犬の乳腺腫瘍の症状と原因、治療法について

犬の乳腺腫瘍の症状

犬の乳腺腫瘍の症状と原因

犬の乳腺腫瘍は、10歳以上のメスに最も多く見られる腫瘍のひとつです。女性ホルモン依存性で、2歳ごろまでに避妊手術を行うと発生リスクを抑えられます。良性と悪性がほぼ50%ずつと言われていますが、急に大きくなる場合は悪性の可能性が高いため、腫瘍が小さいうちに手術で摘出しておくと安心です。

犬に次のような症状がある場合は、乳腺腫瘍の可能性があります。早めに動物病院を受診しましょう。

  • 乳首の周囲にひとつ、あるいは複数のできものがある
  • できものに触っても痛がる様子がない

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

犬に次のような症状が見られる場合、悪性腫瘍が疑われます。放置すると手術が困難になったり、転移したりして命にかかわる場合もあるため、様子を見ずにすぐ受診してください。

  • 腫瘍が急に大きくなる
  • 腫瘍が熱をもって赤くなり、触ると痛がる
  • 元気がなく、食欲もない

乳腺腫瘍の中でも、乳腺が赤く腫れあがり、熱感をもつしこりを形成する悪性の腫瘍を「炎症性乳がん」として区別します。この病気の発症率は犬の乳腺腫瘍のうち10%以下であるものの、命にかかわる悪性度の高い疾患です。

がん細胞の浸潤性(染み込むように広がる状態)が強く、炎症を伴いながら周りへ広がり、激しい痛みや潰瘍(かいよう)を伴います。炎症がひどくなるとリンパの流れが阻害され、犬の後ろ足がむくんで腫れあがる場合もあります。転移率が非常に高く、注意が必要です。

乳腺腫瘍は、見た目で良性か悪性かを判断できません。また、小さいからといって良性とは限りません。腫瘍の種類は、病理検査(手術で切除した腫瘍を検査機関で診断する検査)で行います。病理検査の結果で今後の治療方針も決定します。

犬の乳腺腫瘍の原因

女性ホルモンによる影響

乳腺腫瘍は、乳腺組織が女性ホルモンの影響を受けて腫瘍化する病気で、犬の場合、発生率は避妊手術を済ませた時期によって大きく変わります。

避妊手術が初回発情前の場合の発生率は0.05%、2回目の発情以前の場合は8%、3回目の発情以降の場合は26%に上昇します。発情期が来る前に避妊手術を行うことが非常に重要です。

乳腺腫瘍にかかりやすい犬の特徴

避妊手術が済んでいない、もしくは初回発情以降に避妊手術をした高齢のメス犬の場合は、犬種にかかわらず乳腺腫瘍を発症する可能性が高い傾向にあります。その中でもプードル、イングリッシュ・セッター、ボストン・テリア、コッカー・スパニエルなどは乳腺腫瘍を発症しやすいと言われています。

乳腺腫瘍は10歳以上の高齢犬に発症しやすいものの、10歳未満の年齢でも発症する可能性があります。左右合わせて10個ある乳腺のうち、特に股に近い第4乳腺、第5乳腺にできやすいので、定期的に触って確認しましょう。

犬の乳腺腫瘍の治療法

犬の乳腺腫瘍の治療法と予防法

検査内容

血液検査

乳腺腫瘍の摘出手術が決まった場合、手術前に必ず血液検査を行います。これによって麻酔をかけても問題ないかを確認します。

X線検査

X線検査で、肺への転移がないか、そのほかに異常部位がないかを確認します。肺に転移が認められた場合は、乳腺腫瘍からの転移なのか、原発性(ほかからの転移ではなく、腫瘍がある部位に原因があるもの)なのかを検討します。乳腺腫瘍がある場合は転移性を疑います。

病理組織検査

切除した乳腺組織は、専門の検査機関で病理組織検査を行います。腫瘍が良性か悪性か、腫瘍の取り残しがないか、リンパ管やリンパ節転移の有無、血管に腫瘍細胞が浸潤していないか(脈管浸潤)を確かめます。取り残しや脈管浸潤があると、再発やほかの臓器への転移のおそれがあります。

犬の乳腺腫瘍で同じ部位の再発は少ないと言われていますが、左右5個の乳腺はつながっているため、ほかの乳腺に転移する可能性があります。

治療法

犬の乳腺腫瘍の治療方法には化学療法はなく、外科手術のみです。手術方法には2種類あり、部分摘出か乳腺全摘出かを状況によって選択します。

外科手術による部分摘出、あるいは乳腺全摘出

部分摘出の場合は手術時間が短く、傷も小さくて済みますが、残っているほかの乳腺で再発する可能性があります。乳腺全摘出の場合は手術時間が長く、範囲も広いため傷が大きくなります。しかし、乳腺をすべて摘出するため、再発リスクは非常に低く抑えられます。手術による愛犬の体への負担と今後の再発リスクを考慮して、手術方法を獣医師とよく相談しましょう。

また、炎症性乳がんは、犬も人間の場合も一般的な乳腺腫瘍の治療方法とは異なり、今のところ根治治療がありません。炎症性乳がんを切除すると、手術の傷口に激しい炎症が起こり、傷がふさがらなくなるケースも多々あるため、手術は行わず、鎮痛剤や消炎剤を投与しながら対症療法を行います。

 

無治療の場合

高齢犬や腫瘍が小さいのであれば、手術を行わずに経過観察となるケースもあります。その場合、腫瘍の大きさのチェックを最低1か月に2回行うのが一般的です。ただし、腫瘍が急に大きくなってきた場合は悪性の可能性が高いため、すぐに動物病院を受診しましょう。

手術を行わない場合、将来的に複数の乳腺に腫瘍が広がったり、腫瘍部分の皮膚が自壊(自然に破れること)して出血や化膿(かのう)したり、肺やほかの臓器に転移したりするおそれがあります。

また、乳腺腫瘍を発症している高齢のメス犬では、卵巣や子宮にも異常を来しているケースが多く見られます。高齢になってからの避妊手術では乳腺腫瘍の予防は期待できませんが、卵胞嚢腫(らんそうのうしゅ)や子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)などの予防は可能です。

愛犬の年齢における避妊手術の必要性や有効性について、獣医師とよく相談してみましょう。

犬の乳腺腫瘍の予防法

初回発情前の避妊手術が最も有効

犬の乳腺腫瘍の予防として最も有効な方法は、初回発情前の避妊手術です。

初回発情後からどんどん発症リスクが高まるため、遅くとも2歳半までに避妊手術を済ませると安心です。

日ごろのスキンシップやケアなどの際には、乳腺の辺りをていねいに触ってしこりがないかを確認し、愛犬の体の異常に気付いたら、早めに動物病院を受診しましょう。

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犬種別の保険料

  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。