犬のいびきの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月08日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬のいびきをかくようになった、音が大きい原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

かわいいと思えるいびきもありますが、犬がこれまでにないような大きな音でいびきをかく、苦しそうな呼吸をしていたら、何かの病気のサインかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬のいびきの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬のいびきの原因

―いびきが出る仕組みについて教えてください。

鼻から喉までを「上部気道」と呼びます。いびきは狭くなった上部気道を空気が通るときに、喉の粘膜が振動することで起こります。つまり、喉が狭くなるような状態になると、いびきが聞こえるようになります。

犬も人間と同じように、寝ているときには喉の筋肉が弛緩(しかん:ゆるむこと)します。それによって喉が狭くなるため、どんな犬でもいびきをかくことはありますが、もともと喉が狭い犬や、喉が狭くなるような異常や病気がある犬では、よりいびきがひどくなる可能性があるのです。

犬のいびきの原因となる病気

犬のいびきの原因となる病気

―犬のいびきの原因としてどんな病気が考えられますか?

肥満

肥満の犬には体だけでなく、喉の周りにも脂肪がたくさん付いています。その脂肪が喉を圧迫すると、いびきが出やすくなります。

アレルギーや感染症

アレルギーや感染症になると、喉の粘膜に炎症が起こり腫れてくることがあります。そのせいで喉が狭くなり、いびきが出やすくなるのです。また、鼻水が出て鼻が詰まりやすくなると、それがいびきの原因になることもあります。

アレルギーの場合は、くしゃみがひどくなり、感染症の場合は、元気や食欲が低下するなど、いびきよりもほかの症状が目立ちます。

軟口蓋過長症

舌で口の中の上顎の方を触ると硬い部分があります。これを硬口蓋(こうこうがい)と言い、その奥にあるやわらかい部分を軟口蓋(なんこうがい)と呼びます。

軟口蓋の役割は、食べたり飲んだりしたときに食べ物が鼻のほうに逆流してしまうのを防ぐことですが、これが長すぎると(過長)喉の入口に引っかかって空気が通りにくくなり、いびきが出やすくなるのです。この状態を軟口蓋過長症と呼び、ほとんどの場合、先天的に軟口蓋が長く分厚くなっています。

軟口蓋過長症<のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬の軟口蓋過長症」を併せてご覧ください。

鼻孔狭窄

外鼻孔という鼻の入口(いつも湿っている部分)が狭くなると、空気の出入りが悪くなってしまいます。正常な犬の外鼻孔の形はコンマ状(,)ですが、これが線状に見えるくらい細くなることがあるのです。これを鼻孔狭窄、または狭窄性外鼻孔と呼びます。

加齢による筋力の衰え

寝ているときに喉の筋肉が弛緩すると喉が狭くなっていびきが出ますが、老犬になり喉や首の筋肉が衰えてくると、若い時よりもいびきが出やすくなります。

いびきをかきやすい犬種とは?

いびきをかきやすい犬種とは?短頭種はいびきをかきやすい

短頭種はいびきをかきやすい

―いびきをかきやすい犬種について教えてください。

フレンチ・ブルドッグブルドッグパグペキニーズボストン・テリアチワワシー・ズーキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどが、いびきをかきやすい犬種です。

―それらの犬種が、いびきをかきやすい理由とは何ですか?

こういった犬種は、頭蓋骨の幅に比べてマズル(口の周りから鼻先にかけての部分)が短い「短頭種」というグループに分類されます。短頭種に特有の、平坦な顔面、円型の頭部、太く短い首といった構造は、喉の狭さにつながり、いびきが出やすくなります。

なお、いびきだけなら大きな問題ではありませんが、この構造は、ほかの犬種に比べると呼吸に不利であり、ひどくなると呼吸困難や体温調節がうまくできなくなり熱中症につながります。

このような短頭種の解剖学的な特徴が原因となる気道障害を総称して、短頭種気道症候群と呼びます。軟口蓋過長症と鼻孔狭窄は短頭種気道症候群に含まれます。

短頭種気道症候群のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「犬の短頭種気道症候群」を併せてご覧ください。

犬のいびきで、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない犬のいびきの症状

人間の場合は、風邪をひいたり、飲酒をしたりすると一時的にいびきをかくことがありますが、犬の場合は、どうでしょうか?

もともといびきをかいている、あるいは、いびき以外に呼吸の異常がないようであれば、病的なレベルのいびきではないと考えられます。その場合、緊急性がないため、しばらく様子を見ても問題ありません。

受診を強く勧める犬のいびきの症状

―一過性ではない、あるいは、いびきでも質の違う場合は注意が必要かと思います。そうした危険ないびきの見分け方について教えてください。

今までいびきをかいていなかった犬が突然いびきをかくようになった場合は、これまでになかった異常が犬の喉に起きていると考えたほうがいいでしょう。

また、起きている時でもいびきのようにガーガーという音がひどい場合も心配です。あるいは、少し動いただけで呼吸が苦しくなり、立ち止まったりしゃがんだりしてしまうような場合(これを運動不耐性と言います)は、喉の狭さが生活の質を下げてしまうくらい重度だということになります。これらの場合は、原因をきちんと特定して治療をする必要があるかもしれません。

犬がいびきを起こしたときの対処法

犬がいびきを起こしたときの対処法と予防法

―犬のいびきが止まらない、音が大きい場合は、どう対処すればいいのでしょうか?

体勢を変える

仰向けや横向きになっていると、犬の喉が潰れやすくなり、肺が膨らみにくくなることがあります。そのため、犬をできるだけうつ伏せの体勢にしてあげましょう。なぜなら、犬にとって一番呼吸が楽な体勢がうつ伏せだからです。体勢を変える際は、犬がびっくりしないようにゆっくり動かすようにしましょう。

環境改善

一般的に高温多湿だと呼吸しにくくなることがあります。また、短頭種気道症候群の犬では熱中症のリスクも高くなるため、部屋の温度を下げ、除湿をすることで犬の喉にかかる負担を軽くしましょう。

また、アレルギーが原因でいびきをかいている場合は、部屋の掃除をするとアレルゲンが除去されて症状が落ち着く場合があります。タバコの煙もアレルゲンになることがあるため、犬がいるところでは喫煙しないようにすることも大事です。

ダイエット

喉の周りに付いた脂肪が喉を圧迫することでいびきが出やすくなります。そのため、ダイエットをして脂肪を減らすと、いびきの改善が期待できます。

―病気の場合は、どのように治療するのですか? また、家庭ではどのような点に注意したらいいですか?

軟口蓋過長症の治療

犬に全身麻酔をかけて、軟口蓋の余分な部分を切除する外科手術を行います。

手術を行わない場合は、呼吸困難や熱中症になるリスクがあります。そのため、ご家庭では太らせないように体重の管理をしっかりする、運動を適度にし、一方でさせすぎないように気を付ける、涼しく湿度の低い環境を整えるといったことに注意しましょう。

鼻孔狭窄の治療

こちらも犬に全身麻酔をかけて外科手術を行います。これは、鼻の入口の狭い部分を広げるために、鼻の穴の入口の周囲を一部切除するというものです。

手術を行わない場合、軟口蓋過長症と同じように、犬の体調と環境を整えましょう。

犬のいびきの予防

―犬のいびきを予防するには、どうしたらいいですか?

短頭種は程度の差こそあってもほとんどの犬で喉が狭く、いびきをかきやすいという特徴があります。短頭種気道症候群と呼ばれるような障害が出るほど、その特徴が重度だった場合、根本的な解決のためには外科手術が必要です。

しかし、短頭種はもともと麻酔リスクが高く、手術自体も合併症のリスクもあります。そのため、手術を選択しない場合は、体重や運動、環境の管理をしっかり行うようにしましょう。

まとめ

犬がいびきをかく姿はかわいらしく、短頭種特有のブヒブヒと呼吸する様子は「鼻ブヒ」と呼ばれ、それが好きで「犬を飼うなら絶対に短頭種!」という人はたくさんいます。しかしながら、その原因となる喉の狭さは、同時に呼吸をしにくくしているということであり、犬を苦しめている可能性もあります。

また、いびきだけで正常なのか異常なのかを見極めることは困難です。起きているときも呼吸の音が激しすぎないか、ちょっと動いただけで苦しそうにしていないかなど、いくつかのチェックポイントを見逃さないようにしましょう。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
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サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。