犬のメラノーマの症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年07月09日

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犬のメラノーマの症状

犬のメラノーマの症状と原因

メラノーマは、メラノサイトと呼ばれる細胞ががん化して発生する悪性腫瘍です。

メラノサイトは表皮の最下層である基底層に存在していて、紫外線や外的刺激などから体を防御するためにメラニン顆粒(黒色色素)を産生しています。メラノサイト自体は犬の健康に悪影響を与えませんが、ほくろやしこりが徐々に大きくなる場合や炎症を伴う場合は、メラノーマの可能性があります。

メラノーマは悪性黒色腫とも言われ、黒っぽい見た目が特徴です。良性腫瘍であるメラノサイトーマも同様に黒っぽい見た目ですが、多くが皮膚に現れます。一方、メラノーマは犬の皮膚だけでなく四肢、粘膜の境目、口腔粘膜、爪床部(爪の付け根)によく見られ、表面の炎症や出血を伴っているケースも多くあります。

ただし、黒っぽい見た目をしていない無色素性メラノーマや乏色素性メラノーマも存在するため、愛犬の腫瘍を色だけで判断するのは危険です。

犬のメラノーマの初期症状とは

メラノーマの初期症状として、犬に以下のようなものが現れます。

  • 歯肉や唇、舌、口腔内などの粘膜部に黒っぽいしこりがある
  • 口臭がひどい
  • 口から出血している
  • まぶたや眼球に黒いシミのような黒ずみがある
  • 爪床部(爪の付け根)に黒い腫瘍がある

メラノーマは進行が早いため、リンパ節や肺などへの転移には注意が必要です。

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

犬に次のような症状が見られる場合は、良性腫瘍ではなく、メラノーマの可能性が疑われます。早めに動物病院を受診しましょう。

  • しこりの表面が炎症を起こし、出血している
    犬のしこりの表面が炎症を起こし、潰瘍(かいよう)を形成していると、悪性腫瘍の可能性が高くなります。
  • しこりの大きさがどんどん大きくなっている
    犬のしこりの肥大化するスピードが速い場合は、悪性度が高くなります。
  • しこりだけでなく、咳症状も見られる
    犬の症状に咳を伴う場合、肺転移を起こしている可能性があります。肺転移の場合、予後は極めて悪いため注意が必要です。

メラノーマは、リンパ節や肺に転移するケースがとても多い腫瘍です。愛犬にメラノーマが疑われる場合は、様子を見ずにすぐに動物病院を受診してください。

犬のメラノーマの原因

メラノーマは粘膜や皮膚などに存在するメラノサイト由来の腫瘍です。

発症する原因は明確にはわかっていませんが、若齢の犬と比べると高齢の犬のほうが発症率は高いと言われています。犬のメラノーマは人間の場合とは違い、紫外線の影響については判明していません。

メラノーマにかかりやすい犬の特徴

メラノーマが発症しやすい犬種として、スコティッシュ・テリアやミニチュア・シュナウザー、ゴールデン・レトリーバー、ドーベルマン・ピンシャー、アイリッシュ・セッター、ジャーマン・シェパード、ボクサー、プードル、ミニチュア・ダックスフンド、コッカー・スパニエル、チワワなどが報告されています。

基本的に性別による発症率の差はないと言われていますが、オス犬のほうが発生率は高いとの報告もあります。10歳以上の高齢犬で発症リスクが高まりますが、若い犬でも発症します。

犬のメラノーマの治療法

犬のメラノーマの治療法と予防法

検査内容

身体検査

犬の体や頭部、口腔内などを念入りに視診および触診し、腫瘍を形成している部位を特定します。

細胞診

犬の腫瘍に針を刺して腫瘍組織の一部を採取し、メラニン色素を保有する細胞を顕微鏡で観察します。院内で検査する場合と、病理検査会社に検査依頼をする場合があります。

血液検査

採血して犬の全身状態を確認します。外科手術が安全に行える状態かを把握したり、適切な治療を選択したりするために重要な検査です。

レントゲン検査

胸や腹部のレントゲンで、臓器への転移はないか、麻酔に耐えられる状態かを確認します。

CT、MRI

愛犬に外科手術を検討している場合は、CTやMRI検査が必要なときがあります。腫瘍の浸潤(染み込むように広がる状態)の程度やリンパ節の腫れを確認できるため、適切な手術計画を立てるためにとても重要な検査です。

治療法

外科療法

肺やリンパ節などへの転移がなく、また大きさが小さい、周囲の細胞にあまり浸潤していないメラノーマの場合は、外科処置での腫瘍切除が非常に有効です。

一方、犬の腫瘍が広範囲に及び、腫瘍の境界が曖昧で、表面が潰瘍化している場合は、手術ですべて切除するのは難しくなります。

腫瘍の範囲によっては、犬の上顎や下顎、鼻骨などの切除が必要になる場合もあります。外見が大きく変化するだけでなく、犬のQOL(生活の質)にも影響が出るため、獣医師から十分説明を受けましょう。

放射線療法

放射線を腫瘍に照射して、腫瘍を小さくしたり、進行を遅らせたりする治療法です。

治療期間は設備や手順によって異なりますが、多くの場合は数週間にわたる治療が必要です。犬の放射線療法を実施できる施設は限られるため、かかりつけの動物病院からの紹介が必要だったり、治療費が高額になったりする場合があります。外科手術や化学療法と組み合わせる場合もあります。

化学療法

外科手術が難しい場合は、抗がん剤による化学療法を選択するケースがあります。化学療法も数週間以上かかる場合があります。

免疫療法

近年では犬に対し、免疫療法と呼ばれる治療法も選択肢に挙がってきました。免疫療法では、がんワクチンなどにより治療を行います。

無治療の場合

無治療のままで放置すると、肺やリンパ節などへ転移するケースが多く、治療した場合と比べて犬の生存期間が短くなるリスクがあります。しかし、犬の体の状態によっては治療効果が期待できず、止むを得ず無治療になるケースもあります。

犬のメラノーマの予防法

メラノーマは基本的に予防が難しい病気のため、早期発見が重要です。

メラノーマが発生しやすい皮膚や口腔内、四肢、爪床(爪の付け根)などの部位を中心に、愛犬の体を日ごろからよく観察し、腫瘍がまだ小さいうちに異変に気付いてあげましょう。特に、口腔内のメラノーマは悪性度が高いため、毎日の歯磨きの際、唇や舌、口腔粘膜などを確認してください。

愛犬に少しでもメラノーマが疑われるような症状があれば、自己判断せずに早めに獣医師の診察を受けましょう。

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犬のがん・腫瘍

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。