犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年03月27日

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)の症状

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)の症状と原因

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)は、副腎皮質から分泌されるホルモンが不足する病気です。副腎は生命を維持するために大切なホルモンを分泌する器官で、副腎皮質と副腎髄質に分けられます。

副腎皮質からは主にグルココルチコイド(コルチゾール)やミネラルコルチコイド、アンドロゲンが分泌されます。また、副腎髄皮質からはカテコラミンが分泌されています。

副腎皮質の機能に障害が起こると、グルココルチコイドやミネラルコルチコイドの分泌量が低下し、全身にさまざまな症状を引き起こします。

  • 食欲や食事量の低下
  • 虚弱
  • 嘔吐(おうと)
  • 下痢
  • 元気消失、散歩を嫌がる
  • 体重減少
  • 多尿
  • 徐脈
  • 震え

犬のアジソン病で見られる症状には、アジソン病だとすぐにわかる特徴がありません。そのため、重症化して初めて気付くケースもあるため注意が必要です。愛犬に似た症状が出ているようならば、早めに動物病院に相談するといいでしょう。

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

次のような症状が愛犬に見られた場合は、副腎クリーゼ(アジソンクリーゼ)と呼ばれる重度の副腎不全状態に陥っている可能性があります。放置すると愛犬の命にかかわるため、すぐに動物病院を受診しましょう。

  • 痙攣(けいれん)
  • 失神
  • 虚脱

犬のアジソン病は、ストレスが原因で突然悪化するケースもあります。様子を見ずに早めに動物病院を受診しましょう。

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)の原因

副腎皮質から分泌されるホルモンは、主に下垂体前葉から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)により合成が促進されています。さらにACTHの分泌は、視床下部から分泌されるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)により制御されています。

そのため、犬のアジソン病の原因には、副腎そのものの機能異常やACTHの分泌器官である下垂体、CRHの分泌器官である視床下部の機能異常が考えられます。

副腎の異常

特発性

犬の特発性アジソン病は、副腎そのものの障害で引き起こされます。グルココルチコイドとミネラルコルチコイドが不足する原因は、副腎皮質が自己免疫により破壊されて萎縮するためと考えられていますが、はっきりとは解明されていません。

医原性

犬の医原性アジソン病は、グルココルチコイド製剤の長期投与や、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症:ふくじんひしつきのうこうしんしょう)に対する薬物療法などにより引き起こされます。

副腎皮質機能亢進症の治療薬であるミトタンは、副腎皮質を破壊する薬剤です。ミトタンの過剰投与により副腎皮質が萎縮してしまい、犬はアジソン病を発症すると考えられています。

脳下垂体や視床下部の異常

犬の二次性のアジソン病の多くは、下垂体や視床下部などの病変、損傷などにより引き起こされます。ACTHまたはCRHの分泌不足により副腎皮質が萎縮し、グルココルチコイドの分泌障害が生じます。

アジソン病(副腎皮質機能低下症)にかかりやすい犬の特徴は?

犬の場合、若年〜壮年のメス犬での発生が多いとされています。スタンダード・プードルによく見られるとの報告もあります。

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)の治療法

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)の治療法と予防法

検査内容

血液検査

犬の血液を採取して、全血球数の算定や血液生化学検査を行います。

アジソン病を愛犬が発症している場合、全血球算定で非再生性の貧血が見られたり、血液生化学検査で電解質の異常が多く見られたりします。

ACTH刺激試験

ACTHを投与する前後の犬の血中コルチゾール濃度を測定する試験です。ACTH投与後の血中コルチゾール濃度が基準値未満であれば、アジソン病と診断します。

CT、MRI

犬の下垂体や視床下部に損傷や腫瘍などの病変が疑われる場合には、CTやMRIを必要に応じて行います。犬にCTやMRIを使う際には全身麻酔が必要になるため、とても大掛かりな検査になります。

治療法

副腎クリーゼ(重度の副腎不全)

犬が副腎クリーゼを発症すると循環血液量が低下しているため、基本的には入院での点滴治療になります。犬の食欲が回復する程度までは入院治療が必要です。

維持療法

犬に食欲や元気がある状態であれば、維持療法を行います。

不足しているミネラルコルチコイドとグルココルチコイドを、ステロイド剤により補充します。基本的に、薬物療法は犬の生涯にわたって継続が必要です。

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)の予防法

基本的に犬のアジソン病の予防方法はありません。

犬のアジソン病は早期発見、早期治療が大切です。アジソン病特有の症状はほとんどなく、気付きにくい病気ですが、早期治療により症状が落ち着けば、投薬治療で寿命を全うできるケースも珍しくありません。

しかし、アジソン病の中でも医原性アジソン病に関しては、かからないように気を付けることができます。

犬の医原性アジソン病の予防法

犬の医原性アジソン病の予防法は、薬の適正投与です。

そもそも犬の医原性アジソン病は、グルココルチコイド製剤の長期投与や高用量投与、突然の投薬中止などによって引き起こされます。グルココルチコイド製剤は犬のあらゆる病気の治療に使用されていて、代表的な薬剤に「プレドニゾロン」が挙げられます。

プレドニゾロンは皮膚科や内科などでも頻繁に処方されるため、手元に薬が余っているという飼い主さんもいるかもしれません。しかし、余っている薬を獣医師の指示なしに愛犬に投与すると、アジソン病を誘発するおそれがあるためやめましょう。

反対に、自己判断で投薬を中止するのも愛犬がアジソン病を引き起こすきっかけになるので注意が必要です。

愛犬にアジソン病が疑われる症状やいつもと違う様子が見られた場合は、早めに動物病院で検査を受けましょう。

犬のアジソン病に見られる症状の関連記事

犬の内分泌系の病気

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。