メス犬の陰部の腫れ、赤い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月08日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

避妊施術をしていないメス犬は、年に1、2度の発情期(ヒート)に、陰部が赤く大きく腫れることがあります。それ以外でもメス犬の陰部が腫れ、赤くなるとすれば、どんな原因があるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

メス犬の陰部の腫れをいつもの生理だろうと様子を見ていたら、急変してしまい、危険な状態に陥る場合があります。愛犬に異常や変化を感じたら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

メス犬の陰部の腫れ、赤い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬の陰部が腫れる、赤い原因とは?

―メス犬の陰部が腫れる原因について教えてください。

一般的に言われるメス犬の陰部とは、尿道と子宮につながる道の出口にあたる部分を指します。名称としては「外陰部」と言う言葉が正確ですが、陰部と言っても問題はありません。

この陰部は普段、被毛に覆われていて、なかなか目で確認することは難しいと思います。それがある日、腫れて大きくなり、赤く見えることがあります。これには、下記のような原因が考えられます。

  • 発情期(ヒート)
  • 偽妊娠
  • トリミングにおけるカミソリ負け

これらは普段メス犬を飼っていれば、遭遇する可能性のあるものです。

発情期(ヒート)

メス犬は約半年おきに発情期(ヒート)という現象が起こります。これは、子供を授かるために必要な期間で、発情期の初期には生理のような出血が認められます。この出血し始めるころを含めた発情期(ヒート)中は陰部が赤く腫れて大きくなります。一般的には、通常の陰部のサイズの2~3倍になり、触るとふっくらとやわらかく弾力があります。また、ややピンクに色付いて見えるときもあります。

この腫れは炎症による病的な変化ではなく、メスの性周期に伴う生態的変化ですので心配はいりません。陰部が腫れて大きくなる期間は、多少の個体差はありますが、発情期が始まってから1か月程度続くとされています。

偽妊娠

通常、メス犬は発情期(ヒート)後に妊娠しなかった場合、無発情期に移行するため、やがて陰部は元の大きさに戻り小さくなっていきます。しかし、妊娠していなくても妊娠して子供を育てているかのような行動をすることが時々あり、これを偽妊娠と言います。

この偽妊娠状態になると、発情期(ヒート)に入ったときに腫れた陰部がそのままのサイズで継続するようになります。また、その際には乳腺が膨らみ、乳首から乳汁が出るなどほかにも体の変化が見られます。

カミソリ負け

発情期のような体の中からの変化とは別に、外からの刺激で陰部が腫れる場合がカミソリ負けです。トリミングサロンで愛犬の被毛をカットしてもらったり、飼い主自らバリカンをかけたりして、陰部周りの被毛を短くすると、そのときの皮膚への刺激で陰部が腫れ、赤くなることがあります。陰部周りの皮膚は特にやわらかくデリケートな部分なので、皮膚をバリカンで大きく傷つけることがなかったとしても、赤くなったり腫れたりしやすいのです。

これら以外に何らかの病気を原因として、メス犬の陰部が腫れたり赤くなったりする場合があります。

犬の陰部が赤く腫れる原因として考えられる病気とは?

犬の陰部が赤く腫れる原因として考えられる病気とは?

―メス犬の陰部が赤く腫れる原因としてどんな病気が考えられますか?

病気が原因となって陰部が腫れたり、赤くなったりする場合として、以下のようなことが考えられます。

  • 子宮蓄膿症
  • 膣ポリープ
  • 膣脱
  • 外陰部付近の腫瘍
  • 膣炎
  • 皮膚炎

これらのような病気についてそれぞれ説明していきましょう。

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、子宮内に細菌が感染して膿がたまる病気です。特に、発情後1か月程度のうちに発症することが多く、発熱や食欲不振、下痢や嘔吐が見られることがあります。なお、陰部から膿が出る場合と出てこない場合があるので気付きにくいことがあり、注意が必要です。

この病気の詳しい内容は、獣医師監修の記事「犬の子宮蓄膿症」をご覧ください。

膣ポリープ

膣ポリープとは、膣に発生するポリープ状のしこりのことで、発情期に見られることが多いものです。ポリープが大きくなると、赤いボールのようなものが膣から陰部の外に飛び出して見えることがあります。

膣脱

膣脱は発情期や出産のときに起こることが多く、膣の赤い粘膜側が腫れて陰部の外に反転して見える状態を指します。この状態になると、犬は異常に陰部を気にして、なめることが多くなります。

外陰部付近の腫瘍

膣の中や陰部そのものの皮膚に腫瘍ができ、それが大きくなって陰部が赤く腫れたように見えることがあります。この腫瘍が尿道を塞ぐ位置にできてしまうと、排尿に影響し、排尿しづらくなります。

膣炎

膣炎は発情期後や衛生的に良くない状態に起こりやすい病気です。おりものの分泌や陰部を気にしてなめるようになります。

皮膚炎

陰部周りで慢性的な皮膚炎が起こると、陰部が赤く腫れたように見えることがあります。皮膚炎はかゆみを伴うため、陰部を非常に気にしてなめることが多くなります。また、なめ続けることによって、皮膚の色が黒ずんだりカサついたりすることもあります。アトピー性皮膚炎のような皮膚炎にかかりやすい犬によく見られます。

この病気の詳しい内容は、獣医師監修の記事「犬の皮膚病」をご覧ください。

犬の陰部が腫れて赤い、こんな症状ならすぐ病院へ

犬の陰部が腫れて赤い、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない場合

定期的な発情期(ヒート)で目立った症状がなければ問題ない

―愛犬の陰部が腫れたり赤くなったりしても、様子を見てもいい場合について教えてください。

愛犬の発情期(ヒート)が定期的に来ていて、それに伴う陰部の腫れや赤みであれば、様子を見てもいいでしょう。発情期(ヒート)中は落ち着きが多少なくなりますが、極端に食欲や元気はなくならないので、具合の悪そうな様子がなければ問題はないと思われます。

また、トリミング後に陰部が腫れた場合は一時的な皮膚の炎症であることが多いので、愛犬が腫れている部分をなめず、気にする様子がなければ、1~2日で治まってくるので様子を見てもいいでしょう。

受診を強く勧める症状

子宮蓄膿症の症状が見られたら、すぐに病院へ

―受診すべき状態、併発するそのほかの症状を教えてください。

以下に挙げる変化や症状が愛犬に見られる場合は、様子を見ずにできるだけ早く動物病院を受診してください。

  • 陰部から膿のようなおりものが出る
  • 熱っぽくなる
  • 元気や食欲がない
  • 嘔吐や下痢
  • 多飲多尿が見られる
  • 排尿をしづらそうにしている

これらは主に子宮蓄膿症で見られる症状で、匂いのある血膿状のおりものが出たり、発熱や下痢・嘔吐、多飲多尿などの症状が現れたりすることがあります。

子宮蓄膿症を放置すると、子宮にたまった膿が破裂して漏れ出し、腹膜炎を起こして死に至る危険性が非常に高いのです。また、膣内に腫瘍ができると尿道の出口が腫瘍で塞がれてしまい、排尿ができなくなる場合があります。そうなると、排尿障害によって腎不全を引き起こすことがあるため、様子を見ずに早く獣医師に相談しましょう。

犬の陰部が腫れる原因、子宮蓄膿症や皮膚炎を予防にするには?

犬の子宮蓄膿症や皮膚炎を予防にするには?

―愛犬が子宮蓄膿症や皮膚炎などならないように予防する法や、飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

ホルモンの変化によって引き起こされやすい病気には避妊手術を

子宮蓄膿症や膣脱、膣ポリープなどは、メス犬のホルモンの変化によって引き起こされやすい病気です。そのため、一番の予防法は避妊手術をすることでしょう。

避妊手術をしないのであれば、発情期(ヒート)が定期的に来ているのかを必ず記録しておくことが大切です。

膣炎や皮膚炎の予防は陰部周辺を清潔に

膣炎や陰部周りの皮膚炎は、陰部周りが衛生的でないことや、オムツをずっとしていて尿汚れやかぶれがひどくなることで引き起こされやすい病気です。そのため、オムツをする場合にはこまめに交換し、陰部周囲を毎日洗ってあげるといいでしょう。

まとめ

メス犬の陰部が赤く腫れるのは、発情期(ヒート)に関係する変化であることがほとんどです。そのため、日ごろから発情期(ヒート)の記録を行なっておき、発情周期や体調の変化に気付きやすくすることが病気の早期発見につながります。

愛犬に子供を産ませようと思わないのであれば、1歳前の若いうちに避妊手術を済ませることも大切な予防策です。獣医師とよく相談して、病気を未然に防げるようにしていきましょう。

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
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  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。