犬のフケが大量に出る原因・病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月29日

犬のフケがやたらに増える原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、治療法や予防法、自宅での対処、注意点などを獣医師さんに伺ってみました。

私たち人間もフケが出ます。それは、新陳代謝で皮膚細胞が生まれ変わっているからであり、犬も同様です。しかし、犬のフケが異常なほど増えた、いつもと様子が違うなど気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬のフケが大量に出る原因・病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

犬の保険について

犬のフケの原因とは?

フケとは?

―フケとはどういうものか教えてください。

フケは古くなった皮膚の細胞が剥がれ落ちる現象で、新陳代謝がスムーズに行われている証拠です。皮膚の細胞が新しく作られ、フケとして剥がれていくサイクルをターンオーバーと呼び、犬では約20日前後と言われています。このサイクルがうまくいかなくなると、フケが大量に出るようになります。

―犬のフケの原因は何ですか?

乾燥

原因のひとつに乾燥が挙げられます。犬の皮膚は人の皮膚よりも薄く、その厚みは人の1/6と言われています。そのため、水分が蒸散しやすく乾燥しがちです。

特に冬になると暖房器具の使用により、乾燥がさらにひどくなる傾向にあります。こたつやホットカーペットを使用すると、熱源に近い皮膚の乾燥がどんどん進んでいき、その結果、フケとして剥がれ落ちてしまうのです。

不適切なスキンケア

シャンプーの成分が合っていなかったり、シャンプーの回数が多すぎたりすると、皮膚がダメージを受けてフケが出ることがあります。

ストレス

フケは健康な状態でも一定量は出ますが、何らかのストレスがかかるとフケが増える場合があります。ストレスにより免疫力が一時的に落ちると、皮膚炎やアレルギーが悪化し、皮膚のコンディションに悪影響を与えるからです。

犬のフケの原因となる病気とは?

犬のフケの原因となる病気とは?

―犬のフケが多くなってしまう病気としてどんなものが考えられますか? また、治療法について教えてください。

感染性皮膚炎

寄生虫が原因の皮膚炎

寄生虫に感染して皮膚炎になり、フケがたくさん出る主な原因は、ツメダニ、毛包虫、疥癬です。

ツメダニ症は、ツメダニが体の表面に寄生して起こる皮膚炎で、かゆみが強く大量のフケが出るのが特徴です。これは、ツメダニに感染している犬との接触で感染することが多く、犬が集まる場所でうつってしまうこともあります。なお、ツメダニは人に感染するので注意してください。

毛包虫症は毛包、虫が原因で起こる皮膚病で少量のフケが出ます。毛包虫は、犬の体にもともと少数寄生していますが、抵抗力が下がったと大量に発生し、フケや脱毛の原因になります。細菌感染が同時に起こるとかゆみがありますが、基本的にかゆみが少なく、パピー期、シニア期によく見られる皮膚病です。

疥癬は、センコウヒゼンダニの感染で起こる皮膚病で、強烈なかゆみを伴います。感染している部分は赤い発疹ができ、強いかゆみのため犬がかきむしってしまい、フケが出ます。センコウヒゼンダニも人に感染しますので、早期発見、早期治療が必要です。

これらの病気の治療はダニの予防・駆除薬を投与したり、消炎剤を投与したりします。

皮膚病、毛包虫症については、獣医師監修の記事「犬の疾患 皮膚病」「犬の疾患 毛包虫症」を併せてご覧ください。

真菌が原因の皮膚炎

皮膚糸状菌症は、糸状菌の感染が原因で起こり、広い範囲で毛が抜けますが、かゆみが少ないこと、また、大きめのフケを伴うことなどが特徴です。治療には1~2ヶ月かかることが多く、人に感染する真菌もありますので手洗いや環境の消毒などが必要です。

マラセチア皮膚炎は、マラセチアの感染が原因です。マラセチアは皮膚に常在していますが、これが一気に増えると発赤(ほっせき:皮膚が赤くなること)やかゆみを引き起こし、ベタベタしたフケがたくさん出ます。また、独特の発酵臭がして、慢性化すると皮膚が象のようになってしまいます。なお、マラセチア皮膚炎は人に感染しません。

いずれの皮膚病も治療は、抗真菌薬を含むシャンプーで洗い、抗真菌薬を投与します。

マラセチア皮膚炎については、獣医師監修の記事「犬の疾患 マラセチア皮膚炎」を併せてご覧ください。

犬のフケが多くなる皮膚病とは?

アレルギー性皮膚炎

草木の花粉、食べ物、ハウスダスト、カビなどに対してアレルギーを持ち、その結果起こる皮膚炎をアレルギー性皮膚炎と呼び、アレルギーの原因になるものをアレルゲンと言います。

体内にアレルゲンが入ると、それを攻撃する免疫反応が起こり、かゆみを引き起こす化学物質が放出されます。その結果、かゆみが強くなってかきむしり、皮膚が荒れてしまいフケが出ます。症状を抑えるには、アレルゲンの侵入をできるだけ避けるようにし、かゆみ止めの薬の投与やシャンプーを行います。

アレルギー皮膚炎については、獣医師監修の記事「犬の疾患 アレルギー皮膚炎」を併せてご覧ください。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎はアレルギー性皮膚炎に似た症状で、若齢期から発症することが多く、遺伝的にアレルギー体質の犬に起こります。治療方法もアレルギー性皮膚炎と同様です。

アトピー性皮膚炎のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬の疾患 アトピー性皮膚炎」を併せてご覧ください。

脂漏症

脂漏症にはパラパラのフケが出る「乾性脂漏症」と、フケは出ないものの皮膚がベタベタした状態になる「脂性脂漏症」があります。

乾性脂漏症は皮膚から水分が大量に蒸散(体内の水分が水蒸気になって外に発散すること)し、皮膚の水分量が足りなくなることが原因です。水分が不足すると、徐々にターンオーバーがうまくいかなくなりフケが多くなります。

脂漏症の治療は、保湿剤を使用し、蒸散する水分をしっかり補いながら皮膚のターンオーバーが正常に戻るようにします。

脂漏症については、獣医師監修の記事「犬の疾患 脂漏性皮膚炎」を併せてご覧ください。

犬のフケの予防と対策

犬のフケの予防と対策

―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

犬のフケ予防は、皮膚を乾燥させないようにしっかり保湿をし、適度なブラッシングを行うことです。もし病気が原因のフケが考えられる場合は、動物病院で治療を受け、獣医さんの指示をよく聞きましょう。

続いて、ご家庭でできるケアとして、シャンプーとブラッシングについて説明します。

シャンプー

犬の皮膚pHは弱アルカリ性であり、弱酸性の人間と真逆です。そのため、犬を洗うには必ず犬用のシャンプーを選ぶようにしましょう。また、トラブルがなければ、犬のシャンプーは1か月に1回ぐらいで十分です。それ以上行うと、かえって皮膚が乾燥し、フケが出るようになることがあります。

シャンプーは、こすったり、ゴシゴシと力を入れたりせず、やさしく洗ってください。また、乾かすときは熱い風が犬に直接当たらないようにしましょう。

なお、皮膚病と診断された場合は、専用のシャンプーを処方してもらってください。

ブラッシング

犬種に合ったブラシ選びが重要です。短毛種には、獣毛ブラシやピンブラシなどの皮膚にやさしいブラシ、長毛種には、抜け毛を除去しやすいスリッカーや皮膚をマッサージしやすいピンブラシをお勧めします。ブラッシングは2~3日に1回、毛並みに沿って行いましょう。

まとめ

以上、犬のフケが多く出る皮膚病の原因、治療、対策についてお話ししました。フケは皮膚の乾燥が原因で起こります。犬の皮膚は人と比べ薄く乾燥しやすいため、保湿剤の使用や部屋の湿度を50~60%以上に保つことで予防しましょう。

病気が原因の場合は、それに適した治療が必要です。フケが目立ち始めたら、できるだけ早く動物病院で診てもらいましょう。

獣医師 平松育子

執筆者:平松 育子

獣医師。『ふくふく動物病院』院長。京都市生まれ。山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、2006年、山口市阿知須にて『ふくふく動物病院』を開業。

犬の皮膚の症状の関連記事

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。