犬の口腔腫瘍の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年04月25日

犬の口腔腫瘍の症状

犬の口腔腫瘍の症状と原因

犬の口腔腫瘍(口腔内腫瘍)とは、歯肉(歯ぐき)や舌、くちびる(口唇:こうしん)、顎の骨などにできる腫瘍です。口腔腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、特徴が異なります。

良性腫瘍

犬によく見られる良性の口腔腫瘍には、「エプリス」と「棘細胞性エナメル上皮腫(きょくさいぼうせいえなめるじょうひしゅ)」が挙げられます。

エプリス

犬のエプリスは歯肉に発生する良性腫瘍です。歯周病などの口腔内環境の悪化を伴うことが多く、「線維性エプリス」と「骨性エプリス」があります。進行スピードがゆっくりで、腫瘍が小さいうちは目立った症状は見られません。

棘細胞性エナメル上皮腫

棘細胞性エプリスは、転移しないので良性腫瘍と呼ばれますが、進行スピードが速く、次のような悪性腫瘍の特徴が見られます。

  • 腫瘍細胞が浸潤(しみ込むように広がる状態)して顎の骨を溶かす
  • 腫瘍の切除後に再発を繰り返す

悪性腫瘍

犬の口腔内悪性腫瘍のほとんどが、「メラノーマ(悪性黒色腫)」と「扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)」、「線維肉腫」の3つです。

メラノーマ(悪性黒色腫)

メラノーマ(悪性黒色腫)は、メラニン色素を作りだす細胞ががん化して発生する腫瘍で、多くの場合、黒っぽい見た目をしています。

口腔内メラノーマは、犬の口腔悪性腫瘍の中で最も発生率が高く(30~40%)、高齢の小型犬によく見られます。非常に悪性度が高く、急速に成長して早い段階で転移を起こします。そのため、動物病院を受診したときにはすでにほかの部位に転移しているケースも少なくありません。

扁平上皮がん

扁平上皮がんは、犬の口腔悪性腫瘍の中でメラノーマの次に発生率が高い(20~30%)悪性腫瘍です。

転移はほとんど見られず、愛犬に適切な治療を受けさせられた場合、予後は良好です。ただし、扁桃(へんとう)や舌の付け根などに発生した場合は悪性度が高く、高確率で転移を起こします。

線維肉腫

線維肉腫は、線維芽細胞(せんいがさいぼう)というコラーゲンを作り出す細胞ががん化して発生する腫瘍です。高齢の大型犬に多く見られますが、若齢犬での発生報告もあります。

良性と悪性どちらの場合でも、口腔腫瘍が小さいうちは症状が出ないケースが多く、腫瘍が大きくなると次のような症状が現れます。

  • 口臭がきつくなる
  • よだれが増える
  • 口から出血する
  • 食べ物が食べづらそうな様子

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

悪性腫瘍の場合、病気が進行すると転移をしたり、がん悪液質(悪性腫瘍の末期に見られる栄養状態の悪化)が愛犬に見られたりします。

  • 常に苦しそうに呼吸している
    すでに犬の肺に転移している可能性があります。
  • 体重が減少傾向にある
    すでに犬の全身が衰弱状態に陥っている可能性が考えられます。

いずれも愛犬の命にかかわる状態ですので、様子を見ずにすぐに動物病院を受診しましょう。

犬の口腔腫瘍の原因

犬の口腔腫瘍の原因は、残念ながらまだはっきりとはわかっていません。ただし、エプリスは口腔内環境の悪化が刺激となって発生するのではないかと考えられています。

口腔腫瘍にかかりやすい犬の特徴は?

犬の口腔腫瘍は、基本的にどの種類の腫瘍も発症率にメス・オスの差はなく、中~高齢犬に多く見られる傾向にあります。

犬の口腔腫瘍の治療法

犬の口腔腫瘍の治療法と予防法

検査内容

視診

最初に視診によって、犬の腫瘍の色や大きさ、発生部位などを確認します。

触診

レントゲン検査

次にリンパ節の触診やレントゲン検査によって、犬の腫瘍が転移していないか確認します。

血液検査

超音波検査

犬の全身状態を確認したり、似たような症状を示す病気を否定したりするために、血液検査や超音波検査を行います。

生検

注射針を使った針吸引生検や切除生検によって、犬の口腔腫瘍の種類を判断し、確定診断を行います。ただし、針吸引生検では診断がつかない場合もあります。

治療法

犬の口腔腫瘍の治療は、手術による外科的切除が基本です。手術では、主に腫瘍を切除しますが、顎の骨まで浸潤が見られる場合は周囲の組織や顎の骨も一緒に切除します。

腫瘍の種類によっては、放射線治療や化学療法(抗がん剤治療)を同時に行う可能性があります。ただし、放射線治療は、大学病院や腫瘍科がある動物病院など受けられる施設が限られます。また、治療法によっては高額な費用がかかる場合があるため、まずはかかりつけの獣医師に相談しましょう。

無治療の場合

腫瘍の種類や発生部位などによって異なりますが、特に悪性度が高いメラノーマの場合、無治療のまま放置すると肺転移を起こし、数か月で愛犬の命にかかわるおそれがあります。

悪性腫瘍でも、手術で愛犬の痛みを取り除いたり、転移を起こす前であれば余命を延ばせたりする可能性があります。また、腫瘍が小さいうちであれば、切除する範囲も狭くて済みます。

愛犬の口の中にできものを見つけた場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

犬の口腔腫瘍の予防法

犬の口腔腫瘍は、原因がはっきりしていない病気で予防が難しく、放置すると転移や骨浸潤を起こして命にかかわる可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。

一年に1回の健康診断と併せて、日ごろから愛犬の口の中をこまめに観察しましょう。多くの犬は口を触られるのを嫌がるため、子犬のうちから歯磨きをする習慣をつけて慣れさせておくと、いつでも口内チェックができ、口腔腫瘍の早期発見につながります。

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犬のがん・腫瘍

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。