犬の涙やけの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月09日

犬の涙がずっとあふれ、涙やけを起こす原因として、どんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師の三宅亜希先生に監修いただきました。

涙やけそのものは病気ではないものの、何かしらの病気が原因になっている可能性があります。愛犬の目の周りが涙で濡れているようなら、なるべく早く獣医師さんに相談しましょう。

犬の涙やけの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

犬の涙やけの原因とは?

―涙やけとは何ですか?

「涙やけ」は、涙で濡れた目の下の毛が赤茶色に変色してしまうことを言い、病名ではありません。涙は本来無色透明ですが、毛に付いた状態のまま放置すると時間とともに赤茶色に変色します。そのため、特に白色や薄いクリーム色の毛の犬で目立ちます。また、常に濡れた状態になると皮膚炎を起こす場合もあります。何らかの原因で目から涙があふれている状態(流涙症:りゅうるいしょう)が長く続くと涙やけが起こります。

―犬の涙やけの原因として、どんなものが考えられますか?

本来、涙は涙腺から分泌され、目の表面を覆うことで目の乾燥を防いでいます。そして、涙は目頭にある涙点(るいてん)と呼ばれる穴の中へ入り、鼻涙管(びるいかん)と呼ばれる管の中を通って鼻腔に流れます。

犬の涙やけは、何らかの原因で涙の量が異常に増えたり、目の表面に涙をとどめておけなかったりして目からあふれてしまったり、鼻腔へうまく排泄することができなかったりすることで起こります。

涙があふれるの原因にはさまざまなものがありますが、例えば、私たち人間も目にほこりのような異物が入ったときに涙が流れることがあります。同様に、犬も目の中に異物が入るとそれが刺激になり、涙の量が異常に増えて涙やけが起こることがあります。また、目の周りの毛が目の表面を刺激して、涙が増えることもあります。

以上のほか、何らかの病気によって涙があふれて涙やけが引き起こされる場合があります。

犬の涙やけの原因となる病気とは?

犬の涙やけの原因となる病気とは?

―犬の涙やけの原因としてどんな病気が考えられますか。

犬の涙やけの原因=涙が多量に流れてしまう疾患です。これには、鼻涙管閉塞や眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)、まつ毛の生え方の異常、アレルギーなどの病気が考えられます。

鼻涙管閉塞

犬の涙やけの原因は、鼻涙管閉塞が最も多いと言われています。この病気は、生まれつき涙点がなかったり、鼻涙管が狭かったり、後天的に結膜炎や外傷、腫瘍などの病気にかかり、鼻涙管が閉塞したりすることで起こります。

眼瞼内反症

眼瞼内反症とはその名のとおり、まぶたが内側に反ってしまう病気です。先天的に起こることが多く、犬の、まぶたが内側に入り込み、まつ毛が目の表面に当たり、涙の量が増えて涙やけが起こることがあります。

犬の眼瞼内反症についての詳しい症状、治療法については、獣医師監修の「犬の目の病気 眼瞼内反症」を併せてご覧ください。

まつ毛の生え方の異常

まぶたの裏側にまつ毛が生える「異所性睫毛(いしょせいしょうもう)」や、まつ毛が目に向かって生える「睫毛乱生(しょうもうらんせい)」などによって、まつ毛が目の表面に当たると、涙の量が増えて涙やけが起こることがあります。

アレルギー

犬のアレルギーは、食べ物やノミ、花粉などに対して起こります。アレルギーの主な症状は皮膚炎や強いかゆみで、目の周りに症状が出ると結膜炎を引き起こし、涙の量が増えて涙やけが起こることがあります。

涙やけを起こしやすい犬種とは?

―涙やけを起こしやすい犬種について教えてください。また、その理由について説明してください。

トイ・プードル、マルチーズ

トイ・プードルやマルチーズは、生まれつき鼻涙管が狭かったり閉塞していたりすることが多いため、鼻涙管閉塞により涙があふれて涙やけを起こしやすい犬種です。

シー・ズー、パグ、チワワ

シー・ズーやパグ、チワワなどの短頭種は、目が大きく外に張り出しています。そのため、涙をとどめにくくあふれたり、目を傷つけやすく涙が増えたりすることがあります。さらに、シー・ズーやパグは、目の周りの皮膚にたるみが多くあり、眼瞼内反症による涙やけを起こしやすい犬種です。また、睫毛乱生による涙やけを起こしやすい犬種でもあります。

柴犬、ミニチュア・ダックスフンド

柴犬やミニチュア・ダックスフンドなどは生まれつきアレルギーを起こしやすく、アレルギーにより涙が増え、涙やけを起こしやすい犬種です。

犬の涙やけで、こんな症状ならすぐ病院へ

犬の涙やけで、こんな症状ならすぐ病院へ

―受診すべき涙やけの見分け方について教えてください。

健康な犬であれば、分泌された涙は涙点から鼻涙管へ入り、鼻先から出ていくため、涙やけが起きるほど涙があふれることはありません。

涙やけが起きているということは何らかの原因で異常に涙があふれているということなので、涙やけを見つけた場合は動物病院を受診するようにしましょう。

―上記のような症状を放置してしまうと、どんな弊害がありますか?

涙やけそのものがなにか悪さをすることはありませんが、毛が涙で濡れた状態が続くと細菌感染を起こし、皮膚炎を患ってしまうことがあります。

犬の涙やけの予防と対処法

犬の涙やけの予防と対処法

―犬の涙やけは、どのように予防すればいいですか?

涙が多量に流れる原因が特定でき、それが防げるものであれば防ぎます。例えば、目の周りの毛が目の表面を刺激して涙やけが起こっている場合は、目の周りの毛をこまめにカットすると、ある程度予防することができます。また、アレルギーによるものの場合は、アレルギーの治療を行います。

生まれつきの目の構造などによるものの場合は予防が難しいのですが、涙やけは涙で毛が長時間濡れたままになることで起こりますので、こまめに涙をふき取れば予防が可能です。一度涙やけを起こしてしまうと消すことができないため、注意しましょう。

―犬が涙やけを起こしたら、家庭内でどう対処すればいいのでしょうか?

皮膚炎を起こさないためにも、涙をこまめに拭いてあげるようにしてください。ただし、ティッシュペーパーは目の表面を傷つけてしまうおそれがあるため、コットンやガーゼを使って、やさしく拭き取るようにしましょう。

毛がカピカピに固まっている場合は、まず濡らしたコットンやガーゼでふやかします。次に、皮膚が引っ張られないよう注意しながら、ノミ取りコームのような目の細かいクシでとかしながら、ほぐすようにしてください。

これらは涙やけの取り方や、涙やけを引き起こしている病気を治す方法ではないので、涙が異常に流れている原因に対する対処については、病院の指示に従うようにしましょう。

―病院では、どのように治療するのですか?

鼻涙管閉塞の治療

鼻涙管閉塞については、結膜炎や腫瘍など何かほかの病気が原因である場合は、主に目薬を使ってその病気の治療を行います。また、鼻涙管が狭く、何かが詰まっている場合は、麻酔をかけた状態で鼻涙管に細い管を通し、洗浄することで詰まりを取ります。生まれつき涙点がない、あるいは鼻涙管が完全に閉塞している場合には手術を行う必要があります。

眼瞼内反症の治療

眼瞼内反症やまつ毛の生え方の異常については、目の表面を刺激しているまつ毛を定期的に抜く処置を行います。しかし、処置を繰り返しても将来的にまつ毛が生えてしまうので、場合によっては手術を行うこともあります。

アレルギーの治療

アレルギーについては、まずはアレルギーを引き起こす原因(抗原、アレルゲンとも言う)を取り除き、かゆみや皮膚炎を起こしている場合は、その治療も同時に行います。

お勧めできない犬の涙やけのケア

ケア方法は、犬それぞれによって異なる

インターネット上では、さまざまな方法が書かれていますが?

涙やけ対策として、ホウ酸水や市販のお手入れ用品を使ったケア方法やサプリメントを紹介しているサイト、食餌を無添加フードに変更するよううたっているサイトなど、確かにインターネット上にはさまざまな情報があふれています。

どれも間違った情報ではないものの、効果には個体差がありますし、「○○をすれば涙やけが完全に消えます!」という魔法のような方法は残念ながらありません。

一番大切なことは、涙やけを引き起こしている原因を突き止めて治療を行い、根本的な解決をすることと、そもそも涙やけにならないよう早期発見・早期治療(早期対策)を行うことです。

動物病院では愛犬に合った正しいケア方法を紹介してくれるので、自己判断でケアしようとせず、まずは動物病院の受診をお勧めします。

まとめ

犬の涙やけ自体は病気ではありません。そのため、動物病院では涙やけを起こした原因になる病気の治療(結膜炎、逆さまつげ、鼻涙管閉塞、アレルギーなど)は行いますが、変色した犬の毛色を戻す治療というのは通常存在しません。

根本的な原因の治療を行いながら、涙やけを起こさないようにこまめに涙を拭き取る、というのが一番の予防方法になります。なお、アレルギーと診断されない場合でも、フードや食器が合わずに食事の際に涙が増えるケースは存在しますので、フードを変更してみたり、プラスティック製の食器をステンレスや陶器のものに変更してみたりするのはおすすめです。

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
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