犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)ってどんな病気?

クッシング症候群とは、副腎皮質機能亢進症とも呼ばれ、犬の内分泌疾患(ホルモンの病気)の中で最も発生が多い病気です。

ホルモンは体の中のさまざまな働きのバランスを調節している物質であり、クッシング症候群では副腎皮質から分泌されるコルチゾールというホルモンが分泌されすぎてしまうことにより、さまざまなな症状が見られるようになります。

犬のクッシング症候群の症状と原因

どうして症状が出るの?原因は?

副腎皮質の役割

副腎という臓器は、腎臓のすぐ側にあるとても小さな臓器です。腎臓と同じく左右ふたつあり、皮質と髄質というふたつの層でできています。副腎の機能のひとつに生命維持のバランスを取るための内分泌機能があります。

副腎皮質からは、糖質をコントロールしている糖質コルチコイド、電解質のバランスをコントロールしている鉱質コルチコイド、そして、生殖機能をコントロールする性ホルモンのひとつであるアンドロゲンが作られています。

副腎髄質からは、エピネフリンやノルエピネフリンといったホルモンが分泌されており、これらは体のストレスに対する調節機能を担っています。

副腎皮質から分泌されるホルモンは、脳の中の下垂体という場所でコントロールされています。下垂体から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンの作用で副腎皮質が刺激されることで、副腎皮質から分泌されるコルチゾールの分泌がコントロールされているのです。

クッシング症候群になる原因は、「自然発生」と「医原性」のふたつのタイプがあります。

自然発生クッシング症候群

自然発生タイプは、脳の下垂体からのホルモン(ACTH)の影響(下垂体性)と、副腎の腫瘍化によるもの(副腎腫瘍性)に分類されます。犬のクッシング症候群の実に90%が下垂体からのホルモンの影響と考えられており、下垂体に腫瘍ができてしまいACTHの分泌が過剰になることで副腎が刺激され、体内のコルチゾールの量が多すぎる状態になります。残りの10%が副腎腫瘍で、こちらは副腎自体が腫瘍化して働きが過剰になってしまう状態です。

医原性クッシング症候群

医原性タイプは、「アレルギー性皮膚炎」などの病気の治療のために長期に渡って副腎皮質ホルモン製剤を投与されていた動物で見られます。

どんな犬がクッシング症候群にかかりやすいの?

自然発生タイプのクッシング症候群は、プードルダックスフンドボストン・テリアボクサーポメラニアンが好発品種とされ、年齢では5歳以上の中年齢~高年齢での発生が多いとされています。

医原性タイプは、犬種や年齢にかかわらず、長期に渡って副腎皮質ホルモン製剤を投与されていた場合に見られます。

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犬のクッシング症候群の症状とチェック項目

最も気付きやすい症状は、「多飲多尿」です。水をたくさん飲むようになり、それに伴っておしっこの量も増えます。

目安としては、犬が体重1キロ当たり100ミリリットルを超える量の水をコンスタントに飲むようになると多飲状態です。体重5キロの犬で、ペットボトル1本分の水を常に飲むようになったら異常と言えるでしょう。

ただし、夏場や、短頭種のように呼吸が荒くなりやすい犬が興奮すると、一過性にそのくらいの飲水量になることがあります。多飲状態を疑うポイントは、そうした一時的なものではなく、「コンスタントに」多飲になっているかということです。

クッシング症候群のそのほかの特徴としては、次のような症状も挙げられます。

  • 左右対称に脱毛してきたけどかゆがっていない
  • 皮膚が薄くなる(皮膚の菲薄化)
  • 膿皮症、毛包虫症といった皮膚症状
  • お腹が膨らんでくる

お腹が大きくなる理由は、お腹の中で肝臓が大きくなったり、内臓脂肪が増加したりすることに加えて、腹部の筋力が低下することによります。

犬のクッシング症候群はどうやって診断されるの?

ALP値の高さ

犬に見られる特徴的な症状(多飲多尿、皮膚病変、腹囲膨満)に加えて、血液検査のスクリーニング(ふるい分け)でALPという数値が高い場合、クッシング症候群を強く疑います。

ACTH刺激試験によってコルチゾールの数値を測定

また、ACTH刺激試験という検査を行います。これは、副腎皮質刺激ホルモンを犬に注射して、注射前後のコルチゾールの数値を測定するものです。クッシング症候群の判断は、このACTH刺激試験で80%くらいが診断できます。

超音波診断によって副腎の大きさを測定

画像検査では、超音波診断装置(エコー)によって、犬の副腎の大きさやそのほかの臓器の状態を調べます。自然発生タイプのクッシング症候群では、左右どちらの副腎も大きくなっており、副腎腫瘍性では、腫瘍化したほうの副腎が大きくなります。また、下垂体性の場合は、脳下垂体の状態を確認しますが、エコーではわからないため、CT検査を行います。

犬のクッシング症候群の治療と予防

犬のクッシング症候群の治療にはどんな方法があるの?

下垂体性のクッシング症候群に対しては、内科治療、外科治療、放射線治療があり、副腎腫瘍性に対しては、内科治療、外科治療、放射線治療があります。

内科治療

内科治療では、副腎腫瘍性の場合、副腎を破壊する薬や、副腎から放出されるホルモンの働きをブロックする薬を犬に使用します。下垂体性の場合は、内科治療がよく効いて長期に渡って良好にコントロールできることが多く、一般的に行われる治療です。しかし、副腎腫瘍性では、そこまでの効果が期待できないことが多く、何らかの理由で手術ができない場合に選択されます。

外科治療

外科治療は、下垂体性であれば下垂体を、副腎腫瘍性であれば副腎を摘出します。どちらもその臓器からのホルモンがまったく出なくなるため、生涯に渡って犬にホルモン補充療法が必要になります。なお、犬の下垂体の摘出は、まだ確立された治療法ではありませんが、副腎腫瘍性の治療では副腎の摘出が第一選択になります。

放射線治療

放射線治療は、放射線で腫瘍化した下垂体を破壊します。これは、下垂体腫瘍のうち巨大腺腫というタイプで適応されます。しかし、放射線治療が実施できる施設は非常に数が少ないのが難点です。

犬のクッシング症候群は治せるの?

自然発生タイプは、基本的には薬で症状を抑える目的で治療を行うことが多いので、治るというよりコントロールするという考え方です。一方、医原性タイプは、副腎皮質ホルモン製剤の投与を止めれば自然に治ります。

どうやって予防したらいいの?

腫瘍は予防できません。そのため、医原性のクッシング症候群にならないように気を付けましょう。具体的には、安易に副腎皮質ホルモン製剤を使用しないということです。

犬はさまざまな病気になる可能性があり、中には副腎皮質ホルモン製剤が必要になることがあるため、投薬治療する場合は獣医師の指示にきちんと従ってください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

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