犬の生理と出血で考えられる病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬の生理は、子供を産むために必要な体づくりの現象のひとつです。とは言え、人間のそれとは似て非なるものであり、愛犬の身体的変化や行動の変化に驚いてしまうかもしれません。そこで、ここでは犬の生理の仕組みや発情期について解説します。

また、生理のように陰部からの出血が、実は病気を原因とする場合があります。これについて、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

犬の生理と出血で考えられる病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬の生理とは?

犬の生理の仕組み

犬も人間と同じように、メスにおいて定期的な周期で妊娠できる体になるための準備が整われます。メス犬ではこの準備が整った証として生理が現れ、この生理が始まってからおよそ1か月の期間を一般的に発情期と呼んでいます。発情期であるということを意味するために、犬の生理は「ヒート」とも言われています。

犬の生理というのは、陰部から出血するという見た目において人間と似た状態になりますが、その出血の仕組みについては人間と大きく異なる点があります。

メス犬では個体差はあるものの6~10か月に一度、発情期が訪れます。発情期に差しかかったメス犬の陰部からは出血が一定期間見られ、出血が終わろうとする時期にメス犬は排卵します。そのため、メス犬にとってこの時期が最も妊娠しやすいタイミングなのです。メス犬が妊娠しなければ、無発情期(次の発情期が来るまで妊娠できなくなる期間)になります。メス犬のこうしたサイクルを「発情周期」と呼んでいます。

メス犬では、妊娠するための体の準備として、子宮に血液が集まって充血したような状態となり、それが生理のような出血として現れます。一方、人間の生理というのは妊娠しなかった場合に、その結果として子宮内膜が剥がれ落ちることで出血が見られます。

このように、犬と人間では仕組み自体が異なっているために、同じ表現として生理とは言っても、似て非なる現象なのです。そういった理由からもメス犬の場合は、出血を含めた発情期全体を指す言葉としてヒートと言ったほうがいいのかもしれません。

犬の初回発情は生後6~10か月齢ごろ。生理は一生続く

メス犬に初めて生理が見られる時期(初回発情)は犬種によって差はありますが、生後6~10か月齢ごろです。大型犬のほうが生理の始まる月齢が遅い傾向にあります。メス犬に初回発情が見られれば性成熟に達したことになり、妊娠が可能な状態になったと言えます。

また、メス犬の生理は約6か月ごとに繰り返され、ほぼ一生繰り返されると考えられています。しかし、メス犬が高齢になってくると徐々に出血量や出血日数が減少するため、飼い主が気付かず愛犬の生理が終わったと捉えてしまうようです。

犬の発情時に見られる状態

犬の発情時に見られる状態

メス犬の発情出血の期間は7~14日間

メス犬に発情出血が見られるのは、一般的に7~14日間程度で、この時期を「発情前期」と言います。おおよそ7日ほど経過すると出血量が徐々に減少し、その時期からオス犬との交尾を受け入れる「発情期」を迎えます。メス犬の発情前期の出血量は個体差がありますが、出血がまったくないということはありません。実はメス犬自身がなめ取ってしまい、飼い主が気付かないという場合もあります。

なお、メス犬の初回発情は、それ以降の発情と比較して出血期間がやや長くなる傾向にありますが、元気で食欲があれば心配はいらないでしょう。

次に、発情前期から発情期にかけて見られるメス犬の変化について説明します。

発情期のメス犬は、陰部が倍以上に膨張

メス犬の身体上の変化としては、陰部がいつもの倍以上に膨張します。この陰部の外観上の変化は、メス犬の発情に伴うものなので異常ではありません。また、個体差はあるものの、この時期のメス犬には、やや元気がなかったり食欲が落ちたりする場合もあります。愛犬に元気がなくなると、飼い主としては心配にかもしれませんが、発情自体は病気ではありませんので、過剰に心配する必要はありません。

巣作り行動や神経質な様子が見られる

行動の変化としては、メス犬が妊娠していなくても、自身の居場所を身近にあるもので作ろうとする、巣作り行動が見られます。また、メス犬は神経質になって落ち着きがなくなる場合もあります。

おしっこの回数が増え、あちこちに排尿することも

この時期のメス犬は普段よりも排尿回数が増える場合があります。また、メス犬は、あちこちに少しずつ排尿するようになります。こうした行動は、メス犬にとって匂い付けや陰部の違和感などによるものだと考えられています。心配せずに様子を見てあげましょう。

犬の生理のケアについて

散歩時は、オス犬とのトラブルに注意

愛犬が発情期にあっても特別具合が悪いのでなければ、気分転換や運動のために散歩に連れ出して構いません。ただし、この時期は発情中のメス犬の匂いにオス犬が敏感に反応しますので、注意が必要です。オス犬がメス犬に急に近づいてきて交尾しそうになったり、追いかけ回してけんかになったりして、トラブルになる危険性があります。愛犬が、ほかの犬と遭遇する可能性がある場合は、オムツやマナーパンツを履かせ、ほかの犬にできるだけ近づかせないようにしましょう。

気分を落ち着かせ、ゆったりとした生活を

生理中のメス犬は特に体の変化が著しくなります。いつもどおりというよりも、愛犬がゆったりした気分で過ごせるように気遣ってあげてください。また、ドッグランのような多くの犬がいる場所には、この時期にあえて愛犬を連れて行かなくていいでしょう。

生理ではない、陰部からの出血で考えられる犬の病気とは?

生理ではない、陰部からの出血で考えられる犬の病気とは?

陰部の出血は、子宮蓄膿症や膀胱炎かも

犬の生理とよく見間違える代表的な病気としては、子宮に膿汁がたまる「子宮蓄膿症」や、尿に出血が混じる「膀胱炎」が挙げられます。いずれもあまり長く様子を見てはいけない病気ですので、早めに病院で診察してもらいましょう。

犬の子宮蓄膿症の予防は避妊施術

メス犬の子宮蓄膿症を始め、子宮の病気に対する最も確実な予防方法は避妊手術です。ただし、避妊手術をするためにはメス犬に全身麻酔をかけて開腹しなければなりません。麻酔リスクの少ない年齢が若いうちに、愛犬に避妊手術をするかを判断しておくべきでしょう。

犬の膀胱炎の予防は定期的な尿検査

膀胱炎のような泌尿器の病気であれば、愛犬に尿検査を年に数回受けさせましょう。愛犬のおしっこの状態を定期的な検診でチェックすると予防につながります。

犬の陰部からの出血で、こんな症状ならすぐ病院へ

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愛犬の生理周期を記録し、病気によるものかを判断

愛犬の陰部からの出血が生理によるものではなく、何らかの病気が疑われる場合、まずは、愛犬の生理が通常のサイクルで来ているのかを確認しましょう。そのためには日ごろから愛犬の生理周期を記録することが大切です。

犬の出血で病気が疑われる症状とは?

子宮蓄膿症が疑われる犬の症状

メス犬に次のような症状が見られる場合、子宮蓄膿症が疑われます。

  • 生理が終わったばかりなのに1か月くらいでまた生理が来た
  • 陰部から出血だけでなく膿のような粘液状のものが出る
  • 元気、食欲がない
  • 飲水量が急に増えた
  • 熱っぽい

膀胱炎が疑われる犬の症状

下記に挙げる症状が犬に見られる場合、膀胱炎の可能性があります。

  • 頻尿になり、いつもと違う場所で排尿してしまう
  • 尿が出ないか、おしっこの量が非常に少ない
  • 排尿時に痛がって鳴く

まとめ

犬の生理は、メス犬が子供を産むために必要な体づくりの一現象なので、規則正しい周期で来ていれば大きな問題ありません。

しかし、メス犬の陰部からの出血の中には、病気が原因となる場合もありますので、日ごろから愛犬の発情周期を把握しておきましょう。また、愛犬に発情周期と異なるタイミングで陰部から出血が見られる場合には、前述の症状を受診の判断材料にしてください。そして、気になることがあれば、早めの受診を心がけましょう。

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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