犬の歯周病の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

前提として、犬は歯周病が多い傾向にある

犬の歯は人間の歯と同じように内側から

  • 「神経や血管が集まる歯髄(しずい)」
  • 「歯髄を囲む象牙質(ぞうげしつ)」
  • 「象牙質を覆うとても硬いエナメル質」

の3層から成り立っています。

そして、この歯を支えている部分を「歯周(ししゅう)」といい、歯周は

  • 「歯肉」
  • 「歯槽骨(しそうこつ)」
  • 「歯根膜(しこんまく)」
  • 「セメント質」

から構成されています。

なお、歯と歯肉の間にある数ミリ程度の溝が歯周ポケットとなります。 この歯周に歯垢や歯垢が唾液中のミネラルと結合して固くなった歯石がたまると細菌の増殖などにより歯周組織に炎症が起こり、この状態を「歯周病」といいます。

犬の口内はアルカリ性であり、アルカリ性という環境下では虫歯菌が発生しにくく、一方で歯石が石灰化しやすいことにより歯周病菌が繁殖しやすいため歯周病になりやすいといわれています。

犬の歯周病ってどんな病気?

歯周病は、厳密には歯周組織(歯の周りの組織)に起こるすべての問題を指しますが、一般的には犬の歯の根っこの部分(根尖)以外の部分(辺縁性)のものを歯周病と呼びます。簡単に言うと、前述の見出しでも少し触れましたが、犬の歯の表面に付着した歯石がどんどん増えていき、歯と歯ぐきの間の歯周ポケットにも入り込んで炎症が進んでいく病気です。

歯石とは?

歯石とは、口の中の細菌とその代謝活動でできる物質や水分などが固まったプラーク(歯垢とも呼ばれる)が唾液に含まれるカルシウムやリン酸によって石灰化したものや、歯周ポケットでにじみ出てくる液体(滲出液)の作用で石灰化したものです。

歯石の成分は多くが口の中の細菌であり、歯周病を放置すると犬の心臓や肝臓、腎臓にも影響が出ることがあります。また、歯槽膿漏が進行して犬の目の下の皮膚に穴が開いてしまうこともあります。「歯周病は、犬にただ歯石が付いて口が臭くなる」と考えている方が多いようですが、実は全身に影響が出ることもある非常に重大な病気なのです。

犬の歯周病の症状と原因

どうして症状が出るの?原因は?

健康な歯周組織の歯肉溝の中にプラークや歯石が蓄積することによって歯肉炎が起きます。

歯肉の部分だけに炎症があまっている歯肉炎であれば、その原因を犬から取り除けば健康な状態に回復できる可能性があります。この可逆的な歯肉炎では、次のような症状が犬に見られます。

  • 歯肉が腫れたりブヨブヨしたりする
  • 歯肉が過形成される
  • 歯肉にポケットが形成される
  • 歯肉から出血する

しかし、それを治療せずに放置してしまうと、細菌や細菌が作り出す毒素が歯周ポケットの奥のほうに入り込んでいき、犬の歯根膜やセメント質、歯槽骨といった歯周組織が破壊されていきます。これを辺縁性歯周炎と呼びます。この状態から治療を始めても元どおりには回復しません。

この可逆的な歯周炎と、不可逆的な辺縁性歯周炎を合わせて、いわゆる歯周病と呼びます。

どんな犬が歯周病にかかりやすいの?

同じ犬種の中でも体質的に歯石が付きやすい子と付きにくい子がいます。また、大型犬に比べると、小型犬の方が歯石が付きやすいようです。

イタリアン・グレーハウンドは、ほかの犬種と比べて歯周病の発症率が高いというデータがあります。次いで、ミニチュア・ダックスフンド、カニンヘン・ダックスフンド、トイ・プードルも発症率が高い犬種です。

犬の保険について

犬の歯周病の症状とチェック項目

歯石が付着してくると口臭が出るようになります。そのため、犬が歯周病になると、ほぼ例外なく、ご家族は「犬の口が臭い」と感じられるようになります。

犬の口の中をチェックできるようであれば、犬の口内に歯石が付着している、歯ぐきが赤く腫れているといった特徴がないかを確認しましょう。

歯周病が進行すると、歯石の量はさらに増え、口臭はさらにきつくなります。やがて、歯肉が縮んでいき、歯がグラグラするようになります。この時、痛みが出たり、物を噛みにくくなったりすることがあります。そして、最終的にポロっと歯が抜けてしまうのです。

犬の歯周病はどうやって診断されるの?

歯周病かどうかは、犬の口の中を見て歯石の付着や歯肉の腫れなどの状態から診断可能です。外から見えない歯槽骨の状態は、歯科用のレントゲン撮影やCT撮影が必要になります。歯周ポケットの深さは器具を差し込んで測定するため、犬に麻酔をかけて診断します。

犬の歯周病を放置するとかかりやすい病気とは?

犬の歯周病を放置しておくことで引き起こされるトラブルや病気には主に以下の3点を挙げることができます。

  1. 歯が抜け落ちる:歯槽骨が溶けることで歯を支えることができなくなり、歯が抜けてしまいます。      
  2. 目の下などの皮膚に穴が開く:歯周病が悪化して炎症が歯の根っこの周囲まで及ぶと、その周辺の骨が溶けて「瘻管(ろうかん)」と呼ばれるトンネルのようなものができて、その出口が皮膚の外側に開いた状態となります。
  3. 心臓病や腎臓病などの内臓疾患:口腔の粘膜から歯周病の原因菌が血管に入り込んで全身に広がることで、心膜や心臓の弁などに炎症が起きて心臓病となるリスクや腎臓の内部にある糸球体と呼ばれる部分に炎症が発生して糸球体腎炎が引き起こされる可能性があります。

犬の歯周病の治療にはどんな方法があるの?

犬の歯周病の治療は、全身麻酔が必須です。犬に麻酔をかけてから、超音波スケーラーという器具を使用します。これは、マイクロ振動と水圧によって歯に付着したプラークや歯石を除去するもので、この処置をスケーリングと呼びます。

プラークは、ブラッシングで除去することが可能ですが、歯石はブラッシングでは除去できないため、スケーリングが必要になります。

スケーリングで大きな歯石を除去したら、歯の表面に残った細かな歯石を除去します。これがポリッシング(荒研磨)です。その後、スケーリングの影響でできた表面の細かい傷をポリッシング(仕上げ研摩)で除去します。ポリッシングを行うことで犬の歯の表面をツルツルにして、歯垢や歯石が再び付着しにくい状態にします。歯肉炎の場合は、ここまでで治療終了です。

辺縁性歯周炎の場合

まず、超音波スケーラーでスケーリングを行います。その後、ルートプレーニングを行います。ルートプレーニングとは、歯肉の内側にあるプラークや歯石、口の中の細菌が作り出す毒素により壊死したセメント質を除去し、プラークが付きにくく、歯肉が引き締まりやすい状態にするための処置です。ルートプレーニングが終わったらポリッシングを行います。最後に、炎症を起こしている歯周ポケットに、歯科用の抗生物質薬軟膏を注入します。

ここまでが一般的なスケーリングですが、歯周ポケットが5mmを超えるような場合は、スケーリングとルートプレーニングでは奥の方にある歯石の完全な除去はできません。そのため、メスで犬の歯肉を切開し、歯根部を露出して直接、歯石除去処置を行います。

犬の歯周病は治せるの?

基本的に歯周病の治療は、「歯石を除去すること」です。歯周病の歯周組織へのダメージが軽ければきちんと治ります。しかし、歯槽骨が吸収されているものは進行を止められても骨を再生させることは難しく、歯槽膿漏がひどくて犬の歯がグラグラしている状態の場合は、抜歯しなければなりません。

また、最近では「無麻酔で犬の歯石除去処置」を行う施設が増えてきました。しかしながら、これは犬の歯の表面の歯石を取っているだけで、歯周ポケットの処置まではできません。そのため、見た目はきれいになっても、奥は汚れがたまっていて炎症が進行していく可能性があります。やはり、しっかりした歯周病処置は全身麻酔が必要です。

犬の歯周病を治療に必要な費用、金額とは?

病院や行う処置、歯周病の程度によっても異なります。

犬の歯周病がごく初期で専門の器具を使用して歯石除去を行い、その後は歯周ポケットの内部の歯石や歯根表面の汚れを除去。 最後に歯の表面を磨いてピカピカにしたり歯石の再付着を防ぐための薬剤を塗布したりして完了となる場合は術前検査や全身麻酔料などを含めて約50,000円が相場と考えられます。

一方、抜歯が必要となって歯肉の縫合等を行う重度の場合は上記の処置に加えてさらに高度な技術が必要となるため100,000円~200,000円は必要と考えておいたほうが良いでしょう。

治療が必要となった場合に、どのような治療プランなのか、どの程度の費用が必要なのかを確認しておくとより安心です。

どうやって予防したらいいの?

犬の歯周病の予防

犬の歯周病の予防は歯みがき

歯周病は、進行すると口の中だけでなく、全身にも影響が出てくる危険性があり、犬の場合、治療のためには全身麻酔が必要になることから、予防がとても重要です。

歯周病の予防とは、「歯みがき」です。とは言え、いきなり歯ブラシでゴシゴシこすろうとすると犬は嫌がります。そのため、子犬のころから口の中を触られることに慣れさせていきましょう。これは、成犬になってから歯周病のケアをする場合も同じです。

犬の歯磨きのコツ

まずは、犬におやつをあげるときに指で歯や歯ぐきを触るようにしましょう。最初は、軽く短い時間で終わらせ、犬が口の中を触られることに慣れてきたら、次のステップとして歯みがき用のシートを指に巻いて犬の歯をこすってみましょう。

ここまでできるようになり、もう1ステップ進めそうなら歯ブラシを使ってみましょう。歯ブラシは人間用のものではなく、犬専用のものを使用してください。

どうしても犬が口の中を触れさせてくれないようなら、歯みがきガムを使用するという方法があります。歯ブラシに比べると歯みがき効果はかなり落ちてしまいますが、ガムが当たる部分のプラークは除去することができます。

こういったお家でのケアは、歯石除去ではなく、プラークを取ることが目的です。人間のように犬も毎食後に歯みがきができればベストですが、実際はなかなか難しいでしょう。1日1回を目指し、それでも難しければ3日以上歯みがきの間隔をあけないようにしてください。なぜなら、犬の口の中は3日で歯石ができてしまうからです。

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犬の保険について

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
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ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
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  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。