犬の耳が臭い、耳垢が多い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月08日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
犬の耳が臭い原因としてどんな病気があるのでしょうか。また、耳垢がいつもと違って増えると飼い主さんとしては心配になりますよね。そこで、犬の耳が臭う原因や、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。
耳だけでなく、普段と違う愛犬の動作や状態について気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。
犬の耳が臭い原因
正常な耳垢は臭わない。臭いの原因は耳の炎症や感染症
―愛犬の耳が臭いのですが、耳垢が原因でしょうか? 耳掃除の問題ですか?
正常な耳垢には、不快に感じるほどの強い臭いはありません。耳垢そのものは生理的に発生する汚れのため、少量であれば無害と言えるでしょう。
愛犬の耳が臭う原因は、主に炎症や感染症によるものです。
犬の耳が臭い、耳垢が多い原因として考えられる病気とは?
犬の耳の構造について
―犬の耳の構造について教えてください。
犬の耳は外耳、中耳、内耳の3つの部位で構成されています。外耳は耳と鼓膜までの耳道を指し、そこから分泌される老廃物を一般的に耳垢と呼びます。中耳は鼓膜からつながる空洞で、音の振動を内耳に伝える役割があります。内耳は音の振動と平衡感覚を脳神経に伝える器官です。
―犬の耳垢がひどく増えたり、耳が臭かったりする原因として、どんな病気が考えられますか?
外耳炎、中耳炎、内耳炎が挙げられますが、その多くは外耳炎であり、主な原因は炎症や感染症によるものです。
外耳炎
外耳では耳垢が産生されるため、耳のトラブルが多く発生します。ここでは、動物病院で診察されることが多い疾病について説明します。
マラセチア性外耳炎は、黒や茶色のべっとりした耳垢が見られる
マラセチアは犬の皮膚に常在する酵母で、普段は悪さをするものではありません。しかし、耳垢の増加や食物アレルギーによる炎症など、耳の環境が変化すると、マラセチアが異常に増殖することがあります。これをマラセチア性外耳炎と呼び、黒や茶色のべったりとした耳垢が増え、独特の悪臭を発します。
細菌性外耳炎
細菌性外耳炎は、マラセチアと同様に犬の皮膚に常在する細菌の異常な増殖により発症します。また、多くの場合、マラセチア性外耳炎と併発します。
ミミダニ症では、強いかゆみを伴い、赤黒い耳垢が見られる
ミミダニ症は、ミミヒゼンダニと呼ばれる目視できないほど小さなダニの仲間が耳に寄生し、発症します。ミミダニは耳に常在しておらず、多くは感染犬との接触により伝搬します。ミミダニ症の特徴はとても強いかゆみを伴うことで、これが犬にとって大きなストレスになります。また、吸血したミミダニの糞が黒い耳垢として見られ、水で濡らしたティッシュに置くと、血液の赤い色に変化します。
アレルギー性外耳炎(アトピー性皮膚炎)は耳以外の疾患が見られる
食べ物やハウスダストなどが原因でアレルギー反応が起き、外耳炎を起こすことがあります。耳のトラブルと併発して、下痢や皮膚疾患が起きている場合は、アレルギー性外耳炎が疑われます。
異物が原因の外耳炎
散歩中に植物の種のような異物が犬の耳の中に入り込んでしまうと、その刺激によって外耳炎が引き起こされることがあります。
中耳炎
犬が中耳炎を発症しているときには、鼓膜に何らかの異常が起こっている場合があります。また、鼻腔の炎症が耳管を通じて中耳に広がることもあります。犬の中耳炎の多くは、外耳炎が進行し発症します。
内耳炎
進行した外耳炎は、最終的に内耳炎を引き起こす場合があります。内耳は聴覚と平衡感覚を司る器官であり、ここに炎症が起きると感覚障害が引き起こされます。また、平衡感覚の異常により吐き気を催すこともあります。
中耳と内耳は解剖学的にさまざまな神経の近くにあり、炎症が広がると顔面神経麻痺を始め神経症状を引き起こすことがあります。
耳のトラブルになりやすい犬種とは?
―耳が臭い、耳垢が多いなど耳のトラブルを起こしやすい犬種、特徴について教えてください。
垂れ耳の犬
耳が耳道に蓋のように覆いかぶさってしまい、湿気がたまり汚れやすくなります。
耳毛が多い犬
毛に耳垢が絡まってしまうため、汚れやすくなってしまいます。
好奇心旺盛な犬や神経質な犬
好奇心旺盛な犬は、散歩中に草むらにどんどん入ってしまい、異物が耳の中に入りやすくなります。また、神経質な犬は、耳掃除を嫌がり、その頻度が落ちてしまうため、トラブルが起こります。
犬の耳垢がひどく耳が臭い! こんな症状ならすぐ病院へ
心配がいらない場合
―犬の耳が臭うようになっても自然に治るものですか?
犬の耳の臭いが自然に治ることはありませんが、家庭での耳掃除によって改善される場合があります。しかし、耳掃除によって症状が良くならない、悪化した場合は動物病院を受診してください。
受診を強く勧める犬の耳のトラブルの症状
―受診すべき耳のトラブルの見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。
下記のような症状が愛犬に見られる場合は、耳に強い炎症が起こっている、またはミミダニ症やマラセチア症などの感染症に罹患(病気にかかっている)している可能性があり、受診を強くお勧めします。
- 耳をひどくかゆがり、日常生活に支障を来している
- 耳を触られるのを嫌がる
- 耳掃除をしてもすぐに汚れてしまう
また、これらのほか、次のような行動は見落としがちなので、特に注意して観察しましょう。
- (かゆい耳がうまくかけず)首をかく
- 頭を振る
- 頭を傾けたままにしているなど
耳のトラブルを放置すると炎症が広がり、長期治療が必要に
―これらの症状を見落として、受診が遅れるとどうなってしまうのですか?
耳のトラブルは外耳炎に関係するものが多く、早期治療では、耳垢の除去や洗浄を行う程度で済む場合があります。
しかし、炎症がひどい場合には外用薬や内服薬の処方が必要になります。さらに、炎症が中耳炎や内耳炎にまで広がってしまった場合、外科的な処置や強力な薬の処方をしなければならず、治療の長期化も予想されます。こうなると、犬の身体面での負担だけではなく、診療費の増大によって飼い主さんの金銭的な負担も増えてしまいます。
犬の耳が臭くなる、耳垢が増えるのを予防にするには?
―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。
犬の耳のトラブルを予防するため、まずは、愛犬の耳の状態を把握し、ケアしてあげることです。こまめに耳掃除をしてあげたほうがトラブルは減るでしょう。
また、正しい方法で耳掃除を行うことも重要です。耳をめくって、見える範囲に付いた耳垢を水や市販の洗浄液で濡らしたコットンを使ってやさしく拭ってください。耳垢をすべて取り除く必要はなく、ある程度耳垢がなくなれば問題ありません。
お勧めできないNGなケア
―ネットでは、耳毛を抜くといった対処法が見られますが?
犬の耳毛を抜くことの是非については、さまざまな意見があります。耳毛を抜けば、汚れがたまりにくくなります。しかし、その一方で、犬の耳道を傷つけ、炎症を起こす要因になってしまいますので、かかりつけの獣医師に聞いてみるのが確実でしょう。
―そのほか飼い主がやってしまいがちなNGケアについて教えてください。
頑固な耳垢を落とすために力を入れて耳を擦ることや、奥にある耳垢を取るために綿棒を突っ込むことは、耳の表面を傷つけてしまう場合がありますので注意しましょう。
まとめ
愛犬の耳が臭う、耳垢が増えたといったトラブルは、耳の炎症や感染症が引き起こします。耳のトラブルは早期発見・早期治療が大事であり、治療が遅れてしまうと、より大きな病気を続発させることがあります。
愛犬の耳のトラブルの多くは、こまめなケアによって予防できますので、日ごろから耳の健康に配慮してあげてください。また、少しでもおかしいと感じたときは動物病院の獣医師に相談しましょう。
そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。
犬の皮膚の症状の関連記事
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- ブル・テリア
- ブルドッグ
- ブルマスティフ
- フレンチ・ブルドッグ
- ペキニーズ
- ベドリントン・テリア
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
- ボーダー・コリー
- ボーダー・テリア
- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
- ボクサー
- ボストン・テリア
- 北海道
- ポメラニアン
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
- ボルゾイ
- ボロニーズ
- ホワイト・シェパード・ドッグ
マ行
- マスティフ
- マルチーズ
- マンチェスター・テリア
- ミディアム・プードル
- ミニ・オーストラリアン・ブルドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・ピンシャー
- ミニチュア・プードル
- ミニチュア・ブル・テリア
ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
-
記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。