犬の血尿の原因とは?気になる病気と治療法を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
犬の血尿、おしっこに血が混じって赤い原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。詳しい症状や治療法、飼い主さんが心がけたいことなどを獣医師さんに伺ってみました。
人も犬もおしっこは健康のバロメーターです。トイレシートにポタポタと赤いものがある、犬のおしっこが何となく赤っぽいといった症状があったら、何かの病気のサインかもしれません。すぐに獣医師さんに相談しましょう。
犬の血尿について
血尿とは、文字どおりおしっこの中に血が混じっている状態ですが、その色合いは、赤色、赤褐色、オレンジ色、ピンク色などさまざまです。また、血尿は、尿を作る腎臓から尿管、膀胱、尿道へと続くに泌尿器のいずれかの場所で出血したことを表し、色の変化は出血した箇所と程度によって引き起こされます。
犬の血尿の原因が発情期出血による場合は治療の必要なし
避妊手術をしていないメス犬の場合は、単なる発情期の出血がおしっこに混じって血尿と勘違いした可能性があります。発情期には陰部が腫れ、いつもどおり元気がある場合もあれば、元気がない、食欲不振、落ち着きがなくなるなどの症状が見られることもありますが、基本的には治療の必要はありません。
犬の血尿の原因として考えられる病気とは?
膀胱炎
犬の膀胱炎はオスよりメスでよく見られ、細菌感染や外傷、ストレスなどが原因で起こります。犬が膀胱炎になると、元気や食欲はあるものの、血尿や頻尿、排尿困難などの症状が見られます。
細菌感染による膀胱炎の治療は、2~3週間程度の抗生物質と消炎剤の投与を行います。治療せず放置すると、非常に危険な状態に陥るおそれがありま。愛犬に膀胱炎が疑われる場合は、すぐに適切な治療を始めなくてはなりません。
尿路結石症
犬の尿路結石症はメスによく見られ、細菌感染や食事のアンバランス、ストレス、犬種(ミニチュア・シュナウザーやシー・ズーなどの犬種でよく起こる)などが原因で発症します。
尿路結石症の症状は、血尿や頻尿、排尿痛などで、膀胱炎とあまり変わりありませんが、結石が詰まって尿道閉塞を起こすと重症化するおそれがあります。病院ではレントゲン検査や超音波検査を行い、結石の有無を確認します。
治療方法は結石の種類により異なりますが、療法食による食事療法や止血剤などの投与のほか、手術で結石を取り除く場合があります。
膀胱腫瘍
膀胱腫瘍もメスの高齢犬に多く見られ、そのほとんどが「移行上皮癌」という悪性の腫瘍です。症状は、血尿や頻尿、排尿困難など膀胱炎とほぼ同じで、膀胱炎の治療を行うと一時的に症状が良くなる場合があります。
そのため、膀胱腫瘍だと気付かずに治療が遅れ、症状が進むとリンパ節や肺に転移し、腫瘍によって尿路が塞がれて急性腎不全を発症するおそれがあります。
治療方法は、抗がん剤の投与や放射線治療のほか、手術による膀胱摘出です。
前立腺疾患
前立腺はオスにだけ見られる腺で、膀胱の後ろで尿道を取り囲むように位置しており、精液の一部を作る働きがあります。前立腺の病気には、前立腺肥大や前立腺炎、前立腺腫瘍などがあります。
前立腺肥大
前立腺肥大は、加齢性の変化で男性ホルモンのアンバランスによって起こります。犬の元気はなくなりませんが、血尿や排便困難などの症状が見られます。肥大した前立腺によって犬の尿道が塞がると、おしっこが出なくなって重症化する危険性があるため、去勢手術やホルモン剤の投与などの治療を行います。
前立腺炎
前立腺炎は、細菌感染によって発症し、血尿や膿が混じった白っぽいおしっこが出ます。治療は抗生物質の投与を犬に行い、再発防止のために去勢手術を行う場合があります。
前立腺腫瘍
まれではありますが、高齢犬には前立腺腫瘍の発生が見られ、ほとんどの場合、悪性であることがわかっています。
急性腎不全
急性腎不全でも犬が血尿を出す場合があります。急性腎不全は、膀胱腫瘍のほかにも、心疾患や薬・重金属などによる中毒、尿路結石症による尿路の閉塞などが原因で発症します。こちらは、オス犬・メス犬関係なく見られます。
血尿のほかにも、次のような症状が見られます。
- 元気がない
- 食欲不振
- 嘔吐
- 乏尿(ぼうにょう:尿量が減少していること)・無尿など
治療が遅れてしまうと命にかかわる危険性があります。
血尿と勘違いしやすい犬の病気
子宮蓄膿症
避妊手術をしていないメスの老犬の場合には、子宮蓄膿症を発症する可能性があります。子宮蓄膿症にかかると、嘔吐や元気がない、食欲不振、多飲多尿などの症状が見られます。
このほか、血の塊が混じった膿がメス犬の陰部から出てくることがあり、これを血尿と見間違えてしまう場合があるのです。子宮蓄膿症は命にかかわる危険な病気であるため、すぐに手術をしなければなりません。
ネギ中毒による血色素尿
犬がネギ類を誤食して中毒を引き起こされると、血液中の赤血球が破壊されます。これにより赤色の色素(血色素)が尿に混ざると血色素尿となり、血尿のように赤やピンク、茶色がかって見える場合があります。犬のネギ中毒は、重症化するおそれがありますので注意しましょう。
まとめ
犬の血尿は、メス犬の発情期に見られる出血がおしっこに混じってしまった場合を除き、子宮蓄膿症、膀胱炎、膀胱腫瘍、前立腺の病気、急性腎不全など、発見や治療の遅れによって命にかかわる重篤な状態に陥る可能性があります。
早期発見のために愛犬の定期的な健診と、疑わしい症状を見つけたら早期治療が行いましょう。
犬の尿道からの排出物の関連記事
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
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マ行
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- ミニチュア・ピンシャー
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ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。