犬のかさぶたができる原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月26日

犬にかさぶたができてしまうのは、どんな原因や病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

かさぶたができる原因はいろいろありますが、原因を取り除かなければ、ずっと症状が続くかもしれません。また、中にはかゆみを伴い、犬がずっとストレスを抱えることもありえます。犬の体や行動に変化や異常が見られたら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬のかさぶたができる原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬のかさぶたができる原因・病気とは?

犬の皮膚の構成

皮膚は動物の体を構成している重要な臓器のひとつで、体全体を覆っている最大の臓器です。皮膚は3層に分けられ、最も外側から順に、表皮、真皮、皮下組織があります。一番深層で生まれた新しい細胞は、外層に向かって押し出され、角質層において死んだ細胞となって剥がれ落ちていき、通常3から4週間を要します。

表皮

表皮は体の最も表面を覆っており、犬の場合は、人よりもはるかに薄くできています。そのため、環境の影響を受けやすく、皮膚トラブルを起こしやすいと言えるでしょう。

真皮

真皮はコラーゲンを主成分とする線維組織で構成され、外傷から体を守る役割を担い、皮膚の主要な支持組織です。真皮内は、血管、神経、リンパ管が走行し、アポクリン腺や毛包脂腺を含む分泌腺もここに存在します。

皮下組織

皮下組織は、衝撃吸収、保温、エネルギーの蓄積などの役割を果たし、ステロイドの産生や代謝、脂肪の合成や蓄積を行っています。

かさぶたとは?

皮膚の血管が破け、出血すると血液中の血小板がコラーゲンに接触します。すると、血小板が活性化して集まり、フィブリン塊と呼ばれる物質が作り出されます。これが破けた部分を覆うことで出血が止まります。また、フィブリン塊は外気に触れると乾燥して「痂皮(かひ)」になります。この「痂皮」がいわゆる「かさぶた」です。

「かさぶた」は強固に傷口に付着し、絆創膏の役割を果たします。その下で傷口は収縮し、邪魔するもののない状態で上皮化(表面がきちんとした表皮に覆われること)が進行するのです。

―犬にかさぶたができる原因・病気として、どんなものが考えられますか?

外傷

外からの物理的な力によって起こる傷にはいくつか種類があります。それらは、切り傷(裂傷)や刺し傷(刺傷)、打ち傷(挫創)、すりむき(擦過傷)、犬同士のけんかなどによるかまれ傷(咬傷)であり、血管が傷つき、外気に血液が触れるとかさぶたが形成されます。

アレルギー

アレルギーは、本来体を病原体から守るための仕組みである免疫反応が、特定の抗原(アレルゲン=免疫反応を起こす物質)に対して必要以上に過敏に反応し、症状が生じる病気のことです。

皮膚はアレルギーが起こる代表的な臓器であり、犬の皮膚にしばしば見られるアレルギーは、原因別で大きく分けると次の3つが挙げられます。

  • 環境中の花粉やほこりなどのアレルゲンによるアトピー性皮膚炎
  • 食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなる食物アレルギー
  • ノミの糞に含まれるタンパク質が原因となるノミアレルギー性皮膚炎

これらのアレルギーでは皮膚に強い炎症が起きると、犬が非常に強くかゆがり、皮膚をかき壊してしまいます。その結果として出血し、かさぶたができます。

アトピー性皮膚炎や食べ物アレルギーでは、眼や口周り、耳、首、脇の下、肘の内側、足先、下腹部周辺などに発症することが多く、ノミアレルギー性皮膚炎は背中に病変が多く起きます。

犬のかさぶたができる原因は、外傷、アレルギー、アトピー性皮膚炎、炎症など

炎症

犬の皮膚に炎症が起きると、アレルギーの場合と同じようにかゆがり、犬自身が皮膚をかき壊したり、あるいはその部分に血管が新たにできたりするので出血し、かさぶたができやすくなります。

この代表的な症状が膿皮症です。膿皮症とは皮膚の細菌感染症であり、皮膚に非常に小さい膿の袋である膿疱ができ、それが破けて膿が固まったようなかさぶたができます。主な発症部位は背中ですが、円形脱毛症のような脱毛を伴うこともあります。

皮膚がん

皮膚のがんでもかさぶたができることがあります。皮膚がんの場合は、犬はあまりかゆがらない印象がありますが、気にすることがあるので一概には言えません。がんによるできものは大きくなると、割れて出血し、かさぶたができることがあるのです。

犬のかさぶたで、こんな症状ならすぐ病院へ

犬のかさぶたで、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない犬のかさぶた

―自然治癒してしまう、心配しなくてもいい犬のかさぶたについて教えてください。

次のような条件を満たすのであれば、かさぶたは自然に剥がれ落ちます。

  • 皮膚病やアレルギー、皮膚がんなど、かさぶたができてしまった原因がなくなり、また、きちんと出血が止まること
  • かさぶたが無理矢理剥がされてしまう状況にないこと
  • かさぶたの下の皮膚が修復されること

受診を強く勧める犬のかさぶたの症状

―受診すべき犬のかさぶたの状態、見分け方を教えてください。

かさぶたの色は血液が固まっただけだと黒かったり、膿が混ざっていると緑がかっていたりと、さまざまな見た目をしています。

かさぶたの原因が明らかに外傷であり、出血が止まっていて、傷が非常に小さいのであれば放置しても大丈夫かもしれませんが、できれば早めの動物病院の受診をお勧めします。また、かさぶたは無理矢理剥がしてしまうと、再び出血してかさぶたができてしまい、いつまで経っても治りません。

犬の背中の皮膚は、犬自身がかけないため、治りやすいかもしれません。しかし、お腹だと犬がなめやすく、また、鼻は地面にこすりつけ、肉球は地面と常に触れるので、物理的な刺激により傷口が治りづらいかもしれません。このような場合にも動物病院を受診すべきだと思います。

―かさぶたを放っておくと重症化するような場合はありますか? あれば、それはどのようなものですか?

背景に隠れている病気が悪化すれば、重症化することがあります。

―上記の場合、どのような治療を行うのですか?

外傷の場合、軽症であれば消毒くらいですむかもしれませんが、重症であれば縫うことや飲み薬が必要になる場合があります。

また、皮膚病や皮膚がんの場合は、まず原因が何であるかを検査によって突き止めてから、それぞれに対する治療を行います。いずれにしても安易に抗生剤やステロイドを使用せず、初期段階でしっかり検査をして、かさぶたの原因を突き止めることが大切であると考えます。

犬のかさぶたの予防と対処法

犬のかさぶたの予防と対処法

―家庭でできる犬のかさぶたの予防方法について教えてください。

犬のかさぶたの原因はさまざまなので、その予防は難しいかもしれません。しかし、外傷の場合はケガをしやすい環境にないかを考え、整える必要があります。

―犬のかさぶたを見つけたら、どのように対処したらいいですか?

かさぶたは、とにかく無理矢理剥がさないことが大切です。そのため、犬自自身がなめないようにエリザベスカラー、包帯や絆創膏の装着が有効でしょう。ただし、犬が嫌がる場合があるので、飼い主さんの自己判断で無理に装着する必要はありません。

また、自宅で人間用の塗り薬を塗る飼い主さんがいますが、それはやめたほうがいいでしょう。なぜなら、原因によっては症状の悪化や、効果が強すぎて副作用が出る場合があるからです。

まとめ

かさぶたには、さまざまな原因があります。愛犬にかさぶたを見つけたら、無理に剥がさず、気になる場合には動物病院を受診しましょう。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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カ行
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サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。