。

詳しくは、「犬のおしっこに血が混じる(血尿)」を併せてご覧ください。

前立腺肥大

前立腺肥大は、精巣から分泌されるホルモンのアンバランスが原因で前立腺が良性に肥大する病気で、去勢手術をしていない中~高齢犬のオス犬によく見られます。最初のうちは無症状の場合が多いのですが、犬の前立腺が大きくなると尿道や腸を圧迫するため、おしっこやうんちが出にくくなります。

慢性腎臓病

慢性腎臓病は高齢犬に多く見られ、数か月~数年かけて徐々に腎臓の機能が低下していきます。犬の慢性腎臓病は、最初期に無症状の場合が多いのですが、腎機能の低下に伴い、多飲多尿(水をたくさん飲んでおしっこをたくさんする)の症状が見られるようになります。さらに犬の腎臓の機能が低下して末期になると、逆に犬はまったくおしっこを排泄できなくなるため、尿毒症を引き起こすおそれもあります。

尿毒症になると犬に嘔吐や元気消沈、食欲の低下などの症状が見られるようになります。進行して重度の場合、けいれんといった神経症状が現れ、最悪の場合、死に至る危険性があります。

犬の慢性腎臓病に見られる症状

犬がおしっこをしない、こんな症状ならすぐ病院へ

犬がおしっこをしない、こんな症状ならすぐ病院へ

愛犬から期間として丸1日まったくおしっこが出ていない、もしくは少量しかでていない場合は、様子を見ずに、すぐに動物病院を受診してください。

犬がおしっこをしない場合、受診を強く勧めるチェックポイント

次のような症状が愛犬に見られる場合は、先ほど紹介した尿路結石症や膀胱炎、前立腺肥大などを引き起こしている可能性があります。

  • 何度もトイレに行くけれどおしっこが出ない
  • 血尿が見られる
  • おしっこにキラキラしたものや石のようなもの(結石)が混じっている

また、犬がこれらの病気にかかると尿路が閉塞され、おしっこがまったく出ない状態が続くと、急性腎障害を引き起こすおそれがあります。犬が急性腎障害になると、本来、尿と一緒に排泄されるはずの老廃物や毒素が犬の体内にたまり、尿毒症を引き起こします。そして、尿毒症は犬の命にかかわる深刻な事態を引き起こします。そのため、愛犬のおしっこの状態や回数、量などがいつもと違うという場合は、すぐに動物病院を受診してください。

犬がおしっこをしない場合の対処法

自宅で様子を見ずに、すぐに動物病院を受診しましょう

犬がおしっこをしない、トイレに行ってもおしっこを出しづらそうにしているという場合は、自宅で何か対処をするよりも、すぐに動物病院を受診してください

繰り返しになりますが、犬のおしっこが完全に出ない状態が続くのは非常に危険です。もし勘違いだったらどうしようと思う必要はまったくありませんので、まずは動物病院で尿検査を受けましょう。

犬の排尿障害を予防にするには?

犬がおしっこをしない場合の対処法

犬がおしっこを出しやすい環境や適切な食生活を

犬の尿路結石症や膀胱炎の予防

尿路結石症や膀胱炎は、犬のおしっこが膀胱に長くとどまることで起こりやすくなります。そのため、愛犬がおしっこを我慢しなくていいように、外でしかおしっこができない場合は、こまめに外に連れ出してください。愛犬がトイレでおしっこをする場合は、常にトイレを清潔に保ちましょう。

また、犬が飲む水の量にも注意が必要です。愛犬に適度に運動をさせて飲水量を増やしたり、冬場のように気温が下がってどうしても飲水量が減ってしまうときは、ウェットフードを与えたりするのも有効です。また、尿路結石は尿中のミネラルが結晶化したものなので、ミネラルバランスのとれた食事を愛犬に取らせることも大切です。愛犬に特別なフードを与える必要はありませんが、人間の食べ物を与えないようにする、犬用のおやつを与えすぎないようにするなどを心がけましょう。

オス犬の前立腺肥大には去勢手術によって予防を

オス犬の前立腺肥大は去勢手術によって予防できます。これは高齢犬に多い病気ですが、中には3歳くらいで発症するケースもあります。生後6か月齢ころからオス犬は去勢手術ができるので、将来、愛犬に繁殖の予定がなければ、早めに去勢手術を受けるようにしましょう。

まとめ

犬のおしっこの変化は、食欲やうんちなどの変化と比べると見逃されがちですが、愛犬の健康状態を知る重要なバロメーターと言えます。

特に愛犬のおしっこが出ない、血尿が出る、おしっこにキラキラしたものが混じっている場合は、病気が原因であることが多く、すぐに動物病院を受診して治療をする必要があります。排尿障害を始め、病気の早期発見・早期治療のためにも、日ごろから愛犬のおしっこの回数や量、色、匂いなど排尿状態を観察し、おしっこのちょっとした変化を見逃さないようにしましょう。

犬のおしっこに関連する関連記事

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。