犬の皮膚炎の症状と原因、治療法について
最終更新日:2024年09月10日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
犬の皮膚炎について
皮膚炎とは皮膚に炎症が起きることでかゆみや発赤、湿疹、脱毛などが生じる皮膚疾患となります。
皮膚炎を起こす原因には様々な理由が考えられるため、適切に病態を把握することがとても大切となります。
犬アトピー性皮膚炎ってどんな病気?
犬アトピー性皮膚炎は、免疫状態が不安定になるトラブルで、アレルゲンが明確なアレルギー性皮膚炎と比較してアレルゲンは不明瞭でハウスダストなどの身近なものでも反応してしまうなどの特徴があります。
犬アトピー性皮膚炎の定義と症状
2005年に国際会議で「犬アトピー性皮膚炎とは、花粉やダニのIgEが関連した、特徴的な症状とかゆみを伴う皮膚炎である」と定義されました。かゆがっている犬がいたとして、その子が犬アトピー性皮膚炎かどうかを診断するには、まず定義にあるように、特徴的な症状があるかどうかを確認します。
※IgE(immunoglobulin E:免疫グロブリンE)とは、体内に入ってきたアレルギー物質に対して働きかけ、体を守る抗体のひとつ
特徴的な症状というのは、脇の下、太ももの内側、足の曲がる部分でのかゆみを伴う慢性の皮膚炎です。こういった症状があり、なおかつ花粉やダニ、カビ胞子のような環境アレルゲンに対するIgEが検出されることで、犬アトピー性皮膚炎だと診断されるのです。
そのため、環境アレルゲンに対するIgEは検出されず、食べ物に対するIgEが検出された場合は、犬アトピー性皮膚炎ではなく食物アレルギーのIgEタイプであると診断します。
この定義のポイントは、IgEが関連しているという部分です。つまり、花粉やダニなどのアレルゲンが飛ぶ季節になると症状が出たり悪化したりするというように、症状の季節性が見られる病気だということを意味しています。
ちなみに、アトピーとは「IgEができやすい体質」のことです。
犬のアレルギー性皮膚炎ってどんな病気?
犬のアレルギー性皮膚炎では、アレルゲンが原因で皮膚にかゆみが生じ、しきりに足でかくなどの行動が見られます。
皮膚の状態としては、赤みや脱毛・湿疹などの症状が現れます。
アレルギー症状を引き起こすアレルゲンは、食物・ノミやダニ・花粉などそれぞれの犬によって異なります。
そのほかの皮膚炎との鑑別のために、症状の出ている部位や状態を確認し、アレルゲン検査をしたり食事のテストを行って反応を確認してアレルギー性皮膚炎と確定するケースが多いです。
犬が体をかゆがり、皮膚に炎症が見つかったら、獣医師の指導のもとで症状の改善を目指しましょう。
犬の皮膚炎の症状が出るのはどうして?原因は?
犬アトピー性皮膚炎の場合
皮膚のバリア機能障害
病気のメカニズムを非常に簡略化すると、「アレルゲンが体内に侵入して、それに対して免疫反応が起こり、IgEが産生され、その結果として炎症反応を引き起こす」ということになります。
つまり、体内にアレルゲンの侵入を許してしまうような、皮膚のバリア機能障害が起きているということが最初の原因です。
アレルゲンとの接触
皮膚の表層部分には、細胞の間を埋めるように細胞間脂質が存在しており、水分の蒸発を防いで保湿をし、アレルゲンの侵入を防いでいます。
これが皮膚の乾燥や皮膚炎などによって皮膚が荒れた状態になると、細胞間脂質が不足して皮膚に隙間ができたような状態になってしまいます。隙間があると、そこから水分が過剰に蒸発して肌は乾燥します。また、その隙間を通って外界からアレルゲンが侵入してしまい、そのアレルゲンに対してIgEが産生されて、炎症反応が引き起こされるのです。
このような皮膚のバリア機能障害には遺伝的な関与があると考えられています。
微生物の定着・増殖
上記ふたつに加えて、皮膚の常在菌であるブドウ球菌やマラセチアが定着・増殖することで、犬アトピー性皮膚炎の症状は悪化します。
まとめると、犬アトピー性皮膚炎の症状が出る原因は、「皮膚のバリア機能障害」「アレルゲンとの接触」「微生物の定着・増殖」です。
犬のアレルギー性皮膚炎の場合
犬のアレルギー性皮膚炎の原因には、食物・環境アレルゲン・ノミやダニなど、様々なものが挙げられます。
食物アレルギーでは、鶏肉・牛肉・卵・大豆・魚をはじめとした蛋白質でアレルギー症状を引き起こすほか、ドッグフードに含まれる添加物がアレルゲンとなることも考えられます。
また、犬がノミに刺されてアレルギー性皮膚炎を発症することがあり、こちらはノミの唾液が原因となり引き起こされるアレルギー症状です。
人と同じように、犬も花粉のような環境アレルゲンによるアレルギーも存在します。
どんな犬が皮膚炎にかかりやすい?
どんな犬が犬アトピー性皮膚炎にかかりやすいの?
遺伝的な影響が考えられており、日本では次のような犬種が好発犬種として知られています。
- ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- 柴犬
どんな犬がアレルギー性皮膚炎にかかりやすいの?
犬の皮膚炎の症状とチェック項目
犬アトピー性皮膚炎の症状とチェック項目
- 最初に症状が出たのが3歳以下である
- 基本的に室内飼育である
- ステロイドを使うとかゆみがおさまる
- マラセチアによる皮膚炎を繰り返す
- 前足に症状がある
- 耳(耳介)に症状がある
- 耳の縁には症状がない
- 体の中心の背中側には症状がない
これらは犬アトピー性皮膚炎の診断基準です。繰り返しかゆみの出る皮膚炎が見られる場合、また、これらが多く当てはまるほど、犬アトピー性皮膚炎である可能性は高くなります。ただし100%ではないことに注意が必要です。
犬アトピー性皮膚炎はどうやって診断されるの?
ほかにかゆみを引き起こすような皮膚疾患を除外していくことから始めます。
最初は、感染性皮膚炎の除外です。皮膚の観察や顕微鏡の検査で病原体が見つかった場合は、それを治療します。次に、食物アレルギーの除外です。どちらも同じアレルギー性皮膚炎であり、かゆみが出る場所もほとんど共通しているため、見た目だけでは両者を区別できないことがほとんどです。
さらに、犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの両方を持っている犬も多いとされています。食物アレルギーは、アレルゲンにならない食材のフードを与えて、かゆみがなくなるかを調べる除去食試験や、血液中のIgEやリンパ球反応を測定するアレルギー検査によって診断します。
これらを除外できて、なおかつ、かゆみが続くようであれば、いよいよ犬アトピー性皮膚炎である可能性が高くなります。
最後は、IgEを測定するアレルギー検査を行い、アレルゲンを特定することで診断となります。
犬のアレルギー性皮膚炎の症状とチェック項目
犬がしきりに全身をかいたり、体を壁や床にこすりつけたりしてかゆがっている場合、皮膚の状態を確認してみましょう。
犬の体に湿疹やできもの・皮膚の赤みがないかどうか、脱毛、ノミがいるかどうかを確認し、異常が認められた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
犬の皮膚炎の治療にはどんな方法があるの?
犬アトピー性皮膚炎の場合
悪循環を断つアレルゲンの侵入、皮膚のバリア機能障害、炎症が起こる、悪化因子による炎症の悪化という流れで悪循環が成立していくのが、犬アトピー性皮膚炎の特徴です。
そのため、この悪循環を断つことが目的になります。つまり、対処として「アレルゲンを回避する」「皮膚をケアする」「かゆみや炎症を抑える」「微生物の定着・増殖をコントロールする」という4つが治療につながるのです。
接触性のアレルゲンを回避する方法室内のアレルゲンに対してはこまめに換気する、フローリングにする、こまめに清掃をする、空気清浄機を設置するなどがあります。室外のアレルゲンに対しては、アレルゲンが出る季節には散歩を止める、または短くする、こまめにブラッシングをするなどがあります。
皮膚のケアシャンプーによって体の表面についたアレルゲンを除去して保湿をします。
かゆみや炎症を抑える以前はステロイドの使用が必要でしたが、最近はステロイドよりも副作用が少なくてかゆみを抑えられる薬があり、そちらを使用することが多くなっています。
二次的な皮膚トラブルを抑える抗生物質や抗真菌薬を使います。
そのほかの治療法としては減感作療法があります。これはアレルゲンを少しずつ体内に入れることで徐々に体を慣れさせて、アレルギー反応を起こしにくくする治療です。
犬のアレルギー性皮膚炎の場合
アレルギー性皮膚炎の治療としては、アレルゲンとなる物質を避けることが基本的な方針となります。
例えばノミアレルギーによるものならば駆虫薬を適切に使用することでノミの根絶並びに今後の寄生を防ぎます。
また、食物アレルギーの場合はアレルギー検査や除去食試験などを行うことでアレルゲンとなる食材を探し、以降はその食材が含まれていないフードを食べる必要があります。
かゆみによるかき壊しなどで細菌感染も併発している場合は抗生物質の併用を行う場合もあります。
犬の皮膚炎は治せるの?
皮膚炎の原因がはっきりしているならば適切な治療により完治は期待できるでしょう。ただ、皮膚炎の中には様々な原因が重なっていることもあるため、そのような場合はなかなか完治という状態まではいかない可能性もあります。
犬アトピー性皮膚炎の場合
完治させることは難しく、ほとんどのケースで一生付き合っていくことになります。 唯一完治する可能性があるのは減感作療法ですが、確実ではありません。
免疫状態が不安定になる原因となる物質を摂取することを避けることが予防になりますが、何がきっかけになるかは個体によって違います。そのため、確実に予防することは難しいと言えます。
皮膚のコンディションを少しでも良く保つためにサプリメントや定期的なケアで維持することなどは炎症を起こす頻度を減らせる可能性があります。
犬アレルギー性皮膚炎の場合
アレルギー性皮膚炎の予防は難しく、完治は難しい疾患です。
アレルギーを疑う場合、アレルゲンとなりうるものをできる限り避けましょう。
万が一発症してしまった場合は、動物病院でアレルギーの原因を特定するとともに、食事療法・投薬・外用療法などを行います。
犬の皮膚炎はどうやって予防したらいいの?
犬アトピー性皮膚炎の場合
アレルゲンとの接触を避けることが予防になりますが、何がアレルゲンになるかは個体によって違います。そのため、確実に予防することは難しいと言えます。
犬のアレルギー性皮膚炎の場合
アレルギー性皮膚炎の予防は難しく、完治は難しい疾患です。
アレルギーを疑う場合、アレルゲンとなりうるものをできる限り避けましょう。
万が一発症してしまった場合は、動物病院でアレルギーの原因を特定するとともに、食事療法・投薬・外用療法などを行います。
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- ブル・テリア
- ブルドッグ
- ブルマスティフ
- フレンチ・ブルドッグ
- ペキニーズ
- ベドリントン・テリア
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
- ボーダー・コリー
- ボーダー・テリア
- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
- ボクサー
- ボストン・テリア
- 北海道
- ポメラニアン
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
- ボルゾイ
- ボロニーズ
- ホワイト・シェパード・ドッグ
マ行
- マスティフ
- マルチーズ
- マンチェスター・テリア
- ミディアム・プードル
- ミニ・オーストラリアン・ブルドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・ピンシャー
- ミニチュア・プードル
- ミニチュア・ブル・テリア
ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。