犬の抜け毛の原因、病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年09月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬の抜け毛(脱毛)によって地肌が目立つようになる原因として、どんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

犬種によって換毛期の抜け毛は自然なことですが、中には何らかの病気による脱毛かもしれません。気になる症状、愛犬の行動の変化があれば、すぐに獣医師さんに相談して対策を検討しましょう。

犬の毛が抜ける病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬の抜け毛の原因とは?

―犬の毛が抜ける原因について教えてください。

換毛期による抜け毛

犬も毎日毛が生え替わりますが、毛が抜ける時期にあたる春と秋が換毛期になり、この時期は特に毛が抜けます。換毛期のある犬種として、ミニチュア・ダックスフンド、ポメラニアン、パグ、チワワ、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、柴犬、秋田犬などが挙げられます。対策として考えられるのは、換毛期にはシャンプー、ブラッシングを特に行い、皮膚病を予防することが大切です。

栄養不足による抜け毛

毛の成長には、亜鉛、ビタミン、アミノ酸、必須脂肪酸などの栄養素が必要です。亜鉛やビタミンには皮膚や被毛の増殖を促進する効果があり、アミノ酸は毛の主成分であるケラチンを作ります。必須脂肪酸は健全な皮膚の維持に必要です。これらの栄養素が欠乏すると脱毛が起こる場合があります。

ストレスによる抜け毛

犬がストレスを感じると体を過剰になめたり、毛を噛んでむしり取ったりして脱毛する場合があります。特に、こうした傾向は、足先や太ももに多く見られます。

老化による抜け毛

加齢により毛包や皮膚の機能が低下すると、毛が細くなり薄毛になります。

これら以外に何らかの病気によって、犬の抜け毛(脱毛)が見られる場合があります。

犬の抜け毛を伴う病気とは?

―犬の抜け毛の原因としてどんな病気が考えられますか? また、発症しやすい犬種、特徴はありますか?

感染症、アレルギー性、ホルモン性、遺伝性疾患などがあります。

感染症

膿皮症

細菌が皮膚で増殖して起こります。犬の体から足の広い範囲に強いかゆみを引き起こし、脱毛、湿疹、赤み、かさぶた、フケなどの症状を伴う場合もよくあります。多くの犬種で見られますが、ジャーマン・シェパード・ドッグやブル・テリアでは重症化するおそれがあります。

マラセチア皮膚炎

マラセチア皮膚炎は、マラセチアというカビの増殖によって発症し、犬の全身の広い範囲で症状が見られる病気です。脱毛を始め、かゆみ、赤み、皮膚の肥厚(肥えたり、はれたりして厚くなること)、色素沈着、独特の臭いなどを引き起こします。マラセチア皮膚炎の好発(発症しやすい)犬種として、ウエストハイランド・ホワイト・テリア、シー・ズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、柴犬などが挙げられます。

犬の抜け毛を伴う病気とは?

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症は、皮膚糸状菌というカビの感染によって起こります。主に、犬の頭や足先に、フケや赤みを伴う脱毛が起こります。かゆみは一般的に軽度ですが、ときに強いかゆみを伴うおそれがあります。好発犬種は、ヨークシャー・テリアで、重症化する場合があります。

ニキビダニ症

ニキビダニ症は、犬の皮膚に常在する寄生虫の増殖によって起こる病気です。局所、または広い範囲で脱毛が見られます。かゆみは軽度から重度までさまざまです。傾向として、子犬から若齢の犬、発情期を迎えたメス犬、老犬で多く見られます。

アレルギー性疾患

食物アレルギー

主に食物中のタンパク質に反応して、犬の目や口の周りなど全身の広い範囲で脱毛や赤みなどの皮膚症状を起こします。多くの場合、強いかゆみが伴います。1歳以下の若齢犬に多い傾向にあります。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、環境中のアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因となる物質)に反応して、犬の目や口の周りなど全身の広い範囲で脱毛や赤みなどの皮膚症状を起こします。多くの場合、強いかゆみを伴い、生後6か月~3歳ごろで多く見られます。

ホルモン性疾患

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎皮質機能亢進症は、副腎の機能が過剰になり起こる病気です。主に、犬の体に左右対称性の脱毛が起こりますが、皮膚のかゆみは、あまりありません。中高齢の犬でよく見られます。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能が低下して起こる病気です。犬の体やしっぽに左右対称性の脱毛が起こりますが、皮膚のかゆみは、あまりありません。傾向として、中高齢の犬によく見られます。

遺伝性疾患

淡色被毛脱毛

淡色被毛脱毛は、淡色の毛をもつ犬に起こる疾患で、若齢犬に多い傾向があります。淡い色の毛が生えている部分に一致して脱毛し、かゆみや赤みは伴いません。

黒色被毛形成異常症

黒色被毛形成異常症は、2色以上の毛をもつ犬で起こる疾患です。黒色の毛の部分に一致して脱毛しますが、かゆみや赤みは伴いません。若齢犬に多い傾向があります。

パターン脱毛症

パターン脱毛症は、毛が細くなり脱毛する疾患です。多くは、お腹に左右対称性の脱毛が見られ、背中や足先には起こりません。また、通常、かゆみや赤みは伴いません。好発犬種は、チワワ、ミニチュア・ダックスフンド、ミニチュア・ピンシャーなどで若齢犬に多く見られます。

脱毛X(毛周期停止)

脱毛Xは、アロペシアXとも呼ばれ、体全体に脱毛が広がりますが、頭と足に抜け毛は見られません。また、通常、かゆみや赤みは伴いません。ポメラニアン、パピヨン、トイ・プードル、チワワなどの若齢犬、未去勢のオスに多い傾向があります。

「PS保険」では、24時間365日、獣医師による無料※電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しております。病院へ足を運ぶまでの応急処置を含む医療相談から、素朴な疑問まで幅広く応対してくれるので、もしものときも安心です。

※:通話料はお客さまのご負担になります。

※当サービスは、株式会社チェリッシュライフジャパン(CLJ)と提携し、アニクリ24のサービスを提供するものです。

※Anicli24(アニクリ24)は獣医師による電話医療相談サービスを提供する動物病院です。

犬の抜け毛で、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない犬の抜け毛の症状

―同じ抜け毛でも心配のいらない、様子を見ても大丈夫な場合について教えてください。

犬の被毛が多く抜けていても、地肌は見えず、かゆみ、匂い、赤み、フケがないといった場合には、心配は少ないと言えます。

受診を強く勧める犬の脱毛の症状

犬の抜け毛で、こんな症状ならすぐ病院へ

―受診すべき抜け毛の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

脱毛部、または全身的に以下のような症状がある場合には、受診をお勧めします。

  • 地肌がはっきり見えている
  • 部分的に脱毛している
  • 左右対称に脱毛している
  • 尻尾が脱毛している
  • 皮膚(体幹部全体、目の周り、口の周り、鼻の周り、耳、足、指の間、しっぽ)が赤い
  • 皮膚の黒ずみが増えている
  • かゆみがある
  • 皮膚をよくなめる、かきこわす
  • 毛の間にフケがたくさん見える
  • 皮膚を触るとゴツゴツとした感触がある
  • 皮膚にかさぶたが目立つ
  • 皮膚が匂う
  • 皮膚から分泌物が出ている
  • 最近太ってきた、やせてきた
  • 最近元気がない
  • 顔がむくみ、悲しげな顔になっている
  • 手足がむくんでいる
  • 以前より水をたくさん飲む
  • 以前よりかなり食欲がある
  • 以前よりハアハアと呼吸することが増えた
  • 以前より起立時のお腹が垂れ下がっている
  • ステロイド剤を長期間にわたり飲んでいる

犬の脱毛の対処法

犬の脱毛の対処法

―換毛期でもないのに、犬の毛が異様に抜けてしまったら、どう対処すればいいのでしょうか?

フードに起因する抜け毛

食事の変更やサプリメントによる栄養補給を第一に考えますが、種類が相当な数あり、愛犬に適したものを選ぶのは大変かもしれません。最適なフードやサプリメントを判断するために、まずは動物病院を受診し、これまでの食事歴や皮膚の状態などから総合的に判断してもらうことをお勧めします。

ストレスに起因する抜け毛

ストレス性の抜け毛であるかどうかは、被毛や皮膚の状態、最近の生活環境の変化などから総合的に判断する必要があります。すでに脱毛部には皮膚のダメージが起きており、ストレスに対するケアに加え、皮膚自体の治療が必要になる場合も珍しくありません。まずは動物病院を受診し、最良の方法を見つけましょう。

病的な脱毛

病的な脱毛では、皮膚や被毛の検査だけではなく、場合によっては全身検査を行い、最適な治療を受けることが改善の近道です。特に全身的な疾患による脱毛の場合、早期治療が愛犬の脱毛だけではなく、長生きにもつながります。

まとめ

犬の脱毛は一般的に多く見られる症状ですが、原因は実にさまざまです。中には治療がいらない場合がある一方で、さまざまな病気のサインであることもあります。愛犬の抜け毛で気になることがあれば、早めに獣医師に相談しましょう。

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。