犬の血管肉腫の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年03月29日

犬の血管肉腫の症状

犬の血管肉腫の症状と原因

犬の血管肉腫は、血管内皮細胞(血管の内側にある細胞)が腫瘍化する悪性腫瘍(がん)のひとつで、悪性度が非常に高いのが特徴です。また、進行スピードが速く、肺や肝臓、脾臓(ひぞう)、腎臓など全身への転移が高確率で起こります。

血管肉腫はどの部位でも発生する可能性がありますが、犬の場合は特に脾臓での発生事例が多く、心臓の右心房、肝臓、皮膚、皮下組織での発生も多く見られます。また、血管肉腫の発生部位によって、現れる症状が異なります。

発生場所ごとの主な症状

脾臓、肝臓に血管肉腫が発生した場合の主な症状

  • 元気・食欲の低下
  • 体重減少
  • お腹が膨らむ
  • 粘膜の色が青白くなる(貧血)

脾臓や肝臓に血管肉腫が発生した場合、初期の段階では、犬に症状が出ないケースが多く見られます。運良く症状が現れたとしても、食欲不振や体重減少といった加齢性の変化と見分けがつきにくいため、血管肉腫は見過ごされがちです。

末期になると、腫瘍が大きくなって破裂し、腹腔内出血(お腹の中で出血して血液がたまる状態)を起こし、急激に犬の状態が悪くなります。

心臓に血管肉腫が発生した場合の主な症状

  • 元気・食欲の低下
  • 疲れやすくなる
  • 咳(せき)が出る
  • 粘膜の色が青白くなる(貧血)

犬の心臓に血管肉腫が発生した場合も、症状が出にくく、末期に腫瘍が破裂して、心臓と心臓を包む膜の間に血液がたまると急激に状態が悪くなります。

皮膚、皮下組織に血管肉腫が発生した場合の主な症状

  • しこりができる

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

次のような症状が犬に見られる場合、放置すると命にかかわるおそれがありますので、様子を見ずにすぐに動物病院を受診してください。

  • 意識がない
  • ぐったりして立てない
  • 呼吸が苦しそう

犬の脾臓や肝臓、心臓など臓器にできる血管肉腫は、腫瘍が大きくなって破裂する末期まで症状が出にくく、重い症状が急に現れるケースが少なくありません。すぐに治療を行わなければ短時間で命にかかわるため、症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

犬の血管肉腫の原因

犬が血管肉腫を発症する原因は、はっきりとは解明されていませんが、人間の皮膚血管肉腫と同じように、犬の場合も外傷や紫外線暴露、放射線暴露などから引き起こされるのではないかと考えられています。

血管肉腫にかかりやすい犬の特徴は?

血管肉腫は高齢犬(8~10歳)での発症が多く、オス犬によく見られます。好発犬種は、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリーバー、ボクサーなどです。また、去勢・避妊手術をしている犬は、血管肉腫の発症リスクが高まると言われています。

犬の血管肉腫の治療法

犬の血管肉腫の治療法と予防法

検査内容

脾臓や肝臓、心臓など内臓に血管肉腫ができている場合

  • 血液検査
  • 尿検査
  • レントゲン検査
  • 超音波検査

動物病院を受診したときには、すでに呼吸や意識などに異常が見られる場合が多く見られます。すぐに血液検査や尿検査、レントゲン検査、超音波検査などを行い、全身状態や腫瘍の発生部位、転移の有無などを調べます。

  • 腹腔穿刺検査(ふくくうせんしけんさ)
    お腹の中に液体がたまっている場合は、お腹の中に針を刺して液体の成分を調べる「腹腔穿刺検査」を行います。
  • 病理検査
    手術で腫瘍を切除する場合は、病理検査により確定診断をします。
  • 皮膚血管肉腫の場合
    針で吸引したしこりの内容物を顕微鏡で観察して、腫瘍細胞を確認します。その後、転移の有無や腫瘍の種類をより詳しく調べるために、血液検査やレントゲン検査、超音波検査、病理検査を行います。

治療法

犬の腫瘍の治療法には、外科的治療、抗がん剤治療、放射線治療の3つの代表的な方法と、近年、研究が進められている免疫療法があります。

放射線治療

犬の血管肉腫の場合、放射線治療はほとんど選択されません。

外科的治療

手術によって腫瘍を摘出する外科的治療が一般的です。全身状態が悪い場合には、犬に点滴や輸血などを行った後に手術をします。

抗がん剤治療

内臓原発(症状が内臓から現れること)の血管肉腫の場合、手術のみでは予後が極めて悪く、高確率で転移を起こすため、術後は補助的に抗がん剤治療を行います。

ただし、手術と抗がん剤治療を行った場合でも完治は難しく、一年生存率は10%以下、生存期間中央値は19~86日と非常に予後が悪いと言われています。そこで、血管肉腫を治すためではなく、愛犬の痛みを緩和させる目的で手術を行う場合があります。愛犬の治療法については、獣医師とよく相談してください。

一方、皮膚原発(症状が皮膚から現れること)の血管肉腫の場合、内臓原発に比べて予後は良い傾向にあります。

免疫療法

最近では、第4の治療法として、免疫療法の研究が進み、以下のような理由から免疫療法を愛犬に希望する飼い主さんが増えています。

  • 副作用が少ない
  • 手術後に低下した免疫力を回復させる効果が期待できる
  • 抗がん剤治療の副作用を軽減できるなど

しかし、動物医療における免疫療法はまだ一般的でなく、すべての動物病院で受けられるとは限りません。また、費用も高額な傾向にあります。免疫療法を希望する場合、まずは動物病院に相談しましょう。

無治療の場合

犬の血管肉腫は進行のスピードが速いものの、末期になって腫瘍が破裂するまでは特異的な症状がなかなか現れません。いきなりショック状態に陥ってから気が付くケースが多く、犬に症状が見られた段階ですぐに適切な治療を受けなければ、短時間で命にかかわります。症状が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

犬の血管肉腫の予防法

犬の血管肉腫は原因がはっきりわかっていないため、残念ながら今のところ明確な予防法がありません。

腫瘍が大きくなって破裂すると命にかかわるため、末期症状が現れる前の発見が非常に重要です。1年に1回はドッグドックを受けて、早期発見・早期治療を心がけてください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。