犬の子宮蓄膿症の症状と原因、治療法について

犬の子宮蓄膿症ってどんな病気?

子宮蓄膿症とは、子宮の中で細菌感染が起こり、子宮に膿がたまってしまう病気のことです。

子宮蓄膿症にかかると、多飲多尿(たくさん水を飲んで、たくさんおしっこをする)や嘔吐、元気・食欲の低下などの症状が見られます。また、膿が体の外に排出される「開放性子宮蓄膿症」では外陰部から膿が出たり、膿が体の外に排出されない「閉塞性子宮蓄膿症」ではお腹が大きくなったりといった症状も現れます。いずれの場合も重症化すると命にかかわる危険性があるので注意が必要です。

犬の子宮蓄膿症の原因と症状

どうして症状が出るの?原因は?

犬は一般的に生後6から12ヶ月ごろに性成熟をすると、大体1年に1~2回の周期で発情を繰り返します。メス犬の発情周期は生理(発情出血)がある「発情前期」、交尾を許容する「発情期」、妊娠した犬が妊娠・出産・授乳をする期間である「発情休止期」、次の発情までの期間である「無発情期」の4つに分けられます。

子宮蓄膿症の原因には、卵巣から放出される黄体ホルモンという女性ホルモンが関係していると言われています。黄体ホルモンは発情休止期に分泌されますが、これによって子宮内の免疫力が低下したり子宮内膜が肥厚したりするため、子宮の中で細菌感染を起こしやすくなるのです。

どんな犬が子宮蓄膿症にかかりやすいの?

子宮蓄膿症は、どの犬種にも起こり得る病気です。この病気は、避妊手術をしていない中高齢のメス犬によく見られますが、発症年齢は非常に幅広いため、若齢犬でも発症することがあります。また、出産経験がない、または最後の出産からしばらく間が空いているメス犬にもよく見られます。

犬の子宮蓄膿症の症状とチェック項目

犬の子宮蓄膿症には、「開放性子宮蓄膿症」と「閉塞性子宮蓄膿症」のふたつの型があります。

開放性子宮蓄膿症の症状

開放性子宮蓄膿症は、子宮の中にたまった膿が外陰部から体の外に漏れ出ている状態で、多飲多尿や嘔吐、元気・食欲の低下などの症状が見られます。

閉塞性子宮蓄膿症の症状

閉塞性子宮蓄膿症は、子宮の中にたまった膿が体の外にほとんど出ない状態で、多飲多尿や嘔吐、元気・食欲の低下、お腹が大きくなるなどの症状が見られます。膿が出ないことから病気の発見が遅れてしまうことが多く、発見時にはすでに重症化していたというケースが少なくありません。

また、閉塞性子宮蓄膿症は、子宮破裂を起こしやすいという特徴があり、これによって膿がお腹の中に広がり腹膜炎を起こし、重篤な事態に陥る危険性があります。

子宮蓄膿症の主な症状リスト

避妊手術をしていない中高齢のメス犬で、発情休止期に当たる生理から1~2ヶ月の間に、次のような症状が見られる場合は子宮蓄膿症が疑われます。

  • 水をたくさん飲むようになった
  • おしっこの量が増えた
  • 嘔吐している
  • 下痢をしている
  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 外陰部から膿(血のように見えることもある)が出ている
  • お腹が大きく膨らんでいる

治療が遅れると生死にかかわる危険性があるため、ひとつでも当てはまる症状がある場合は、夜間や休日であってもすぐに動物病院を受診するようにしてください。

犬の子宮蓄膿症はどうやって診断されるの?

犬の子宮蓄膿症と診断するために、病院では、まず飼い主さんに問診を行い、いつからどんな症状が現れたのか、最後に生理がきたのはいつかなどを確認します。次に身体検査を行い、外陰部から膿が出ているかどうかを確認します。そして、全身状態を確認するために血液検査を、子宮の大きさや状態を確認するために超音波検査やレントゲン検査を行い、子宮蓄膿症だと診断します。

犬の子宮蓄膿症の治療にはどんな方法があるの?

犬の子宮蓄膿症の治療と予防

犬の子宮蓄膿症の治療方法には「内科的治療」と「外科的治療」がありますが、一般的には外科的治療を行います。

外科的治療

外科的治療は、犬に全身麻酔をかけ、普通の避妊手術と同じ方法で卵巣と子宮を摘出します。閉塞性子宮蓄膿症やすでに重症化している場合などには、診察後すぐに緊急入院、手術を行うことがあります。

内科的治療

重度の心不全で全身麻酔をかけられない場合や飼い主さんの意向で外科的治療を望まない場合などは、内科的治療を行います。具体的には、細菌感染を抑えるために抗生物質の投与や、膿を体の外に出すためにホルモン剤を注射しますが、症状が改善しなかったり再発したりするリスクがあります。

犬の子宮蓄膿症は治せるの?

外科的治療を行わず、内科的治療のみを行った場合は再発する可能性が高く、完治は難しい場合がほとんどです。しかし、手術で無事に卵巣と子宮を摘出することができれば、ほとんどの場合で子宮蓄膿症は完治し、その後も元気に過ごすことができます。

ただし、合併症がある場合やもともと心不全や肝機能障害などを患っている場合は、手術の際にかける全身麻酔そのものがリスクとなり危険が伴います。また、合併症として腎不全になってしまっている場合は、手術後も投薬や食事療法を行い、腎不全の治療を続けていかなければなりません。

どうやって予防したらいいの?

避妊手術で予防

犬の子宮蓄膿症は、避妊手術を行うことで予防でき、その手術は一般的な避妊手術と同じものです。しかし、子宮蓄膿症の手術は、さまざまな合併症を引き起こす可能性があり、高齢で手術を受けると健康な状態で行うときよりも全身麻酔のリスクが高くなってしまいます。加えて、初めての発情が来る前に避妊手術を行えば、乳腺腫瘍の発生も高確率で予防できます。そのため、将来的に繁殖の予定がないのであれば、早めに避妊手術を行うようにすると安心です。

避妊手術の方法

避妊手術には、主に卵巣摘出術と卵巣子宮摘出術の2種類がありますが、卵巣子宮摘出術を行う動物病院のほうが多くあります。一方、子宮蓄膿症は卵巣から放出される黄体ホルモンが関係していると言われていることと、卵巣のみの摘出であっても子宮の病気を予防できるということから、卵巣摘出術を行う動物病院もあります。どちらにもメリットやデメリットがあるため、獣医師としっかり相談してから避妊手術を行うようにしましょう。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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サ行
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ハ行
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ミックス犬(※1)
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  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。